春分の日。
それは仏教的にいえば彼岸の日であり
占星術的にいえば宇宙元旦である。
この二つは言葉のニュアンスはずいぶんちがう感じがする。
彼岸とは、サンスクリット語で「波羅蜜多(パーラミター)」を訳した「到彼岸」からとった言葉であり、此岸であるこの世に対して、彼岸であるあの世を指している。
そして春のお彼岸は、これから太陽が本格的に力を強めていく転換点であるため、現実をより良いものに変えていくべく、六波羅蜜の教えを実行すると良いとされている。
六波羅蜜とはごくシンプルにいえば、いまの自分自身をしっかりと自己認識し、ジャッジを減らし、内的なビジョンを見出していく一連のプロセスのこと。
そして宇宙元旦とは、西洋占星術にて、牡羊座の領域に太陽が入ること(=黄緯0度に太陽が入る)を意味しており、12星座の新しい循環がここから始まるタイミングである。この日を私たちは昔から「春分の日」と呼んでいる。
その新しい循環のスタートのタイミングにあたり、土台を整えることで、宇宙的なメッセージを受け取りやすい状態を作っていく必要があるとされる。
私は僧侶・アカシックリーダーというスタンスで活動している。
それはなんというか「ここ=土着」と「むこう=外からきたもの」との組み合わせなのだといつも思っている。
だからこそ私は既存の馴染み深い伝統的なものと、一見突拍子も無いようなスピリチュアルな外来のものを組み合わせて考えることがよくある。
今回はこの【宇宙元旦とお彼岸】について捉えてみたい。
宇宙元旦を主張するとき、私たちはおそらく外に飛び出したいのだ。
魂にとって肉体は重い。だからこそ私たちは本質的に自由を求め、重さを嫌う。
魂にとっては現実は打ち破りながらすすんでいくものであり、一瞬たりとも同じ時空には止まっていたくない。
そしてまた春のお彼岸という言葉や、伝統的な墓参りの習慣には私たちは安心安全を求める。
肉体にとっては、安心安全が欠かせない。だからこそ私たちは誰しも不安定な状態から安定した状態を求める。
肉体にとっては現実は家であり、繰り返し同じ場所に帰る故郷こそが求める愛なのだ。
そう。このふたつの矛盾した衝動を私たちは持ち合わせている。
だからこそ私たちは何にも所有されたく無いという自由を求める一方で、誰よりも愛して欲しいという愛着にしがみつく。
人間とはそもそもが矛盾した存在なのだ。
そんな観点からこの春分、彼岸、宇宙元旦を捉えてみると、この春分は「自己の矛盾を受け入れる日」といえるのではないだろうか?
宇宙に飛び出したい衝動もある。
そして故郷を求める愛着もある。
そのまったく異なる二つが内側にある。
そして私たちはどちらかにゆられて苦しんでいる。
どちらかに突き抜けたいと誰もが思う。
けれどどちらかに突き抜けたとしても、その分だけ、逆の方向に引き戻される。
その意味ではたとえばホリエモンが六本木ヒルズの頂点に立っても、真っ逆さまに転落させられたように。
トランプ大統領が民衆の期待を背負って飛び出しても、犯罪者の名前を着せられるように。
そして本質的に突き抜けることを成し遂げた人は、この世界には帰ってくることはないのかもしれない。
土着を嫌い、肉体を離れたいと願うなら、その人はそのまま死ぬ。
尾崎豊やアイルトンセナのように。
そしてまた自由などありえないと決め込み、故郷に囚われすぎた人は、肉体は生きるが魂は死ぬ。
同じことの繰り返しのなかでは魂は生きることができないからだ。
さて。
ここからはとても坊さんくさいことをいうのだけど。
この春分の日にやったらいいことは「この二つの矛盾をそのまま認めること」だ。
私たち人間は目の前の現実をありのままに受け止めることが苦手だ。
そして構造的にも魂と肉体の二つに引っ張られるために、どちらかの視座に傾きやすい。
けれどこの春分点のタイミングではこの二つのバランスをとりやすい日だ。
だからこそこの春分の時期をこう使ったらいい。
自由と安全。破壊と安定。飛び出したい気持ちと故郷を求める気持ち。
「この二つの矛盾に私は苦しんでいるんだな」
と苦しんでいる自分を抵抗せずにそのまま認めたらいい。
静かに目を閉じて、自分の心に溢れるバラバラな声をとても丁寧に聞くことだ。
そして「ああ。こんなにも自分は揺れているんだな」とただ見ていると、ふっと楽になる。
観察を続けている自分にだけ集中していると、苦しんでいる自分がいるけれど、それと同時にそれを見ている自分がいることに気がつく。
この春分の太陽と大地は「静かに自分の矛盾を認めるあなた」をそっとしずかに包んでくれる。
宇宙への衝動と大地への愛。
その両方があなたそのものなのだから。
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