題名…『私とイケメン転校生と時々インベーダー!?』


対象読者年齢…小学校3〜4年生


ジャンル…一応SF(笑)


第3話


「2人とも大丈夫だった?」

あたしたちの事を心配してくれてるのか、火村くんが駆け寄ってきた。

 「うん。あたしは大丈夫よ。未夢はケガなかった?」

 「あたしも、だ、大丈夫!」

 「火村くん、な、何がどうなったの?」

状況が飲み込めないレナが火村くんに聞いた。

 「ボールが、僕らの目の前で、急にパンクしたみたい。こんなこともあるんだね。誰にもぶつからなくてよかったよ。」

 「悪い!悪い!野球してたらボールがそっちに行っちゃってさぁ。」

 グラウンドから1人の男子がこっちに近づいてきたが、野球ボールの破片を見て驚いているみたいだ。

 「マジかよ?代わりのボールあったかなぁ?」

 今のパンクは、ひょっとして火村くんの仕業じゃないのかな?昼休み修二くんのお腹が痛くなる前に、あたしは火村くんの目が赤く光ったのを見た。まさか火村くんは超能力者?ううん。そんなのマンガの中の話だよ。単なる偶然が重なっただけだよ。

  ふー。学校から帰ってきたあたしは、一気に疲れが出て、ベッドに寝転がった。

 何か、今日は色んなことがあったなぁ。眠くなってきちゃった。ママはどうせ仕事で、遅くまで帰ってこないから、少し眠っちゃえ。宿題は夜やればいいよね?

 ……。

 はっ!?よく寝たけど、今は何時だろう? あたしは目覚まし時計を見た。えっ?もう7時30分だ!けっこう眠ってたんだなぁ。そういえば、お腹も空いてきた。今日の晩ご飯は何かな?あたしは台所に向かった。

 冷蔵庫を開けてみたが、晩ご飯は入って無く、テーブルを見るとママの手紙と千円札が置いてあった。 

 「未夢へ このお金でスーパーでお弁当を買ってきて、食べなさい。お菓子ばかりを買ってはダメですよ!ママより」

 はぁ。今日もこれかあ……。ママは仕事で朝早く出て、帰りが遅い日が、1週間の内に2〜3日くらいある。そんな時は、近所のスーパーのお弁当が晩ご飯になる。

 クラスのみんなは、今ごろママの作った料理を食べてるんだろうなあ。いいなあ。あたしも毎日ママの手料理が食べたいな。

 グウウ……。

 お腹の虫が大きく鳴った。しかたがない。お弁当を買ってくるか。あたしはお金を持って家を出た。近所のスーパー「サンバリュー」に行くには、途中の森田公園を抜けていくと近道だ。公園は街灯があんまり無くて暗いから、夜は怖いしママからも(暗いときは森田公園に入ってはダメよ。)と注意されてるけど、早くご飯を食べたいので、思い切って公園に入っていった。

 やっぱり公園は薄暗くて怖いな。お化けが近くに隠れていそう。あたしは、早く公園から出たかったので、いつもより早足で歩いた。

 もう少しで出口という所で、あたしは街灯の下に、しゃがんでいる人がいるのを見た。

 バクバク……。

 近づくと、その人はすごい勢いで何かを食べてるみたいだということが分かった。

 やだあ。気味悪いなこの人。あたしは走り出した。その人は、あたしとすれ違う瞬間、食べるのを止めて、こっちに顔を向けてきた。その顔を見て、あたしは自分の体が凍りついていくのを感じた。

 その人の顔には目が4つあって、大きな口に牙が生えていたのだ!

 「グ、グフフフ……」

 その人は、いや化け物はあたしを見て不気味に笑った。

 「きゃあああ!」

 あたしは、大きな叫び声を上げて全速力で、化け物から逃げ出した。

 どこをどうやって走ってきたのかは覚えていないけど、気がつくとあたしは家の前にいた。さっきの化け物が周りにいないのを確認すると、家の中に入り、急いでカギを閉めてベッドの中に潜りこんだ。晩ご飯のことはどうでもよかった。

 一体あの化け物は何だったんだろう?今朝のおじいさんが探してた生き物にそっくりな顔だった。あのおじいさんは化け物の仲間?それとも親分なのかしら?

 あたしがベッドの中に入って、どのくらいの時間が経っただろうか?玄関のカギが開く音がした。あの化け物が入ってきた!?

 「ただいま!未夢起きてる?」

 ママだ!あたしはベッドから飛び出すとママの元に向かっていった。そして、玄関でクツを脱いでるママの姿を見て、思わず抱きついた。

 「あらあら。どうしたの?4年生にもなって甘えん坊ねぇ」

 「ママ、あのね、あのね!」

 あたしは、公園で見た化け物のことを話した。 

 「バカね。そんなお化けいるわけないじゃない。きっと暗かったから変な人の顔を見間違えたのよ。でも、1人で怖い思いさせてごめんね。ママ、これからはなるべく早く帰るようにするわ。それと、夜はあの公園に入っちゃダメよ」

 その言葉を聞いたあたしは、心の底からホッとした気持ちになった。怖いときもあるけど、ママは本当は優しいんだ。

 「さあ、今日は遅いから、もう寝なさい」

 「うん。おやすみママ」

 —翌日—

 教室に入ったあたしは、何だか周りのクラスメイトたちの様子が、いつもと違うことに気がついた。どうしたんだろう?辺りを見ると仲の良いグループ同士で集まって、何かヒソヒソと話してる。どこのグループにも入っていないのは、あたしと転校生の火村くんだけだ。

 いや、よく見ると修二くんのグループだけは、みんな青い顔をして黙ってうつむいている。

 あれ?そういえばリーダーの修二くんがいない。まだお腹の具合が治っていないのかな?

 ガラッ。

 教室のドアが開いて、村上先生が入ってきた。

 「おはようございます。みんなに聞きたいことがあります。木下くんが昨日から家に帰っていないそうです。誰か木下くんのことについて知ってる人はいませんか?」

 修二くんが行方不明ですって?一体何があったんだろう?

 「あ、あのう先生」

 修二くんのグループの1人である沢田くんが手をあげて言った。

 「沢田くん。何か知ってるんですか?」

 「オレ、昨日、修二と遅くまで遊んでて、森田公園のところで、別れたんです。修二、公園に用事があるって言ってました」

 「それは何時くらいですか?」

 「えーと、確か7時30分くらいだったと思います」

 えっ?沢田くんの話を聞いて、あたしはドキッとした。昨夜の7時30分ごろの森田公園といえば、あたしがあの化け物と会った時間とほとんど同じだ。

(第4話へと続く)