私くらいの天才になると、
基本的には、一般的に“助手”と呼ばれる
人間の存在を必要としない。
あらゆることが自分一人で出来てしまう上、
私の天才ぶりについてこられる人間が、
そうそうこの世にはいないため、
むしろ助手の存在が足手まといになりかねないのだ。
しかし、そんな思いとは裏腹に、
私は、心と胸が貧しい女に何かとまとわりつかれて、
甚だ迷惑している。
山田という貧乏奇術師が、それだ。
家賃や食事を施してやった上、
フィールドワークへの同行を許しているうち、
いつの間にか、助手気取りで
あちこちついてくるようになってしまったのだ。
付き人兼、奉公人……というよりは、
むしろストーカーと言っても過言ではない山田。
放っておくと何をしでかすか
分からないのだから困りものだ。
コメント欄を見ると、一部、私と山田の関係を
勘違いしている者もいるようなので
ここで改めて断言しておこう。
私が山田の相手をしてやっているのは、
どん底のホモサピエンスのメスを
保護、観察するという
社会義務に突き動かされてのことである。
折に触れて山田のことが頭を過るのも、
そのせいだろう。
いや、そうに違いない。