季節は間もなく6月。
梅雨入りの時期である。
雨で思い出すのが、
私が以前、タクラマカン砂漠を旅していた時のこと。
各国の名だたる科学者とフィールドワークを行っていたのだが、
我々一行は、その時、100年に一度という大雨に見舞われた。
年間降水量が10mm程度といわれる乾いた砂漠で、突然の豪雨。
それは、世界の頭脳と言っても過言ではない
優秀な人間たちでさえ慌てさせる突発的な出来事だった。
しかし、その時、私だけは微塵も慌てることなく、
一切雨に濡れずに済んだのだ。
なぜなら、私はもしもの時に備えて、
鞄の中にビニール合羽を用意していたからである。
このことから、私がいかに周到かつ並はずれた才能を持ち、
常にベストを尽くしているかをうかがい知ることが
できるだろう。
ちなみに、今日の東京は降水確率の低いの晴天予報だが、
私の鞄には今、「ビニール合羽」が入っているばかりでなく、
ビニール合羽を濡らさないように上から着込む
「ビニール合羽合羽」と、
ビニール合羽合羽が濡れるのを防ぐ
「ビニール合羽合羽合羽」が入れられている。
ベストを尽くすということは、
棚に何気なく置かれた物品にも、
ひとつひとつベストが尽くされている