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また長いのを書きました。
今回はその前編をアップします。





「11階の占いコーナー」前編



私は、友人から裏切られてしまった。

私は彼女よりも11才も年下だし、
彼女の人生経験に対しては敬服してたつもりだ。

なのに何が気に入らないんだか、
もう友達とは思わないと言われてしまった。
随分な話ではないか…

彼女は暗い性格のバツイチ経営者。
でも私だけは友達のつもりだった。

抑、そんな仕打ちをされるような事を
私がしただろうか?
随分考えたが、思い当たるフシなど何もない。

まったく我儘な人だ…
お陰ですっかり心が折れてしまった…

気晴らしに旧友のユミコと買い物して
お茶でもしようと思い、LINEで知らせたけど、
今以て未読。

そう言えばユミコ、仕事だった…
彼女なら、
何か良いアドバイスでもくれるかと思ったのに…
ホントに憂鬱。何だか此のまま帰る気にならない。
ぐずぐずとそんな事を思い、いつしか足は
ステーションビルへと向いていた。

さて、何階へ行こう?

そうだ、
11階のレストラン街に占いコーナーが
あった、この際だから観てもらおう…
そう思ってエレベーターへと向かう。

…観てもらうの初めてだから、何だか怖いな…
そう思うもやはり乗り込む。
…平日の昼間のせいか、乗ってるの私だけ…
そしてやがて11階に到着。

だが降りたら、
何だかいつもと様子が違う事に気づいた。

いつもの真新しい明るさとは裏腹に、
薄暗い昭和臭に満ちた佇まいが其処にはあった。

中央には巨大な噴水。古色蒼然の大食堂。
まるでタイムスリップしたみたい…

愕然とする私の目に、
薄紫の衝立に囲われた占いコーナーが飛び込んだ。立て看板には「白蓮占い鑑定」とある。

あんな内装だったっけ?
それに名前も違ってる…

確か「占いサロン ボン・シャンス
とか言う名前だったかと…
経営者が変わったのかな?

何はともあれ、
鑑定所へと近づいたその時だった。

信じたいと願う者は疑う…
いきなり衝立の向こうから呟く声がした。

驚いて振り返れば、
其処に居たのは40前半くらいの
赤いスカーフを首に巻いた占い師だった。

お友達を突き放しちゃったね
…占い師が笑んでいる。

…え?」言葉に詰まり、棒立ちになった私に、
どうぞこちらへ。此処がお目当てでしょ?
相変わらず占い師は笑みを浮かべ言ってる。

あ…、はい。
返事をしながら占い師の顔を見る。

…何処か懐かしさを感じる顔だ…
でも、何で?…
そう思いつつも言われるままに私は席に着き、
そして堰を切るように、私は経緯を話した。

占い師は目を細め、時折は頷き、
私の話を聞いている。

観て欲しいのは、彼女が今私を
どう思ってるか…
私の依頼に占い師は、目の前の水晶球を
暫し凝視し、そして徐に口を開いた。

先程も申し上げたけど、
突き放しちゃったのよ、あなた…

私が、ですか…?
その言葉に私は納得がいかず、聞き返す。

寂しがり屋さんね、あなた。
でもそれとは裏腹に、いつでも孤独な道を選んでしまう…お友達にはそれが耐えられなかったのね。

…はい…
そうかもしれない…私は思った。

それと言うのも、
お小さい頃にあなたは寂しい生い立ちを
なさったからなのよね…
占い師はそう言うと、ちょっと苦しげに眉間に
皺を寄せ、そしてその険しい表情を前に、
思わず私は緊張した。

さあ、見てごらんなさい。
此処に写し出されるヴィジョンを…
そう言って占い師は私を促した。

占い師の顔からは、もはや険しさは消え、
至上の愛を湛えて笑んでいるように見えた。

私はその優しさに誘われるようにして、
目の前の大きな水晶球を覗き込んだのだった。



次回へ続く。






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