民話って、面白いですよね。


似たような話が各地にたくさんあって。



近い地域にも、殆ど同じ…だけど、結末が違うよ、というお話がたくさんあります。





さて。

遠野物語は、

岩手県遠野町(現・遠野市)出身の小説家で、

民話蒐集家であった佐々木喜善氏によって語られた、

遠野盆地~遠野街道に纏わる民話を、

柳田國男氏が筆記・編纂し、

自費出版した説話集です。





本編は119話で。

続いて発表された『遠野物語拾遺』には、299話が収録されています。






その、遠野物語拾遺の中に、前回と全く同じ話がありました(・ω・)ノ



今回は、原文だけでお楽しみください。( ´ ▽ ` )














遠野物語拾遺178話    五郎兵衛淵

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橋野の沢檜川の川下には、五郎兵衛淵という深い淵があった。

昔この淵の近くの大家の人が、馬を冷しにそこへ行って、

馬ばかりおいてちょっと家に帰っているうちに、

淵の河童が馬を引き込もうとして、

自分の腰に手綱を結えつけて引張った。




馬はびっくりしてその河童を引きずったまま、厩に入り、河童は仕方が無いので馬槽の下に隠れていた。


家の人がヤダ(飼料)をやろうとして馬槽をひっくりかえすと、中に河童がいて大にあやまった。


これからは決してもうこんな悪戯をせぬから許してくなさいといって詫証文を入れて淵へ還って往ったそうだ。


その証文は今でもその大家の家にあるという。


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前回ご紹介した『遠野物語 58話』と違うのは、

出てきた地名と、



詫び証文なるものです。





詫証文は、“わび じょうもん”と、読みます。

「お詫びのために書く文書」です。






民話には、河童と詫証文の話は多々あるようです。



一般的な証文は、金銭の貸し借りでよく発生するのですが、

その証文に神の権威を付けたのが、熊野の起請文だそうです。



大抵、人間が神との契約を結ぶものが起請文なのですが、

この河童の詫証文の場合は、河童という妖怪が人間と結ぶ契約書という事になります。





ところで、



柳田國男氏は

「妖怪とは、神の零落したものだ。」

と、おっしゃっているそうです。




本来河童は、神の領域に近い存在なのですが、

零落し…身を落とした事によって、

人間の領域に近付き。



その人間の作った契約書である詫証文を重要視せざる負えない河童は、神の属性から、人より下の生き物となってしまいました。



つまり…


平安時代以前から魑魅魍魎や妖怪は、

人より上の、神に近い存在だったものなのに、



江戸時代になり、闇の領域に棲んでいて人間を驚かせていた妖怪たちが、

太平の世となった江戸時代において、畏怖の領域が薄れ、

人間と対等か、それ以下の存在になってしまいました。








河童は、愛嬌があって、いたずら好きで。




人に愛される要素を持つ妖怪ですが…







人より下に見られているのは、なんとも、切ない気がします…。








実は、

河童はあるものが蘇った物、と、言われているのです…










続く








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