三蔵一行は、白虎嶺(びゃっこれい)という高い山にさしかかりました。
ひどくけわしいところまで来たとき、三蔵が悟空に
「とてもお腹が空いているのです。
托鉢をしてきてくれませんか?」
と言いました。
「こんな山のどまんなかに、人家なんてありませんよ」
と、悟空に返されて、空きっ腹で少々頭にきたらしい三蔵は、
「悟空は怠けたがっているのですね。
だからそんなことを言って、私にひもじい思いをさせるのですね!」
と、あたり散らし。
なおも、おなかがすいたと言い張る三蔵のため、
仕方なく悟空は、南の山に山桃がなっているのを見つけて、もぎに行ってしまいました。
さて、この山にも妖怪がおり、三蔵をみつけました。
唐からくる坊主は金蝉子の生まれ変わりで、十世に渡り修行を積んだとびっきりの聖人だから、
その肉を食べると長寿になる事まちがいなし、と大喜びしました。
しかし、三蔵の側には八戒と悟浄がいるので、手を出せません。
そこで、美しい娘に化けて近づきました。
三蔵はともかく、八戒も相手が妖怪だと見分けられない始末…
飛び戻ってきた悟空は、すぐに化けものだとみやぶりますが、三蔵は信じようとしません。
悟空は、三蔵の制止も聞かず、如意棒で打ちかかりました。
しかし、化けものはにせの身体をそこに置いて、本体は逃げ出しました。
にせの身体の死体が残っているので、三蔵はたまげてふるえ、八戒のけしかけもあって、頭の輪が締まる緊箍児呪を唱えました。
つぎに化け物は、老婆に化けてやってきました。
またも化け物だと見破った悟空。
今度も如意棒で叩きましが、また化け物はにせの死体を残して逃げていき。
悟空はまた、痛い思いをすることになりました。
一方、化けものも まだあきらめません。
今度は老人になりすましました。
その老人も化けものとみやぶった悟空ですが、
やっつければ師匠があの呪文を唱える、
でもやっつけなければ師匠をさらう、
と考え、 今度は、土地神と山神を呼び出すと、証人となってもらい、ようやく化けものを倒すことに成功しました。
びっくりした三蔵が呪文をとなえようとすると、悟空が死体を見るよう言いました。
三体の死体は、骸骨になっていました。
それを見て三蔵は信じかけたのですが、八戒が横から、
「悟空の兄貴は、妖力で目くらましをして、自分の悪業をごまかす気なんですぜぃ」
と口をはさみます。
人の言葉に左右されやすい三蔵は、八戒のでたらめな告げ口を信じ、悟空を破門してしまいました。
悟空が別れの礼をするときも、
「わたしは善良な僧侶なのだ。
おまえみたいな悪人の礼など受けるものか」
などと、独り言とは思えない声の大きさで悟空の礼を拒否しました。
三蔵がなんとしても自分の行動を理解しないし、許してくれないと見て、悟空は悟浄に
「八戒のでまかせに乗せられないようにな。
もし師匠が妖怪につかまえられたら『悟空が一番弟子だ』というんだぞ、いいな! 頼んだからな!!」
と言い含めました。
そして、もはやこれまでと、涙をのんで故郷の花果山にかえっていったのでした。