West「無事二級免許とりましたよ」
―おお、おめでとうございます。やっとですね。
…といった会話を交わしたのが、たしか今年の1月末くらいのことで、
僕の釣り友達であるWestさんが将監川をホームリバー宣言したのが2016年のことだったと記憶していますから、
遅きに失した感がハンパないというのは置いておいて、ひとまず素直に祝福した僕だったのでした。
…これで、Westさんが将監川に行きたくなる都度、僕が駆り出されることもなくなるのか、と思えば謎の寂しさも沸いてこようというものですが、
「エレキを買うより前にやるべきことがあるでしょう」と常々言い続けていた立場としては、おめでとうございます以外に言うべき言葉が無かったのでした。
以前にも書いたような気がしますが、船舶免許を取得するメリットというのはバスボートのような大型のボートを操船できるというメリット以上に、10ftを超えるボートしか置いていないボート屋さんを利用できるようになるという面の方が大きく、
Westさんも船舶免許を取得したことで、今まで以上に色々なフィールドに繰り出すことができるようになったはずなのでした。
では、シーズンに入ったら、ちょっと変わったところでも行ってみましょうか、なんて会話をしていると、いつの間にか季節は進んで、暦は既に春です。
実は3月、4月とWestさんと数回釣行をご一緒させていただいていたのですが、何の盛り上がりもない単なる散策で終わってしまっていた僕は、
初バスが5月になってしまったというニワカバサーなりの危機感を覚えながら、5月6日にもWestさんと釣行の約束を交わしていたのでした。
West「そういえば、今年もWestカップをやろうと思ってまして」
―お、なるほど。いいですね。
West「6月を予定しているんで空けておいてください」
―了解です。
West「ビジ夫さんはエレキなしでカウントしておきましたから」
―あ、ありがとうございます。それで大丈夫…、
…ん?
ここで僕は重大なことをここに告白しなければなりません。
僕のブログのタイトルにもある「オカッパリで釣行」うんぬんという、
このタイトルを完全に無視した内容になってきているというのは別に今に始まったことではありませんが、
しかしそれにしても、僕は非常に重大なことを今この瞬間に告白しなければなりません。
…実はわたくし、ビジ夫ですが、1年以上前からマイエレキを所有していたのでした。
キッカケは、以前に僕が主催していた大会にもご参加いただいたことがある一人の釣り友達の方より、
新しいエレキを買うので古いのをあげますよ、というまことにありがたい申し出を受けたところから始まっていたのでして、
いやいや、そんな高いものいただけませんよ、いえいえ、知っている人に使ってもらう方がいいですから、
などという大人のやり取りを挟みつつ、ありがたく頂戴いたします、となったのが、実に2016年末のことだったのでした。
そう、実に1年以上、僕はマイエレキを有しながらこれを活用するということが無かったのでした。
…これには、せっかくご厚意でくださった友人に対して失礼千万だというご意見もありましょう。
あるいは、釣り歴10年近くして到来した新領域を切り開くチャンスをみすみす無為にしたのだと見る向きもありましょう。
種々のご批判は甘んじてお受けしますが、しかし僕はそれでも一言だけ言いたいのです。釈明をさせていただきたいのです。
―だって、怖かったんだもん。
…何を言ってるんだ、コイツは、と思われることでしょう。
もはや釣り歴も10年を数えるほどになった40近い大人が、何をのたまったのかと混乱されることでしょう。
それは僕も充分理解しています。承っております。
しかし、僕はもともと「フットコンエレキ」なる存在を、非常にハードな、高難易度のツールと捉えていたフシがあったのでして、
言わば、高いリターンを還元する代償として相応の技量を要求する、チューニングされたスポーツカーのような印象を持っていたのでして、
実はこの10年、フットコンエレキを操縦したことはおろか、まともに操作方法さえ知らなかったのでした。
要するに僕がレンタルボートに乗った経験とはすなわち全て他人の同船ということになるわけですが、
熟練の友人たちですら、あやうく立ち木に突っ込みそうになったり、座礁しかけたりなどという場面を目撃しているわけでして、
そんなものを自分自身が操縦するなど、あまつさえ有するなどということは、僕は露ほども考えたことはなかったのでした。
…しかし、思いがけず手に入ったエレキ、いつの日か自分自身で操船して初のエレキバスを釣ってみる、
そのことに思いを馳せ、わずかながら自分自身の超保守的な思考が変化してきたのがつい最近のことで、
冒頭のWestさんからのWestカップのお誘いにより、唐突に僕の決意は固まったのでした。
―…一人でボートを出して、エレキを操船して、バスを釣ってみよう。
もともとWestさんと釣行を約束していた5月6日は「マイエレキで一人でボートを出してみます」と告げ、
僕は今更ながら、マウントがどうの、デッキがどうのというフットコンエレキの基本的な知識を勉強し始めたのでした。
5月6日。
Westさんは同じく釣り友達の「リョウ」くんにも声をかけたようで、
Westさん操船のボートにはリョウくんが相乗り、
そして僕は初の一人乗船ということで、当日の段取りが決まったのでした。
Westさんとリョウくんはリョウくんの車に相乗りして現地に向かうとのことでしたので、僕はマイエレキを自分の車に積み込み、自分だけで同じボート屋さんに向かいます。
…よく考えるとこんなこと自体が初めてのことです。
将監川沿いのボート屋さんに到着した僕は、ボート屋さんのご主人に挨拶をし、
「ボート1台と、バッテリーを1個お願いします」と声をかけます。
…こんななんでもないようなことでも、若干声が上ずります。
「セッティングするならそこに車を付けちゃっていいよ」とご主人からありがたい申し出を受けますが、
なにしろセッティングの方法がわからない僕はこれを謹んで辞退します。
僕にセッティングの方法を教えてくれるはずのセッティング先生はいまだに到着していないようですが、僕は車の中でオニギリを頬張りながら待つこととします。
―とりあえず、今日はバスを釣るというよりは、とにかくWestさんに付いて回って操船方法を覚えることだ。
と、今日の優先順位を確認します。
しばらく操船すれば慣れてくるのかもしれませんが、油断したところで事故を起こしてしまうようでは本末転倒というものです。
ちょうどオニギリを食べ終わったころを見計らったように、リョウくんの車が駐車場に現れました。
―待ちかねましたよと、Westさんとリョウくんに挨拶をすると、会話もそこそこにさっそくエレキのセッティングに取り掛かることにします。
慣れない手つきでデッキを取り付け、エレキを固定するとおもむろにWestさんが話しかけてきます。
West「バッテリーのコードは両方同時に付けたら大変なことになりますよ」
―そうなんですか。
West「これ、フリじゃないですからね」
―…。
なんでわざわざこんな僕をビビらせるような言い方をするのか理解に苦しみますが、
言われたとおりにコードを片方ずつ順番に取り付ける僕です。
―あれ、ペダルになんかペコペコしたもの付いてますけど、これなんですか。
West「それがアクセルペダルですよ」
―え?これが?
West「アクセルペダルを踏みながらペダル全体を前に踏むと右に曲がります。後ろに踏むと左に曲がります」
―あ、そゆこと?そういう仕組みですか。
West「で、横のダイヤルが出力ですよ」
―…なるほど。
…こんな基本的なことすら知らなかった、というよりも、知ろうとしなかった僕です。
しかし、こんな複雑な操作をしながら、平然とみんな釣りをしているというのか。
軽く狼狽しながらどうにかこうにかエレキをセットすると、僕の狼狽を知ってか知らずかさっさと出船しようとするWestさん。
―あ、ちょっと、置いてかないで…
あわてて追いかけようとアクセルペダルを踏み込むと、
「ガックン!!!」
―ビクゥゥゥ!!!!
West「…出力が高すぎですよ。最初はちょびっとにしないと危ないですよ」
―そんなこと言われたって、最初なんですからわかりませんよ、
…と、軽く逆ギレをしつつダイヤルを弱い方に回します。
恐る恐るペダルを踏んでみると…
…おお、ガックンしないではないか。
それで?前に踏むと…、おお、なるほど。
んで後ろに踏むとこうなると、なるほどなるほど。
West「踏み続けるとエレキの先端の矢印が周り続けますから。後ろを向かせればバックですよ」
―そういうことですね。なるほどね。
ハンドコンのエレキなんてものは操作も直感的でわかりやすいものですが、足だけで操作をしようと思えば、一見複雑に思えてもこれが最適解の操作方法だということなんでしょうか。
…フムフムといろいろ試している間にいつの間にかWestさんは対岸に向かって発進しています。
慌てて追いかけて僕も対岸に到着すると、眼の前にはいきなり美味しそうなカバーが広がっています。
―ひとまずこの状態で釣りを試してみよう、
ということでおもむろに立ち上がります。
―…む、もうちょっと岸と平行にした方がいいかな?ちょびっとだけ回頭して…、
およ、行き過ぎたか、慣性がつくから早めにペダルを離さないといけないな。
こんなもんか、こんな感じにして…、
…おお、いいじゃないか、岸とピッタリ平行になった。
よし、これであの美味しそうなカバーを撃ってみようではないか、と思ったときにはその美味しそうなカバーはとうの昔に通り過ぎてしまっています。
…え、ちょっとこれ、操作に手(足)一杯で釣りするヒマないじゃん。
いや、もう、ひとまずボートポジションとか適当でもいいから、まずは釣りができる状態まで持っていこう。
あそこにカバーが見えてきたからピッチングで突っ込んで…、
…お、いい感じにポケットに入ったぞ。ボートが若干流されてるから少しラインスラックを多めにしておくか…。
…しかし、反応、なし。
リグを回収しようとふとボートの流れている方向を見ると、目の前には今にもぶつかりそうな距離に立ち木が生えています。
―おわっ!あぶねっ!!
…あわててボートを急旋回し、なんとか激突は免れました。
―ちょっとWestさん!!
West「なんですか」
―これ、操船に集中してたら釣りができないし、釣りに集中しようとすると操船できないじゃないですか。
West「僕も最初はそんな感じでしたよ。慣れです。慣れ」
―慣れたからってどうにかなるもんですか、これ。
West「僕らはエレキを動かすときに先端の矢印見ちゃうじゃないですか。上手い人は釣りしながら右足の感覚だけで思い通りに操船できるらしいですよ」
―えぇ…。
West「その域までがんばりましょう」
…そんなの、もう、いつになることやら見当もつきません。
やはり、フットコンエレキなんて上等の品は僕程度のニワカが手を出してよいものではなかったのだ。
僕みたいな便所コオロギは友達にペコペコ頭を下げて、ありがたくボートの隅に同船させてもらうのがふさわしい分際というものなのだ…。
…そんな卑屈なことを考えながら、それでもどうにかWestさんのボートを追いかけつつ、釣りを続けていきます。
Westさんのボートから付かず離れずの距離を保ちながら撃ち続けていると、不意にWestさんはボートの速度を上げ、岸際を離れました。
…どうやら、今いる場所を見切って先のポイントへ行くようです。
あらためて岸際を見ると、どうやら水深は10cmあるかないかという程度で、なるほど、どうやら浅すぎると判断したようです。
―たしかに、この水深じゃバスは付かないかな。
…そう思いながら、僕は目についたカバーにリグを放り込みます。
カバーというよりは、ちょっとした竹が覆いかぶさったレイダウンと呼ぶべきでしょうか。
リグは竹の中には入らず、枝にそってレイダウンの表側に着底します。
…コツン。
―…む?
…たまに、水中の立ち木なんかを撃とうとすると、リグが沈んでいく最中に水中の枝に触れて魚のアタリかと勘違いするようなこともありますが、
今のは完全に着底してからの反応。
つまり、まず魚に間違いない。
喰ってるのか、離したのか、ロッドからはその先の反応が伝わってきません。
…いや、きっと喰ったかもしれない。喰っているはず。喰ったに違いない!
確信というよりは希望を込めてラインスラックを巻取り、
思い切りフッキングします!
…ゴッ!!
―やっぱり喰ってやがった!乗ったぞ!!
何ヶ月ぶりの魚の感触だろうか、そんな思いがチラリと頭をよぎりますが、余裕こいて引きを堪能している間にバラシでもしたら僕はすぐさま将監川に入水して自殺でもするしかなくなってしまいます。
一発気合を入れて、ロッドのパワーに任せて思いっきりぶっこ抜き、ボートの中に引きずり込みます!!
…ヨッシャーーーーーい!!
―いやー、今年の初バスのわりになかなか良いバスじゃないの、やせてるけど。
40…あるかな、無いかな?ちょっと足りないか?
メジャーメジャー、と…。
…あ。そうか。
いつもボートに乗る時は、同船させてもらう方のネットなりメジャーなりを当たり前に借りていたものなぁ。
自分で用意するという発想がなかった僕は、ナチュラルにメジャーを忘れてきてしまっています。
―自分で船を出すときには自分で持ってこないといけないのか。まったく頭に無かった。
…どうやら、自分でも無意識のうちにかなりの甘え根性が身にしみてしまっていたようです。
こりゃ初心に帰って、気を引き締めなければならんなぁ、なんてことを考えますが、
それはそれとして、この手に持ったバスはどうすべきでしょうか。
―40…、ギリ無いと思うけどなぁ。無いならリリースしちゃってもいいけど、実は40ありましたなんてことだと悔しいし…。
…うむ。
こういうことは後悔先に立たずと言います。
ひとまず全速力でWestさんを追いかけ、速やかに全長を計測し、さっとリリースする。
これでいきましょう。
…そう考えるが早いか、エレキの出力を最大にして一刻も早くWestさんのボートに追いつくべく、勢いよくペダルを踏んだ僕だったのでした。
…幸い、それほど離れていなかったWestさんに追いつくと、「すいませんがメジャー貸してくれませんか」と声をかけます。
West「…え?なんでですか?」
振り返るWestさんとリョウくん、そしてバスを掲げる僕の目が合います。
リョウ「うそぉ!マジですか?」
West「え、いつの間に?どこですか」
―さっき二人が素通りしたところですよ。レイダウンぽくなってるところにいました。
リョウ「ちょっとWestさん!!」
West「…あそこかぁ。浅いからいつもやらないんですよね」
―岸際じゃないですよ。ちょっと手前に引いたとこです。
West「僕と同船してたら釣れなかった魚ですねそれ」
―はい、そのとおりです。
West「クソー、何で釣ったんですか」
―直リグですね。
West「あ、それもしかして前に僕があげたやつじゃないですか!?」
―そうです。前にWestさんにもらったWestさんの自作のやつです。
West「ワームも!僕があげたやつ!」
―そうです。前にWestさんにもらった光太郎の新作のやつです。
West「結局全部僕があげたもので釣ってんじゃないですか!!」
…さも「自分が釣ったも同然だ」とでも言いたげなWestさんに、「腕の問題っす」とだけ告げて、借りたメジャートレイにバスを載せてみます。
リョウ「40ありそうですねそれ」
―いや、ギリないと思うんだけどね、…て、あれ?あるわ。
リョウ「41!」
―41だね、痩せてたからちょっと小さく感じたのかも。
…よかったよかった、わざわざ追いかけてきた甲斐があったわい、ということでバスをリリースします。
水面を跳ねて戻っていくバスを見送ると、さて、では続きをやっていくとしましょう。
先ほどと同じように、ちょっとした張り出したカバーの外側などに狙いをつけて、直リグを送り込んでいきます。
チラリと横を見ると、先を行くWestさんもリョウくんも、岸際に絞ってリグを投げている様子。
…今日は気温も25度以上になるみたいだし、巻くよりはこのまま撃っていったほうが釣れるかもしれない。
浅からず深すぎず、なるべく先ほど釣ったシチュエーションと似たような箇所を探して撃っていくと、
不意に
リョウ「きた!!」
―え、とWestさんのボートの方に視線を向けると、リョウくんのロッドが大きくしなっています。
…リョウくん、掛けたのか。あれ、結構大きいんじゃないのかな。
West「デカイ!これデカイ!」
リョウ「やった、よし、オッケーーーー!!!」
…どうやら無事にランディングできたようです。
近寄って、魚を覗いてみることにします。
West「45はあるんじゃない?」
リョウ「…いや、44ですね。でも、よかったー」
―いい魚じゃない、おめでとう。カバーの奥?
リョウ「奥でしたね」
West「結構手前で掛けてなかった?」
リョウ「いや、奥で掛けて、そのまま手前に走ってきたんですよ」
…なるほど。
さっきの僕の魚にしてもそうですが、どうやらかなり魚は岸際に寄っているらしい。
となれば、広範囲を巻いて探っていくよりも岸際に絞って撃っていったほうが結果が早そうです。
…日が昇り、かなり気温が上がってきました。
たしか、ボート屋に到着した時点で気温は13度だったはずですが、今はおそらく25度は超えているでしょう。
この朝昼の寒暖差はこの時期ならではという感じです。
僕は羽織っていた上着を脱いで片付けるとインナーの袖をまくり、黙々と岸を撃ち続けます。
ボートの操船にもだいぶ慣れて、ちょっとした角度の調整や撃っているリグの間隔に合わせたスピードの付け方もこなれてきた気がします。
…強い日差しが肌をチリチリと焼く感触が伝わってきて、ひょっとするとこれが今年最初の日焼けになるかもしれません。
そうこうしているうちにたどり着いたのは、一昨年の年末にバスを釣り上げたポイントです。
Westさんいわく、この一帯は他よりも水深が深くなっていて、巻きでの実績が多いんだそうです。
僕が釣ったのは真冬ですから、状況が同じとは思えませんが、一応、クランクを巻いてみることにします。
ボートを少しずつ流しながら、グリグリ、グリグリとやっていくと…、
…ゴッ!
―…うお、ほんとにきた!?
追いアワセを入れ、一気にボートに取込み…、
…フルン
―え、え?バレた?
…バレた!!!うおおおおおおおおおお、クッソー…!
がっくりと肩を落とします。
…掛かりが浅かったか、ひょっとしたらスレだったかもしれません。
あるいは、それほど強い引きではありませんでしたから、魚自体が小さくてしっかり喰っていなかったのかもしれない。
West「…バレました?」
…見ていたらしいWestさんが声をかけてきます。
―ました。…まぁ、ちっちゃかったと思います。たぶん。
West「ほら、ね?付くんですよ、ここは」
…たしかに、なんでか理由はわかりませんが、ここに魚が付くというのは確からしい。
てことは?別に巻物にこだわる必要はまったくないのではないか。
むしろ、キャロかなにかでじっくり探っていったほうが釣れるような気がします。
だって、魚がいることはわかっているのですから。
思いついた僕は撃ち者用のタックルを一つキャロライナに変更して、魚の反応があったあたりを探ってみることにします。
―…ん、どうやらシンカーがコツコツと何かに引っかかる。たぶん、木か何かが沈んでいるのかもしれない。
…しかし反応はありません。
―あれ?別に水中のストラクチャーに付いているというわけではないんだろうか。
…しつこく探ってみますが、まったく反応なし。
―うーん、まぁ、一回掛けちゃってるということもあるし、散っちゃったのかもしれない。
次に来ることでもあれば、また試してみることにしましょう。
そのポイントを離れます。
…さて、ここからどうすべきか。
このまま進んで行ってもいいけれど、帰りの時間を考えるとボチボチ引き返したほうが得策か。
いつの間にか周囲にWestさんの姿はなく、どうやらさらに先へ進んでいったようです。
一人では若干不安だし、追いかけるべきか…。
…いや、40にもなろうといういい大人が、若干不安だしも無いだろう。
さっき釣った場所に戻って、もうちょっとじっくりねっとりやってみようか。
ボートの出力をあげ、初バスを釣り上げた場所に一気に引き返します。
さきほどの直リグではなく、4インチセンコーのノーシンカーを使って試してみることにしましょう。
…着水に気を付けながら、静かにカバーの表にセンコーを落とし込んでいきます。
…むぅ。
反応は全くありません。
バスが付きやすい場所というわけではなく、さっきのは宝クジのような幸運だったということか。
一般論として、釣り上げたシチュエーションに拘りすぎるのは愚策と言います。
しかし、それを繰り返して釣れた時にはパターンだと言います。
…バス釣りは難しい。
時間も時間ですし、このポイントは諦めましょう。
こうなると、もう見当もつかない僕はタックルを巻物にチェンジします。
ステルスペッパー。
自分の中では春先に調子が良いルアーですが、これでボート屋さんまで巻き続けて、それで今日は終わりにしましょう。
適当に岸際に向けて投げ、グリグリと巻きながらボート屋さんへ向かっていきます。
ボート屋さんまであと100mちょっとでしょうか、ぼちぼちタックルを片付けて本格的に接岸の用意でもしようかというところ。
おそらく水深は50㎝程度のシャロー。
今までと同じようにステルスペッパーを岸際に投げ、グリグリと巻いてみたところ、
…ずむっ
…と、何やら重たい感触。
魚の反応ぽっくはないから、どうやらゴミでも引っかけたか。
ゴミごと引き寄せようとタックルを強引に寄せてみたところ、
…ギュン!!!
―え!?
…魚だ!!
瞬間的に追いアワセを入れ、魚とのやり取りに入ります。
しかし、
―あ、これ結構デカいわ。
一匹釣っていることで割と冷静になっている僕は、魚の引きからなんとなく大きさを予測します。
…45あるな、これ。
となれば絶対にバラすことはできない魚ですが、掛けたロッドは巻物用のMLでラインの太さは10ポンドです。
魚が抵抗している時には無理に巻かず、巻ける時には思い切って巻くメリハリファイトで寄せてきます。
―もうすぐランディングできる距離、普通の魚ならここから思いっきり突っ込んだりするから慎重に…、
…あれ?
何やら若干の違和感を覚えます。
この、何とも言えない「のぺっ」とした引き。
キミはもしや…。
…やがて水中から姿を現したのは、ヘビのようなトカゲのような…、
―ああ、やっぱりキミ(雷魚)か。
バスプロよろしく勇ましくハンドランディングでも決めようかという体勢だった僕は慌てて身を起こしてプライヤーを手に取ると、
四苦八苦しながらぬるぬる雷魚を触らないよう悪戦苦闘してリリースしたのでした。
2018/5/6(日)
晴
弱風
気温:13→27度
水温:??
アタリ:2
バラシ:1
ゲット:1
という感じで僕の初エレキ釣行はオチがついたわけだったのでしたが、
しかし、いざ自分で操船してみると、今までわからかなかった、わかろうとしなかったことが体感できたのでした。
自分で操船するということは、やはりそれなりの苦労を伴うものであるということは間違いないわけですが、
巻物をやりたい、あるいは撃ちたいという自分のフィーリングに合わせて、ボートのポジション、ないしは速度を調節できるというのは大きなメリットです。
なにしろ、今までは船長のやりたい釣りに合わせた釣りをやらなければならないというジレンマがあったわけですが、
というか、僕はそのジレンマに気づきもせずに「ボート釣りとはそういうもの」という意味不明な思い込みがあったわけですが、
自分のやりたい釣りを、自分のやりたいタイミングでできる、という点だけ取ってみても、これは大きな違いと言えます。
今まではそれが当たり前だったわけですが、自分で操船してみて、それがディスアドバンテージだったということに今さらながら気が付いたわけだったのでした。
…とはいえ、同船者とのちょっとした会話もできない孤独感と差し引きで考えると、相乗りもまんざら悪いものではないという気もするわけです。
さて、お誘いを受けたWestさんの大会ですが、今まで通り相乗りをさせてもらうのか、それとも自分で操船して、初めて誰かを後ろに乗せてみるのか、
どちらにしようかと、うーむと悩んでいる今日この頃だったのでした。