アメリカ経済の面目が丸つぶれになりそうな社会主義国デンマークの優れた点9つ

9 ways socialist Denmark leaves the US economy in the dust
2015年10月21日【US Uncut】http://usuncut.com/world/here-are-9-reasons-denmarks-socialist-economy-leaves-the-us-in-the-dust/ より翻訳

C. Robert Gibson著

バーモント州選出の上院議員バーニー・サンダース氏が、誇らしげに民主社会主義者であることを宣言し、デンマークが理想的な社会民主主義国であることをほのめかしたおかげで、現在、ニュースメディア上全体ではデンマークに関する議論が活発になされています。

しかし、デンマークの社会主義はほとんどすべての計測可能な基準においてアメリカ式資本主義を上回っていると報道するだけの度胸があったメディアはほとんどありません。

次にデンマークがアメリカを上回っている点の一部をあげました。

1.デンマークの失業者は、2年に渡り以前の給与の90%を受領している




デンマークでは失業者に対して手厚い社会保障がなされています。3年の間に52週間以上、働いた労働者に対しては最高で2年の間、以前の給料の90%を受領する資格が認められています。

失業中の国民に対して、デンマーク政府は多数の職業訓練を提供しています。その結果として、15歳~64歳で給料の発生する仕事に就労している人の割合アメリカでは67%であるのに対し、デンマークでは73%となっています。


2.デンマークの医療費はアメリカよりもはるかに少ない

先進国の医療費に関する世界銀行によるデータ


経済協力開発機構(OECD)によると、アメリカの一人当たりの医療費は、税金で賄われている国民皆保険制度が全国民に認められているデンマークの2倍近くを支出していることになります。

2009年のOECDのデータによれば、アメリカは一人当たり$7,290の支出になっていますが、デンマークは$3,512の支出にすぎません。上記グラフでご覧いただけるとおり、世界銀行のデータによれば、デンマークの一人当たりの医療費は、アメリカのものよりも約$3,000低くなっていることが明らかです。


3.デンマークは地球上で最も幸福な国




この世界で最も幸せな国に関するデータでは、平均余命やGDP、社会保障だけでなく、「腐敗に対する考え」や「人生の中で選択する自由度」などといった要因などの基準を用いてどこの国の国民が「最も幸福」かを決定していますが、そのデータによればデンマークが最も幸福な国だということでした。

その一方でアメリカは、同じリスト上で17位にランク付けされています。

(訳注:2015のデータではデンマークは3位になっていましたが、上位10カ国は北欧など社会主義的傾向の強めの国が多くランクインしていました。日本は上位31カ国にはランクインはしていませんでしたが、幸福度が急激に低下した国の21位という望ましくないところにランクインしています)


4.デンマークは世界で一週間あたりの勤務時間が短い


デンマークはその他のOECD諸国よりも、仕事と私生活のバランスが最も取れた国です。

デンマーク人労働時間は一週間当たり平均37時間で、平均年収は$46,000(約540万円)、そして一年当たり5週間分の有給が与えられています。

そしてここアメリカでは、労働時間は一週間当たり平均47時間有給消化日数はわずか16日にすぎません。

(訳注:2010年のデータによれば日本の週当たり実労働時間は50時間平均の有給消化日数は9.3日 内閣府資料ウィキペディア


これは賃金上昇は停滞し、コストが上昇するというストレスの強い職場の風土が主な原因です。さらに競争の激しい求人市場もあいまって、長期休暇を取って職場に帰ってきたら他の誰かが自分のポストについていたというリスクを避けるために、アメリカ人は望んで自らをデスクに鎖でくくりつけていることを示しています。


5.デンマークでは大学に在籍の学生に一ヶ月当たり$900が支払われる

実際のデンマークの大学構内の様子

一方ここアメリカでは、大学に行くための費用は過去30年の間に500%以上、急上昇しています。

しかしデンマークでは、大学の学費が無料なだけでなく、一人暮らししていることを条件に学生には学校に行くための費用として一ヶ月$900(約10万円強)が支払われており、最高で6年間まで受給することが可能です。

それとは対照的に、私立大学の学費は一年当たり$31,000(約370万円)で、公立大学で州外からの学生の場合は$22,000(約260万円)、州内に居住している公立大学の学生の場合でも依然として$9,000(約100万円)の学費が求められています。


6.デンマークは先進国の中でも、一人当たりの収入が最も高い国の一つ



世界銀行による一人当たりの収入



デンマークでは、労働時間が短く、社会保障が非常に充実しているにもかかわらず、労働者は基本的なニーズに見合うよりもより多い収入を得ています。

世界銀行の一人当たりの収入のデータによれば、デンマークの一人当たりの給与はアメリカよりも約$5,000(約59万円)高くなっています。


7.デンマークの貧困率は世界でも最も低いレベルだが、アメリカは最も高い国の一つ


(グラフ アメリカの貧困率)


デンマークの貧困率は0.6%と、全OECD諸国の中でも飛び抜けて低く2位であり、これもデンマークに住む利点の一つになっています。

それと比較するとアメリカの貧困率は14.5%で、OECD諸国の平均11.3%よりもずっと高いものになっています。


(訳注:日本の相対貧困率は約16% 2015年のOECDデータより)

では、この社会主義で過保護国家なデンマークからは、あらゆるビジネス事業体は、先を競うように逃げ出していっていると思われますか?
実際にはそうでもないようです。


8.デンマークは世界でもビジネスに望ましい国の1位(アメリカは18位)




2014年、フォーブス紙はデンマークをビジネスするのに最もよい国第1位とランク付けしました。



フォーブスのランク付けでは、財産権の保証、イノベーション、税負担度、テクノロジー、汚職腐敗度、個人・通商・通貨の自由度、官僚的形式主義(お役所仕事)の度合い、投資家の保護、株式市場の実績
からなる全11の分野で評価がされています。

アメリカは同じ基準で18位でした。

(訳注:2015年度では日本は23位



9.デンマークでは子供が生まれると有給の育児休暇が52週間与えられる。アメリカでは有給の育児休暇はゼロ



デンマークでは、初めて子供が生まれた後には平均で52週間(丸一年)の有給休暇が与えられています。この52週間は両親の都合に合わせて自由に割り当てることができます。この52週間だけでなく、母親や出産前の4週間と出産後14週間の出産休暇が与えられています。父親でさえ、出産からさらに2週間の休暇を取得することが認められています。

しかしここアメリカでは、4人に1人の母親が、出産から2週間以内に仕事に復帰しています。




これが民主主義的社会主義の実情です。共和党員が騒ぎ立てているような悪夢のようなディストピアに見えますか?あるいはアメリカの国民が一致団結し、私たちの政府に対して実現を要求するに値するような理想的な国の姿でしょうか?




(翻訳終了)


***
【コメント】

社会主義に対して、何かとんでもないイメージを持っている人が多いようなので翻訳しましたが、とはいえもちろんデンマークにも問題がないわけではなく、例えば税率が高かったり、単一民族的傾向が強いので人種差別が強い、などという問題もあります。また収入は高くても、物価も同時に高いそうです。

それでも全体的に、国民の満足度・幸福度が全体的に高めというのは事実のようです。私もデンマーク人は全体的に穏やかで攻撃性が低いような印象があります。

医療費の面でも、国民の肉体的・精神的な健康さを考える必要があるかとは思いますが、これまでこのブログで取り上げてきただけでもアメリカはその点でも理想的とは程遠いようです。

またアメリカは軍事費の支出が世界でも飛びぬけていますので、その分の国民の負担も大きくなっているという面もあるでしょう。


軍事費 支出額・GDP比 国別ランキング(2011年)【ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)】
http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-95.html

1位 アメリカ 689,591,000,000ドル(55兆1672億円) (対GDP比)4.7%

6位 日本 54,529,000,000ドル(4兆3623億円) 1.0%

38位 デンマーク 4,515,000,000ドル(3612億円) 1.4%



イギリスでは大躍進の労働党党首ジェレミー・コービン、アメリカではバーニー・サンダース氏が現在の腐敗しきったシステムを鋭く批判社会主義的政策を掲げたため、資本主義が行き過ぎてとても民主主義とは呼べなくなった世の中に疲れ、希望を失いかけていた多くの人たちからの支持を集めています。


でも自由経済主義にしろ社会主義にしろ利点もあれば問題点もあるのが常で、どちらの方がよいかについて結論の出ない一方的な批難だけの一方通行な議論をするくらいなら、冷静に利点と問題点を比較・検討した上で、新しい形の政治経済スタイルを作り出したらよいのにと思いますが。

二元論の罠にはまったような右か左かという選択じゃなくその間の、あるいは外側の選択肢はないのでしょうか。


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