前回に引き続き今回は夢供養をみていきます
夢供養
発売年:1979年4月10日(さだまさし27歳の誕生日)
オリコン1位
収録曲
(A面)
1. 唐八景-序
2. 風の篝火
3. 歳時記(ダイアリィ)
4. パンプキン・パイとシナモン・ティー
5. まほろば
6. 療養所(サナトリウム)
(B面)
7. 春告鳥
8. 立ち止まった素描画
9. 空蝉
10. 木根川橋
11. ひき潮
・全体としての感想
個人的さだまさし最高傑作!
パンプキンパイのようなまさしんぐタウンの歌から、中学時代の木根川橋、さらに春告鳥は死ぬほど暗いし、さだまさしの天才的な作詞能力のまほろば、さらにさらに都会と地方との対比の名曲ひき潮まで、これまでのさだまさしの全ての要素が詰まったコンプリートアルバム。
このアルバムはレコードで聞くのがまた良くて、A面は唐八景から始まりちょっとお茶目な曲を経由しつつ、まほろば・療養所で締める。B面もひき潮で締める構成になっており、全体としてさだまさしコンサートの前半・後半を聞いているよう。
・注目する曲
4. パンプキン・パイとシナモン・ティー
言わずと知れたまさしんぐタウンの代表曲。
基本情報:
・喫茶「安眠」のマスターのモデルはディレクターの川又明博さん(川又さんはフレディもしくは三教街の名付け親)
・「安眠」の名前の由来はウガンダの独裁者イディ・アミンから。さださんは「名前がなんかかわいいから」という理由でつけた。
・「待つわ」で有名な岡村孝子・加藤晴子の「あみん」は、岡村さんがさだまさしのファンだったことから「あみん」というグループ名にした。
・2005年のアルバム「恋文」では、マスターの息子と「僕」の娘が恋をしたという設定のアンサーソング「ローズ・パイ」がある。
ここまでは基本情報ですね
ちょっと付加的な情報としては、
・「二丁目の交差点から17軒目で時々走って2分と15秒
平均112,3歩目に我らのコーヒーベーカリー安眠がある」
の部分の整合性が取れていないというのは、セイヤングの時代からたびたび言われてきたことで、例えば112,3歩を2分と15秒で走ったなら、一秒間に0.83歩しか進んでいない計算になり、これは本当に「走って」いるのか疑問。
さだ研では以前、このことについて真剣に研究し、整合性を取るための「安眠関数」なるものを定義するまでに至りました。その話はいずれアップすると思います。
さだ研ではこの曲にちなんで「パンプキンパイとシナモンティーを作る会」を6月ごろに催しています。関東圏の学生であればどなたでも参加できるので、気軽にお声がけください!
5. まほろば
さだまさし自身、初めて不完全感がない曲と言った曲。
確かに奈良の無常観を感じさせる曲調、歌詞も万葉集からの本歌取り、縁語、枕詞など、さまざまな表現技法を駆使しており、こんな歌詞はさだまさし以外にかけない!
この歌の元となった万葉集の歌は、
87 ありつつも 君をば待たむ 打ち靡く
わが黒髪に 霜の置くまでに
89 居明かして 君をば待たむ
ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降るとも
の2つの歌である。ここからの歌詞解釈もすごい楽しいんですけど、無限に長くなってしまうのでここでは割愛します。
この歌は宮崎康平が初めて絶賛した歌だが、それと同時に聴衆がついてこないからこれ以上難しい曲は書くなという戒めも受けた。私の体感ですが、確かにこの曲より歌詞が難しい曲は作っていないと思います。
1500年の壮大な歴史を持つ奈良の曲であり、オペラ声調の今の歌い方が映える曲の一つでもある。
10. 木根川橋
さださんの母校、葛飾区立中川中学校の近くに、木根川橋という橋があり、その近辺を舞台にした曲。
同窓会で先生に話しかける曲ですが、その話しかけている先生は、さだまさしの中学時代の数学の先生・あだ名はロボという人です。ロボの名前の由来はカクカク動くから、そしてこの先生は試験監督とかするとす〜ぐ寝ちゃうから、試験中は回答用紙が宙を舞ったそうです。そう、最後に「なんだ寝ちまったんすか...」という部分はまさに、このロボ先生が寝ているのです。
さて、木根川橋といえば、「木根川橋社長事件」という有名な話がありますね。ピアノの信田さんが社長役をやってさださんがごますり社員をするトークのあとに、木根川橋に入ろうとしたら、「先生」ではなく「社長」と言ってしまった事件。CDにはほぼ収録されていないですが、10周年のDVDなどで見ることができます。
この事件から生まれたのが「木根川橋社長編」で、書簡集第五信ではこのような歌詞になっています。
「社長、俺たちの会社...すっかりなくなっちゃったんですねェ...
それに、あの暑い夏の日に、みんなで一生懸命運んだスピーカーも...みんな抵当に入っちゃって...
社長、社長?....世間なんて...世間なんてェ.....そんなもんなんですかねェ...
♫木根川橋から〜 身を投げた」
11. ひき潮
都会と地方の対比はさだまさしの一つの重要なテーマであるが、はっきりとこのテーマを主張したのはこの曲が初めてではなかろうか。
都会に出て人は変わっていくが、その中でひき潮のように故郷へと帰って自分を見つめ直したいという曲(だと私は解釈している)
初期のころのさだまさし人気投票では常に上位にランクインする曲であったが、さださん自身があまり歌わなくなったためか、次第に隠れた名曲的存在になっていき、「天晴」にも収録されていない(なんでみんな投票しなかったの...)
フルオケでやらなければいけないコストと、死ぬほど高い音があるのでさださん自身歌いづらくなって言ったのではないかと思う。(青の季節も同じような状況になりつつあるのが心配...)
さて、次回は音楽性の方向転換をした「印象派」について見ていきます。