『いつの日か』

第7章4部

My promise ① 環34才、遼27才

 

<環サイド>

 リビングのソファに座ってからも、遼は抱きしめた私の腕をさすっていてくれた。

こうされることが私を落ち着かせる最善の方法だということを彼は良く知っていた。

今まで何度もパニックに陥った私を彼は救ってきたから。その時はいつも柔らかく抱きしめて背中や腕をさすってくれた。そして私は安堵したのだ。

あ、そうか・・・と今気づいた。私が小さかった時、父が泣く私を抱き上げて、そうしてくれた事を。

7つもあなたは年下なのに、父と同じ役割さえも今は担っているのね。

 心配したなんて嘘。本当は自分の罪深さと絶望感の恐怖に耐えられなくなっただけ。

本当に、本当に嫌な女。

「少し落ち着いた?」遼が優しい声で尋ねてきた。

「うん、もう、大丈夫。ごめんなさい、心配かけて。」

「いいんだ。」

彼の胸にかたむけた側の耳から、彼の心臓の音が聞こえる。

温かい彼の身体。こうやっていると凄く安心する。

「今日、部長との事、話してもいいかい?」

私は、無言で頷いた。

「桐原部長の環への想いは、本物だったと思う。いや本物で、今でもその気持ちは変わっていないと思う。」

ぎょっとして、彼を見あげた。どうしてそんなことを言うの?

「あ、あどろかないで。部長は環に手を出したりしないよ、もう。ただ、環は本当に愛されていたんだってことを言いたいだけ。遊びじゃなかったんだ。」

「・・・。」

「本気だからこそ、進藤の事件があって、環が・・・あの時、進藤の腕の中から僕に手を伸ばしてくれただろ・・・環が本気で僕を好きだって気づいて、あきらめると言ってくれたんだ。」

「・・・。」

「環を・・・幸せにしてくれってさ。」

「遼は、その言葉を信じれらるの?」

「ああ、信じられる。あの部長が僕の目の前で言った言葉だ。彼の目を見て、嘘じゃないと確信した。」

「なら・・・いいの。」

「この言葉に行きつくまでに、僕が思っていたこと正直に彼にしたんだ。」

「あなたの思っていたこと?」

「ああ、全部ね。環をプライベートでも仕事でも利用するなということ。それで環がどれくらい辛い思いをしたか、僕も苦しんだということもね。クルーズのプランの件、環がどれほどのショックを受けたかも、すべて話したよ。」

「そ、そんなこと言わなくてもよかったのに。」

「いや、部長は知るべきだったと思うよ。彼はあなたを壊しかけたんだ。彼に君を奪う資格はない。」

「喧嘩にならなかったの?そんなこと言って。」

「ならないよ。部長はそんな馬鹿な人じゃないし・・・僕に言われる前に、自分が環にはふさわしくないと気づいていたよ。だから、環を幸せにしてくれって。」

遼が私の方に視線を落とした。

「あなたには、二度とちかづかないと言ってくれたんだ。」

まっすぐできれいな瞳。穢れのない、澄んだ瞳。

「よかった・・・。」

耐えられなくて・・・視線をそらした。そんな瞳で見つめられる資格は、私にはないもの。

「あとは、環が部長にとどめを刺してくれたしね。」

とどめ?何の事?

驚いて再び遼を見上げた。

「部長に聞いたよ。環、仕事を辞める気なんだろ?」

「あ・・・。」やっぱり、聞いていたんだね。

「本当なの?」

「ええ・・・そのつもり。」

やっぱり話さないといけなくなった。また・・・嘘をつくのね、環。

「それは・・・僕のため?パリに来てくれるって言う事?」

「・・・。」応えられない。なんていえばいいの?嘘さえも出てこない。

「どうして僕にいってくれなかったの?」

「ごめんなさい。遼。」

「環が大好きな仕事より僕を選んだことが、部長への最後のとどめになったんだ。もしそうなら、僕はうれしいよ。でもどうして、僕に一言も言わなかったの?」

「会社はやめるつもり・・・でも、パリへはいかない。」

「どういうこと?それ?」

「ごめんなさい。先に話すべきだった。こんな形になってごめんなさい。」

ふう・・・と大きく息を吐いた。嘘で作ろう余裕もなかった。

 

<つぶやき>

 このまま毎日更新できたらいいな。

週末には、東方神起のサンドーム福井でのライブレポートあげちゃいます!

白おおかみ