第7章4部

My promise  環34才、遼27才

 

<遼サイド>

ソファに・・・葵の隣に座る。

一口オレンジジュースの飲んで、彼女に尋ねた。

「で、何があったんだ。そのさ・・・お前が、泣いてしまうくらいの・・・。」

「単純には・・・、お兄ちゃんがパリに行っちゃうから。」

「そんなことじゃないんだろ・・・もっと、大きな・・・。」

「ううん。本当なの。お兄ちゃんがいなくなることが辛かったの。大切な人が、自分のそばからいなくなる・・・また、その辛さを感じなければならない。私、耐えれるのかって・・・。」

「何言ってんだよ、僕はただの海外赴任なんだから、帰ってくるし、お前だって母さんだっていつでも遊びに来れるじゃないか。ましてや知らない土地でもないし・・・。僕たちが子供のころいた町なんだからさ。」

「うん・・・でもね・・・。」

「お前が関西に行ってから、家族で会うのだって、半年に回ぐらいになってただろ?状況は大して変わらないよ。海の向こうってだけだ。」

「でも・・・やっぱり遠いよ、お兄ちゃん。」

葵の目から、涙がこぼれ始めた。

「もう、どうした?いつもそんな弱気な奴じゃないだろ?」

「父さんが・・・なくなったとき、本当にどうしていいかわからなくて。ちょうど関西に引っ越したばっかりで・・・一人になったとき、とても怖くて、辛かったの。」

「ああ・・・わかるよ・・・僕も同じだった。」

あの時は・・・父さんが本当にこいしかった。

そして、後悔ばかりしていた。どうして、もっと父さんと話しておかなかったんだろう。

大学生だった僕は、自分しか見えてなくて・・・父さんのこと全然大切にしていなかった。

父さんとやりたかったこと、聞いておきたかったことがたくさんあったのに・・・何一つできていなかった。ここまで僕を育ててくれたことへの感謝の気持ちも伝えれなかった。

本当に本当に、後悔した。なぜ、なぜ、もっと父さんとの時間を大切にしなかったのかと。

そんなとき、父さんのデスクから、旅の手帳が出てきて、僕はその手帳を読むにつれ、父さんと同じ景色をみて、父さんが感じたことを,自分も感じてみたいと思うようになったんだ。

そして、大学を年休学して、旅に出た。

「あの時は、本当にごめん。僕のわがままで、旅に出てしまって・・・母さんと葵もつらかったのに・・・本当にごめん。」

「いいんだよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんにはお父さんの手帳が救いだったように、私にはお母さんという救いがあったから。お母さんが、関西に来てくれて、私本当にうれしかったの。一人じゃなくなったから。お母さんがいつもそばにいてくれたもの。おにいちゃんが旅に出るって言わなければ、お母さんあのままこっちにいたかもしれない。だって・・・お兄ちゃん、すごくつらそうだったから。」

「あの時は・・・みんな辛くて・・・苦しくて・・・。でも、一番きつかったのは母さんだと思う。かあさん、お前に感謝してた。」

「え?私に?」

「ああ。一番つらい時期に、お前がそばにいてくれてよかったって。」

「そばにいてもらったのは、私だよ。わたしこそ、お母さんに感謝してる。」

「だから、就職こっちにしたんだろ?母さんと、父さんのいたこ場所に帰ってくるために。」

「うん・・・でも・・。」

葵が口ごもった。

 

<つぶやき>

 環さん、全然出てこなくて・・・当分は、遼君と葵ちゃんの会話が続きます。

恋愛とは関係ない部分なんです。最初、ここは省こうかなって、思ってたんですが・・・いろいろ考えて残しました。

遼君が、どうして人を大切にするのかがわかる部分でもありますし・・・自分が感じたことでもあるからです。

私は、父がおりません。1歳になる前に両親が離婚しましたので、実は顔も知りません。

私は、母と祖母との3人家族で育ちました。

祖母を亡くした時・・・何度も後悔しいたんです。どうしてもっと祖母を大切にしなかったんだろうって・・・。

今でも・・・ふと、そんな思いに・・・後悔の波が押し寄せてきて、おぼれてしまいそうになります。

その気持ちを、書いたのがこの場面でした。

ちょっと、本編とは離れていますが・・・ご容赦くださいませ。

 白おおかみ