第7章4部

 

Promise :環34才、遼27才

 


<遼サイド>

「遅くまで実験や資料集めをやっても、健さんとなら苦じゃなくて・・・むしろ楽しいぐらいだった。夜中に二人でカップめん食べながら、あーでもないこーでもないって・・・議論になることもあったけど・・・それはお互い研究に一生懸命だからだったし・・・むしろそんな風に議論出来たり、話し合えたり出来る事がお互いの糧にもなってたと思う。何度か、私が研究室の自分のデスクで、寝ちゃったことがあって、そんな時もさりげなく毛布をかけてくれたりする人だった。」

「・・・。」 

「わたし、話し始めると夢中になって・・・良くつまずくからって・・・かならず車道側を歩いてくれるの。海外での学会に出席した時も一人で出かけようとしたら、必ずついて来てくれた。とにかく一人での行動はだめだって。どこか行きたい所があるなら、必ず声をかけろ。俺が一緒に行くからって。葵ちゃんは一見しっかりしてそうだけど、頼りない所があるから、ほっとけないよって・・・、笑ってた、いつも。」

 

葵の目から・・・ぽとりと涙がこぼれた。

 

「彼の事・・・好きだったんだ、すごく。」

 

「うん。とっても。」

 

「彼だって、葵の事大切にしていたんだろ。」

 

「・・・・そう、思っていたの、私も。周りの人達も・・・私たちが付き合ってるって思っていたと思う。」

 

「ちがうの?」

 

「誰よりも彼のそばにいたと思う。でも付き合ってと言われた訳じゃなかった。キスもしたことないの。

 

私、今年25歳になるの。もう大人よね。結婚してもおかしくない年齢よ。そんな年齢になって、何故と思うかもしれないけど・・・健さんとは、とてもプラトニックな・・・精神的につながっていると言うか・・・そういう関係だったの。

 

どうして何もアプローチしてくれないんだろうって、思ったこともあったんだけど、お互い奨学金とって、修士課程を取るために頑張っていたから、浮ついたことしたくないのかなって思ったりして・・・でも、彼が就職をこちらで決めたから・・・私もこちらにかえって来るつもりだって伝えたら、本当に喜んでくれたの。」

 

「それは、いつ頃?」

 

「それが夏休み。8月初旬ぐらい。俺も葵ちゃんに伝えたいことがあるんだって・・・健さんも言ってたわ。」