第7章4部

 

Promise :環34才、遼27才

 


 

<遼サイド>

「もう遅いし・・・無理だよな。」


 

デスクの上のスマホを見て、つぶやいた。

 

「でも・・・。」

 

ベッドから起きあがり、スマホを手にする。

 

環からのメッセージを確認する。

 

30分くらいに最後のメッセージが入っていた。

 

『葵さん、大丈夫?深刻な問題をかけていなければいいのだけれど。明日時間が空いたら連絡ください。』

 

葵のことを心配してくれている。

 

30分前なら・・・まだ起きているかな?でも・・・1時回っているし・・ダメかな・・・。

 

『葵との話、さっき終わって、今ベッドに転がってる。色々あったみたいだけど、葵は大丈夫だと思う。明日会った時、詳しいこと話すから。』

 

メッセージをいれる。

 

『葵さん、大丈夫なのね。よかった。遼、ゆっくり休んでね。おやすみなさい。』

 

すぐにメッセージが返ってきた。よかった、まだ起きてる。

 

すぐに電話する。

 

「どうしたの?遼?やっぱり何かあったの?」

 

電話越しに彼女の心配そうな声。その声に胸がギュッと締め付けられる。会いたい。

 

「そうじゃない。葵は、大丈夫。環の声を聞きたかった。」

 

「私の声なんて、いつでも聞けるのに・・・。」

 

「今聞きたかったんだ。起しちゃった?」

 

「そんなことないわ。ベッドには入ったんだけど・・・気になって眠れなかったから。」

 

「今から、そっちに行っちゃダメかな?」

 

「ダメよ。」環から即答。どうしてなんだよ。

 

「30分だけでいいから、逢いたいんだ。」

 

「ダメ。」

 

「逢いたい。」

 

「ダメ。今日は実家できちんと寝て。朝、本当に葵さんが大丈夫か、もう一度確かめてあげて。」

 

「でも・・・。」

 

「でも、じゃなくて。ね。お願い、そうしてあげて。」

 

「でも・・・。」

 

「『でも』はなしよ。」

 

「じゃあ、いつ逢える?昼間は仕事だろ?」

 

「無理に逢わなくてもいいのよ。パリに行っても、スカイプで話せるじゃない。遼のほうこそ、明日が最後の日なのよ。こっちに来る暇なんてないでしょ?今はね、お母様と葵さんとすごく時間を大切にしないと・・・違う?」

 

あなたは僕の家族を一番に考えてくれる。でも・・・それじゃあ、僕が耐えられないんだ。

 

「明日は何時に戻るの?」

 

「月末だし・・・9時頃かな。」

 

「じゃあ、その頃そっちに行くから。」

 

「無理はしないで・・・。」

 

「無理なんてしてない。」環の言葉をさえぎる。

 

「環に・・・環に逢えないことのほうが苦しい。」

 

「でも・・・。」

 

「『でも』は、なしだよ。環。環は僕に逢えないことは平気?」

 

「そんなことないわ。でも・・・。」

 

「だから、『でも』は、なしだよ。とにかく9時には絶対に行くから、まってて。いい?」

 

「うん・・・わかった。」

 

「じゃあ、こんばんね。」

 

「うん・・・まってるから・・・。」

 

「ごめん、朝早いのに、邪魔しちゃったよね。」

 

「大丈夫、邪魔なんて・・・そんなことないから。」

 

今晩あえるとわかっていても・・・電話が切れない。彼女とつながっていたいから。

 

「じゃあ、おやすみなさい。遼。」

 

そんな僕の気持ちがわかるのか、彼女のほうから電話を切った。

 

胸が・・・痛い。

 

こんなことで、大丈夫なのか?僕は?

 

母さんも葵も・・・父さんの代わりに僕が守っていかなければならないと、葵の話を聞きながら決心した。

 

そして・・・誰よりも環を守っていきたいとも・・。

 

けれど・・・彼女に逢えなくなる辛さに耐えられるか?

 

たった2日間逢えないだけで、こんなにも切ない。

 

情けないな・・・そう自分に言う。

 

もっと強くならないと・・・みんなを守るために・・・そう自分に言い聞かせた。