第7章5部
Promise :環34才、遼27才
<環サイド>
「遼・・・。そろそろ・・・。」
アラームにしている、音楽が聞こえたので、腕を伸ばす。
でも・・・その先に彼はいない。
「あ・・・。」
何も触れるものがないことに気づいて、開いていた掌をぐっと握りしめた。
起き上がり、ベッドサイドのスマホを取り上げる。6:00・・・。
アラームを停止して、SNSをチェックする。新しいメッセージは何もない。
「もう少しだけ・・・眠ろう。」
そう呟いて、ベッドにもぐりこむ。だけど・・・。
外はもうすっかり明るくて・・・再び眠りに落ちるような雰囲気ではなかった。
いつもなら、遼がなかなか起きなくて・・・起こそうとする私をベッドに引きもどそうと腕を伸ばしてくるのに・・・、今は、そんなこともない。
私の隣には、誰もいない。
明日、遼はパリに立つ。
私の隣には・・・誰も寝ることはないだろう・・・永遠に。
昨日、会いたいといわれたけれど、私は断ってしまった。
電話を切ってから、すごく後悔した。だって、本当はすごく、すごく会いたかったから。
けれど・・・そんなわがままは、到底許されない。遼は今、大切な家族と最後の時間を過ごしているのだから。私の入る余地なんてない。
これから・・・こんな毎日が続く。私は・・・耐えていけるのだろうか。
大きな大きな喪失感を抱えて・・・耐えていけるのだろうか。
そう思った時・・・何だか恐ろしくなった。暗い闇の中に、ひとり置き去りにされたようなそんな気持ちになった。会いたい。遼に・・・会いたい。
「あなたは、本当に弱い人間ね。」心の中でもう一人の私が、私自身に話しかけてくる。
「あなた、彼の幸せを望んでいるんでしょう?たかだか2、3日会わないくらいで、そんな情けない事言ってどうするのよ?」もう一人の私が攻めたてた。
「あなた、彼を解放するってきめたんでしょ?決めたなら守りなさいよ、その約束。」
そうだ・・・約束を守らないと。そのために・・・もっともっと強くならないと。