『少数民族の街、羅平(らへい)。
中国の人口は、約13億5000万人。
その9割を占めるのが「漢民族」で、
残りの1割は、約55の「少数民族」
である。』
宿は、すぐに見つかった。
というのも、目的の宿が
あったわけではなく、
たまたま目についた宿の部屋が
空いていた、というだけの話だ。
この宿は、30代と思われる夫婦が
2人で経営している。
ここでも、やはり言葉は
まったく通じなかった。
ただ、通じないながらも、
僕が彼らから受ける「印象」は、
これまで中国で出会った人達とは、
明らかに「違う」と感じる。
気温3度の寒空のもと、
どこからともなく現れた、
得体の知れない僕に対し、
自然な笑顔を見せてくれる人に
出会ったのは、
中国に到着して以来、
初めての体験だった。
寒そうにしている僕を見て、
「待っていなさいよ」と言わんばかりに
奥さんが作ってくれた、
チャーハンとスープ。
絶品。
ほとんどない様子だった。
僕は奥さんに、
日本の写真を見せるため、
携帯を取り出す。
奥さん、興味津々。
そして「ちょっと貸して」
というジェスチャーをし、
僕の携帯に入っている写真を、
僕に、なにか話しかけながら、
楽しそうに見ていた。
僕は、まさか
写真を全部見られるとは
思わずに渡したのだった。
奥さんは礼を言い、
丁寧に携帯を返すと、
「ゆっくりと休んでね」
というジェスチャーをする。
僕の気持ちは、
満たされていた。
部屋に戻り、
リンネからのメッセージを確認する。
互いの宿は離れているようだが、
明日はリンネと合流できそうだ。
そこには、合流後、羅平から南下して、
建水(けんすい)を目指す計画が
書かれていた。
Part.6へと続く