れいわ新選組は、
新型インフルエンザ等対策特措法等改正案(特措法・感染症法改正案)
に対して反対する。

これに関し、刑事罰が削除される件について一定の評価がなされているところだが、
感染拡大を抑えるための本質が大きく欠落していることから反対せざる得ない。

簡潔に説明する。

入院拒否や入院先から逃げ出すなどの実例があったことからも法改正の必要性がうたわれていたが、コロナ禍を遡り、その実例(拒否や逃げ出し)を報道ベースでどれくらいあったかを、
国会図書館に調査依頼したところ、全国で拒否が1例、逃げ出しが1例であった。
100歩譲って、これを立法事実の一つとするとしても、
法案の中身は実効性のあるものとなっていない。

感染拡大防止に最も重要なことは何か。

それは罰則の導入ではない。

人々が、納得の上で感染拡大を防ぐ休業に協力し、
感染者には安心した上で入院していただける十分な財政支援の実現こそが最も重要である。

事業者、労働者が積極的に休業に応えられる十分な補償、
医療機関に対する一刻も早い減収補填と従事者に対する報奨金含む大胆な処遇の改善、
入院・療養を受ける者に収入補償と、それに加えて支払う報奨金的なインセンティブである。


現実はどうなっているか。

与野党協議の結果、
事業者支援については政府答弁と附帯決議で担保する、とされた。
実際は、事業規模に応じた十分な補償が行われるかどうかは、
政府の裁量に委ねられる。

衆議院の附帯決議では、「要請による経営への影響への度合い等を勘案し、
公平性の観点や円滑な執行等が行われることに配慮し、
要請に十分な理解を得られるようにするため、必要な支援となるよう努めること」とされた。
附帯決議においても内容は依然として曖昧でしかない。

結局、財政支援には後ろ向き、
やる気がないのである。

法案条文にハッキリと、
要請に応じる事業者やその関連業者への
「事業規模に応じた正当な補償と必要な財政措置」
と記述が必要不可欠であるが、やる気がないからこそ、
条文にも書かれていないだけのことである。

当然、答弁においてもやる気がないことは明らかである。
西村大臣は衆議院において補償について時短や休業は、
「受忍限度であり、権利の濫用を認めるべきではない」との答弁を繰り返した。
カジュアルに言い直すと、
「この程度の自粛は各自、自前で積極的にやれ、クレクレいうな」、である。
非常時にここまで無情であるのが政治ならば存在する意味もない。

感染者が入院や療養で休業する場合には、
個人事業主やフリーランスに対する生活補償の問題が残る。
特に、会社の健康保険に入れない人々は深刻である。
そういった方々には、
給与の6割を補償する「傷病手当金」を自治体の判断で支給できるものの、
その財政負担には国の支援が得られない。
新型コロナ感染者が職種や働き方を問わず、
安心して仕事を休んで入院治療に専念できるようになっていない。

傷病手当金に相当する補償を国保加入者の事業主やフリーランスに支給した場合には国が自治体への支援を拡充すべきで、同時に従来の傷病手当金のみにとどまらないインセンティブを付与するべきである。

簡単に言えば、100%の収入補償とボーナスである。 
入院できる医療体制を作ることも重要であるが、
同時に必要な方が自らの意思で安心して入院・治療するときには
経済的な不安をなくせる状況を作るべきである。
 
あえて言えば、必要なのは罰則ではなく、 
必要なときは入院、療養すれば経済的にも得をする、という状況を作ることが重要である。 
 
現在の感染症法は過去の国の感染症に対する施策が患者に対するいわれのない差別や偏見を引き起こしたことの反省から1998年に制定されたもので、
「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」と前文に規定されている。

医療提供体制が整っていない中、議論すべきは罰則ではなく、国の支援による医療供給の充実と事業者に対する十分な補償と感染者への経済的、精神的ケアである。

感染者およびその疑いのある者の責任を問い、罰則をもって義務を課そうとする今回の改正案は、感染症法の目的・制定経緯を無視し、ひいては、感染者の基本的人権を損なうことになるうえ、感染拡大防止に対し逆効果である。

自己責任ベースで、罰則(過料)をもちらつかせ、
言うことを聞かせる考え方に基づく本改正案には反対する他ない。