東京芸術劇場シアターウエストで上演されていた「パートタイマー・秋子」を観てきました。

この作品は永井愛さんが青年座の公演のために書いた脚本に手を加え、二兎社としては初めての上演になるそうです。

二兎社はこれまでも何作か観ていてとても面白かったのですが、毎作品観に行っているわけではありません。

今回は、沢口靖子さんが出演していることもあり、とても楽しみにしていた舞台です。

 

 

劇場に着くと、スタッフの方もチラシ・イメージのような被り物(って言っていいの?)を付けていて微笑ましいというか、気分を盛り上げてくれるというか・・・!

 

舞台はスーパー・フレッシュかねだの従業員控室。

秋子(沢口靖子)はそれまで専業主婦だったのですが、夫の会社が倒産したため、このスーパーで働くことになり、店長(亀田佳明)に言われたとおり挨拶の練習に励んでいます。

しかし、そこに次々と現れるクセの強い従業員たちの秋子に対する態度は、最初から明らかに拒絶モードです。

 

実はそのスーパーでは日常的に不正が行われていることがわかってきます。

従業員によるレジを通さない商品の持ちかえり、賞味期限の改ざんなどが行われていて、店の改革を進めようとする着任したばかりの店長にも反発して言うことを聞きません。

秋子は「見ちゃいましたけど、いけないんじゃないですか?」という正義感を持ち、住宅メーカーをリストラされて働いている貫井(生瀬勝久)と共に店長の改革に協力しようと奮闘するのですが・・・。

 

久しぶりに観た沢口さんは、セレブな専業主婦がスーパーで働くことになるという役に適任だと思いました。

やはり主演としての華やかさがありますし、スーパーで働く従業員との会話がかみ合わないところも、自然と「そうだよね」と頷いてしまうのです。

 

生瀬さんはさすがの芸達者ぶりを見せています。

登場シーンから笑わせてくれますし、後半の替え歌も楽しそうに演じていました。

シリアスなセリフもあるのですが、その演じ分けが凄いと思います。

 

そして、亀田さんと土井さんも重要なポジションだったのではないでしょうか?

亀田さんはこれまであまり拝見したことがない役柄でしたし、従業員のリーダである土井さんの存在感も印象に残りました。

 

店の改革を進めようとしているはずの店長が「店のため」というお題目を立てて裏では不正を行い、秋子の正義感も少しずつ薄れていき、気がつけば不正に加担してしまう。

そして、貫井は前職の部下に会ったことで自尊心を傷つけられ自暴自棄になってしまう。

笑いの多い作品なので主題ではないのかもしれませんが、人の弱さや二面性も描かれていて、皮肉が効いているところが永井さんらしいとも思いました。

とっても面白かったけれど、考えさせられることもあったなぁ・・・。