シアタートラムで横山拓也さんの新作「う蝕」を観てきました。

横山作品なので必ず観に行こうと思っていたのですが、チケット発売日を間違えて気がついた時には速攻で完売。

世田谷パブリックシアターのHPで追加公演があることを知り、何とかチケットを取って観ることが出来た舞台です。

 

開演前に到着したのですが、入場を待っている観客が女性ばかり。

出演者は男優6人、若手・中堅・ベテランと揃っているので、さもありなんという気もしますが、若干アウェー感がありました(すっかり、慣れっこですけど・・・)。

 

 

劇場に入ると舞台上に大きな壁。

開演すると大きな音(一瞬ドキっとします)と共にその壁が上下左右に開いて物語の舞台となるコノ島が現れるという大仕掛けでした。

 

その島は「う蝕」に襲われ荒廃しています。

その原因は誰にもわかりませんが、ゆっくりと地盤沈下が進み全てを飲み込んでいきます。

2度の「う蝕」が発生し、遺体安置所や避難所までもが穴に沈み、島民は退避することとなりますが、最後の船が出航した後に残ったのは3人の歯科医。

 

根田(新納慎也)はこの島唯一の歯科医で、加茂(近藤公園)と彼の後輩である木頭(坂東龍汰)は本土から支援にやって来ています。

彼らの目的は、歯科治療のカルテを使って犠牲者が誰であるかを特定して遺族の元へ帰すこと。

しかし、どこまで沈み込んでしまったわからない遺体を引き上げることは難しい状況です。

 

そこに、彼らの世話をするためにやって来たという役人の佐々木崎(相島一之)、木頭の同期の剣持(綱啓永)、全科医だという掴みどころのない白衣の男・久留米(正名僕蔵)が加わり謎めいた雰囲気で物語が進んでいきます。

 

久留米が語る「ここにいるべきではない人」というセリフがひとつのキーワードになっています。

まだ公演中盤なのであまりネタバレできないのですが、序盤から何となく感じる「会話の違和感」みたいなものが終盤で回収されていきます。

 

公式HPには「男性6名の実力派キャストが織り成す濃密な不条理劇」と書かれています。

タイトルでもあり、その原因が誰にもわからない「う蝕」は確かに不条理ですが、作品としては見事に着地していますし、個人的には「不条理劇」とは感じませんでした。

「実力派キャスト」と謳われているだけあり、登場人物の個性が際立っています。

それぞれの思いや悩みが明らかになる終盤はグッと来るものもありますが、笑いが起きるシーンも多く、シリアス一辺倒な作品ではありません。

 

これまで横山さんの作品はいくつか観ていますが、家族や人間関係など日常を描いたものが多かったように思います。

みなさんの感想を読んでいたら、イキウメを比較に挙げている方がいましたが、言われてみれば日常と非日常の合間に位置するような物語は前川作品だったとしてもあまり違和感はないかもしれません。

私が観ていないだけなのかもしれませんが、これまでにない世界観を創り上げた横山さんには、さらに傾倒していきそうです!