④~
帰りのタクシーで
ゴニルさんが言ったことしたことを残らず思い出す。
あれが全部演技だとしたらゴニルさんは素晴らしいアクターだ…
寂しさよりも私はぽっかり感心する。
私はそれから熱心にサロンに通った。
そこには私の彼だった「ゴニル」はいないけど、とにかくゴニルさんに会いたくて…
通えば通うほど
ゴニルさんの力で私は輝きを増した。
そんな私の変化は会社でもちょっとした評判を呼んで。
…先輩から屋上に呼び出される日が来るなんて。
「……さん??ねえ聞いてる?」
レッスン中なのに集中してないって
ゴニルさんをすっかり怒らせてしまったみたい。
先輩から誘われたことを伝えたら喜んでくれたけど…
あれ?ちょっと機嫌が悪い?
「もしも私が先輩のこと好きだと言ったらゴニルさんは応援してくれますか?」
思い切ってそう切り出してみる。
先輩から誘われた時に一番はじめに思ったことは
うれしいとかどうしようとかそんなことじゃなくて
ゴニルさんは応援してくれるかな…だった。
大好きだった人を目の前にして、ゴニルさんの笑顔を思い出すなんて自分でも驚いたけど。
嘘つきたくないから正直に言うねと前おきして
ゴニルさんは慎重に思いを言葉にした。
「ひとりの男としては後押ししたくない。でも
スタッフとしては応援するよ」
…君を取られるなんてイヤだよ
そう思ってると勘違いしてもおかしくないようなことを言われたのに
『男を落とすための秘策=少しアダルトな裏メニュー』を伝授してあげるねとも言われて
私は軽く混乱してしまった。
薄暗い間接照明のもとで行われたアダルトラブレッスンは
バーの個室で、しかもぴったり寄り添った状態で始まった。
即実践できる方がいいからねって実演習得法らしい。
だからゴニルさんから
「さあやってみて」って言われると
ゴニルさんを相手に見立ててやらなくちゃいけない。
ボディタッチの有効な使い方の実践では
ゴニルさんの二の腕、肩、背中の筋肉の…触らなきゃわからなかった感触にひとりで熱くなっちゃったし
落とせるトークの練習では
「期待させたり違うんだって思わせたり…
そのことで頭がいっぱいになるくらい相手を揺さぶらなきゃいけないんだよ~」って
ゴニルさんから熱心に教えられて
ああ私はゴニルさんに揺さぶり続けられてる~って気づく。
私の頭の中は
ゴニルさんのことばっかりだ…
④に続く☆