街はバレンタイン一色…
ショーウインドのディスプレイに目をやるとニヤけた自分が映った。
終始徹底した他人行儀っぷりとは裏腹に
他の人が話してるタイミングで何度も何度も目が合って…
そのたびにグァンスくんが誰にも気付かれないようにフッて微笑んだりするから
そしてすぐに真顔になったりするから
ふたりでイケないことしてるみたいだったな…
そう考えてまた自然と二ヤけてしまう…
…
…おい
「おい…おいって‼︎」
「ぐ、グァンスくん‼︎」
驚きすぎだろって言いながら助手席を指さす。
グァンスくん、車で来てたんだ…
そんなにぼんやり歩いてて大丈夫かあ?なんて言われながら
誘われるままに助手席に乗り込んだ。
出るぞ‼︎って急かしたついでみたいに
シートベルトしゅって引っ張って
カチャリとされたりもして…
(近い近い…グァンスくん近い…)
口調はぶっきらぼうで基本無愛想なのに
することは時々すごく甘くて
そこもグァンスくんの魅力のひとつだな…
ふたりの仲が急接近しちゃいそうなスペシャルシートでやさしい人だとしみじみ思う。
…急に暖色系のイルミネーションが目の前に広がった。
「わあ~すごく綺麗‼︎‼︎」
…グァンスくんがチラッとこちらを見たのと
私のわあ~すごく綺麗‼︎はどちらが先だっただろう?
「降りるか?」
「はい‼︎ここバレンタインの特集に載ってて来てみたかったんです‼︎」
「そうか…」
グァンスくんがいつの間にかこんなすごくいい所に連れて来てくれたことさえ気付かないなんて隣でどれだけドキドキしてたんだろ?
車を停めて私たちは光の並木道を歩いた。
ふたりきりで歩いてる
そう何度も噛みしめて…
グァンスくんは何か考え事をしているみたい。
「バレンタイン…」
唐突にグァンスくんがつぶやく。
「え?」
「やっぱおまえも誰かに渡すのか?」
打ち合わせで話題がチョコのことになった時、グァンスくんはたくさんもらうんでしょうね~っていう話になった。
その時からあなたに渡すことばかり考えてます…なんて言えないな…
「そうですねぇ…同僚とか友だちとか?」
グァンスくんを見上げる。
イルミネーションの灯りが輪郭をぼんやりとさせてなんだか幻想的で
しかもめちゃくちゃかっこいい‼︎
「…ん?なんだ?」
「いや…」
「でも今ずっと見てただろ」
「気のせいです」
嘘つくの苦手だっていう自覚あるのか?
バレバレだぞ~なんて
そんな…私のことなら何でもわかるみたいな言い方で…
思わず見とれてしまうようなキラっキラな笑顔で…
ちょっぴり期待しちゃうよ…
②に続く