オーストラリアのお葬式事情② | 写真、だいすき

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オーストラリア、ゴールドコースト在住のライター、写真家、研究者ヨウコランスのブログ。長女のミミ(7歳)、双子のナナ&ココ(5歳)と一緒に、びかびかの太陽の下で過ごす毎日。仕事スイッチを切ったゆるーい写メが中心です。
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今回はオーストラリアのお葬式事情①のつづきです。

ハロウィン間近ということで。オバケオバケオバケオバケ

ハッピー・ハロウィン~コウモリ1魔女っこハロウィン




④火葬?土葬?

アメリカ映画などでは、お墓といえばたいてい土葬ですよね。

棺をそのまま埋葬して、墓石を頭上に置くあのスタイル。

もちろんオーストラリアでも、この伝統的な形式の土葬が

長い間行われてきました。

特に、カソリック系クリスチャンの方は、今でも土葬を選ぶ人が

多いようです。でも、最近ではすっかり火葬が一般的になって

きていて、実はゴールドコーストでは、8~9割の人が

火葬を選ぶ傾向があります。




ゴールドコーストは歴史が浅い街なので、ほとんどの住民が

どこか別のエリアから引っ越してきた人だったり、ほかの国から

来た移民だったりするんですよね。だから、生まれ育った場所へ

灰を撒きたいとか、想い出のあの場所に灰を撒きたい、海へ

撒きたいなんていう人がかなり多いのです。そんなわけで

ゴールドコーストは、オーストラリアのなかでもかなり火葬が進んで

いる地域となっています。




そして、実は火葬の方が埋葬料金がかなり安い、というのも

現実的な理由の1つです。棺をそのまま埋葬するより、小さな

骨壺(Urn、アーンといいます)を埋める方がはるかにラクで、大きな

土地も必要ありませんからね。


 


 ©Yoko Lance

まだ真新しいお墓。若い女性だったのでしょうね。
この花で飾られた下の部分に棺が収められています。
左隣には、まだ墓石だけでプラークが入っていないお墓が見えます。
誰かが、将来のために先に購入しておいたもののようです。






⑤え?「○○家の墓」じゃないの?

日本では、お墓といえば先祖代々家族で1つのお墓に入るのが

一般的ですよね。

これ、ほんとによくできたシステムだな~と思うんですよね~。

お墓を代々引き継いでいけば、場所も1つですむし、何より

次の世代がそのお墓に責任を持って、ずっと前の世代の人のお墓

まで世話してくれるんですから。




こちらでは、お墓は一人に1つ、または夫婦で1つというケースが

多いようです。子どもと両親が一緒に入るケースもありますが

何代も、そしてお嫁さんたちまでも……なんて聞いたことが

ありません。イタリア系移民の間では、モーソリアムと呼ばれる

小さな家のような建物を作って、その中で家族数人が一緒に

入るもこともありますが。

火葬なら一カ所で沢山の骨壺を収めることもできますが、土葬の

習慣がまだ根強く残っている西洋では、先に入った人の上に

棺を重ねていくことが多いので、物理的に限界があるからかも

しれませんね。





そう、土葬の場合、西洋では基本的に棺は上に重ねていくんです。

そして、定められたそのお墓の権利が切れても更新しなければ、

次の人にその同じお墓が使われてしまうんです!

新しい見ず知らずの人の棺が上に乗って、墓石は一番上の人の

ものに変えられてしまいます。

だから、歴史の古いヨーロッパのお墓なんかは、実は1つの墓石の

下に全く関係のない人たちが何人も眠っているんですよ~~~。





例えばゴールドコーストの市が管理しているパブリックの霊園では、

基本的にお墓が作られてから60年経つと、その墓石の人が

その場所を使う権利が切れてしまいます。

ブリスベンなどの歴史の古い霊園で、歴史上の人物たちがまだ

眠っているのを確認することもできますが、あれは先祖のために

末裔となる誰かがお墓の権利を更新してくれたから、まだそのまま

保存されているんですって。




ちなみに、ブリスベンにはジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)

のお墓ではないかと言われているものもあるんですよ~。

ジャック・ザ・リッパーとして裁かれていたわけではないのですが、

ほかの犯罪で実刑を受けてオーストラリアにやってきた人物が

実はジャックだったのでは?と考えられているようです。

昔、この地はイギリスの流刑地でしたからね。

 

 

 

 


©Yoko Lance
こちらは写メですが、ジャック・ザ・リッパーではないかと言われている
人物も眠る、ブリスベンの歴史あるToowongの墓地です。
1866年に建設されてから、現在までずっと利用されています。

エリアによって墓地の趣ががらっと変わり、この場所は十字の形から
東方正教会系の移民(ロシア正教会、ギリシャ正教会など)の
墓地であることが分かります。

歴史上に名を残す名士たちの墓地は市街地を見下ろす丘の上に
埋葬され、木製だったため現在は十字架が朽ちてなくなり、
芝だけになってしまっている谷の墓地は庶民のためのエリアでした。

 

 

 

 


©Yoko Lance
通常、火葬場から戻って来た灰は長方形のプラスチック容器に
収められていますが、骨壺は葬儀会社のディスプレイから選んだり
自分で好きなものをネットなどで取り寄せる人も多いようです。
最近では、エコ派のために土に還りやすい紙製のものもあります。


 

 

 

 

 


⑥日本にはない一般的な習慣

日本とこちらでは、お葬式って違うなーと思うことがよくあります。

たとえば。

オーストラリアのお葬式では、必ず笑いが起こります(笑)

遺族や友人たちが、式の途中で涙ながらに弔辞を読むのですが。

必ずみんな、途中で1度は笑いをとりにかかります。

「父さんがゴールドコーストへ移住したのは、水着のおねーさん

たちがビーチにたくさんいるからでした(笑)」とか

「子どもの頃、母との散歩が楽しみでした。ガーデニング好き

の母で、いつも途中で綺麗な花を見つけると、挿し芽をして

自分の庭に増やすために、こっそり枝を折るのが僕の役目

でした(笑)」とか。

形式張ったことが嫌いで、フランクでのんきな人たちが多いこの

お国柄を反映してか、葬儀という悲しみの場面でも、

堅苦しくならないように演出する人が多いんですよね。




そして、必ず誰かが詩を読むのも一般的です。

これは結婚式でもそうなのですが、こういうフォーマルな儀式

の際には詩を読む習慣があります。





あ、葬式と結婚式といえば!

あのホイットニー・ヒューストンの「えんだ~~」って曲ありますよね。

ドリー・パートンの名曲をカバーした「I will always love you」。

日本では、一昔前に結婚式でさんざん使われていましたが。

あれは、こちらではお葬式によく出てくる曲です。

だってあれは「今はお別れするけどずっと愛してるから」って

いう曲なんですもの!!!

あの有名なサビだけ聞いていると、気付かないかもしれませんが。

いつも日本の結婚式で聞くたびに「違う、違うよ……

 

ホイットニーが歌うのはいつも失恋の歌だし、

 

この曲は特に、愛する人から去る時の歌だよ~!」

と心の中で叫んでいました(笑)




話がそれましたが。

ほかにも、日本にない習慣として「ベアリアル (Burial)」 と

「ウェイク (Wake)」というものがあります。

お葬式を葬儀場で行ったら、そのあとはみんなで霊柩車に

続いてセメタリーへいって、ベアリアルという埋葬の儀式を

行うんです。葬儀を行わずに、このベアリアルと簡単な葬儀を

一緒にしてしまって、セメタリーで集まって終わりというような

ケースもあります。




そしてベアリアルが終わったら、ウェイクといって、まぁ

ようするに故人を偲ぶパーティのようなものを引き続き行うことも

多いです。場所は、近所のパブやクラブ(若者が踊りに行く

ナイトクラブじゃなくて、フットボールチームやライフセーバーなどの

本拠地で、クラブの活動資金を得るためにレストランやパブなどを

併設しているもの)が多いみたいですね。

主催者が飲み物や食べ物を無料で参列者に提供して、

わいわいがやがや、カジュアルな雰囲気で

パーティを行います。葬儀のあとの、アフターパーティ的な

もの、といった感じでしょうか。

フォーマルな葬儀中にはなかなかできないような、参列者同士

がお酒を飲みながら故人の想い出話に花を咲かせる場に

なるので、葬儀の前と後で順序は違いますが、

日本での通夜のようなものかもしれません。

 

 

 

 


 ©Yoko Lance
お葬式で弔辞を読む親族の男性。傍らにはセレブラント
の男性がついています。
こちらでは、参列者の服装は黒でなくてもぜんぜん構いません。
どちらかというと、ハイソな方のお葬式ほどきっちりと黒を
身にまとっている方が多くなるような気がします。




 

 
⑦プリペイド葬儀?

また、最近では生前に自分のお葬式をアレンジしておく

「プリペイド・フューネラル」なんていうのも出てきています。

日本でも、かなり増えてきていますよね。 

これを利用すれば、自分で葬儀をすべて準備して、

自分の好きなようにアレンジして、自分で支払いもすませておく

ことができます。「この曲をかけて欲しい」とか「お花はこの

色で」なんて、故人が自分らしい葬儀を思う存分計画できること

も、もちろん利点なのですが。

悲しみのさなかに葬式のことまで頭を巡らすのは本当に大変なこと。

そんな残された家族の大変さを思って、自分で準備をしておく方

も増えてきているようです。




そしてこの方法だと、今の物価で前払いなので、数年後に

アレンジするよりも安上がりになる可能性も高いのだそうですよ~。

 

 

 

 

 

 


 ©Yoko Lance
プリペイド・メモリアルの看板が置かれた葬儀社の入り口。

最近、オーストラリアでもこのプリペイド式の葬儀が
TVのコマーシャルでよく宣伝されています。
お年寄りがTVをよく見る時間帯である平日の午前中や昼に

よく流れています。

 

 

 

 

 

 

 


でもね、お葬式の日には、もう故人はいないんです。

だからお葬式っていうのは、実は亡くなった方ではなくて、

残された人たちのためにあるものなんですよね。

どの国のどの文化でも、長い歴史のなかで、残されたものが悲しみを

乗り越えていくために実によく練られてきた方法が、お葬式なんです。

だから、どんな方法でもいいから、残された人々の悲しみが少しでも

癒えるなら、それでいいのだと思います。

お金をばーん!とかけて盛大にやるのもよし。

身内だけで静かに行うもよし。

お葬式をしないと決めるのもよし。




ただ、もし「こんな葬儀にしたい」って強い願いや想いがない

まま、葬儀を手配しなければいけない状況になったとしたら。

そんな時は自分の馴染んだ文化で一般的とされている方法に

ならってやっておくと、一番後悔が少ないものになると思います。

オーストラリア文化でも、日本文化でも、キリスト教でも

仏教でもイスラム教でも、何でもいいから。

自分が一番しっくりくるもので慣習にならっておくと、あとで

何かを振り返ってネガティブな気持ちになっても

 

「まぁそれが一般的な慣習だからね」って思えますしね。

慣習のせいにできるんですよね。





そして伝統とか文化っていうのは、やっぱりダテに長く続いている

ものではなくて、たいてい歴史の中でかなりよく練られて

きているものなんですよね。

その分、余計な習慣やお金のかかる儀式もくっついてきてしまって

いることもありますが。それも、悲しみを癒す1つの方法として

一理あって、だからこそ引き継がれてきていることが多いように

思います。日本の高額な戒名とかもね、一理あるわけです。




お葬式って、馬鹿みたいに無駄なお金ばかりかかる気が

しますが。結婚式と同じで、無駄なように見えるけど

やっぱり意義があるかといえば、あるんですよね。





というわけで、オーストラリアのお葬式事情をほんの少し

紹介してみました。

誰かのお役に立つ日なんて来なければいい、とは思うのですが。

やっぱりこの世に不死の人間はいないので、誰しも必ず

目をそらし続けているわけにはいかない日が

来てしまうのが現実です。



願うべくは、その日が少しでも遠い未来でありますように。

そして、それまでに1分でも多く幸せな時間を

その人とともに過ごせますように。






 

 

 

 

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墓地の観光地化っていうのは、実はこれも歴史ある習慣なんです。
むかーし、むかし、西洋ではお墓は地元の人がピクニックしたり
する場所として利用されていたんですって。

私も、学生時代にはよく横浜の外人墓地へ散歩に行ったなぁ。
そういえば青山墓地なんかも、お散歩コースですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここで終えるつもりだったのですが、まだ③に続きます