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こんにちは。おかずマンです。
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●本日のお料理 たらの白子の竜田揚げ
その時おれは妙にキテいた
その日私はいつもの通りスーパーを徘徊していると
鮮魚コーナーで気になるものを見つけた
まだ１０月も半ばだというのに
真鱈の白子が１パックだけ置いてあるのだ
真鱈の旬は１１月下旬から２月ぐらいまでで
その時期に白子も成熟してくる
例年その時期ぐらいから多く漁獲されるので
だからこの時期に出回るのはレアケースと言えると思う
白子とはご存じのとおり魚の精巣で
もちろんオスのお魚しか持っていない
トラフグの白子なんかが超絶うまいとされているが
超絶高すぎて料亭通いのスカした金持ちの口にしか
入ることはないだろう
少なくとも小市民の私の口に入ったことはない
翻って真鱈の白子はそれに次ぐお味と知られていて
いいものならトラフグにだって負けないそうだ
確かに真鱈の白子はかなりうまくて
クリーミーで独特のうまみがじゅわっと広がる
おれも偏愛している
しかしやはり貴重な食材なので真鱈と言えどそこそこ高い
だから私がよく食うのは格下のスケトウダラ君の白子なのだが
なに、こいつも安い割にけっこういける
だから毎年こいつにお世話になって
冬の間に何度かイカくさいオスの原初的な香りを堪能する習わしだ
秋に出回る白子と言えば鮭の白子だろう
まさに今の時期どこのスーパーにいっても
数多く陳列されていると思う
しかも上記で挙げたどの白子と比較しても
お値段は比較にならないほど安い
私のいきつけのスーパーじゃ
３００gぐらい入って２５０円前後だから
半額の豚肉と同じぐらい安いんじゃないか
おそらくタンパク質としては最安値
いくらの値段と比べると
同じオスとして同情の念を抱かずにはいられない
虐げられちまった哀しみに
つらかったろう、悲しかったろう
見ず知らずの北海のオス鮭の気持ちに同調して
無念を晴らすべく買って食ってやりたくもなるが
実はこのお値段はあながち不当ではなく
やっぱりあんまりうまくないのだ
なんだか他の白子が持つ私たち人間と同じオスの生臭さではなく
独特の生臭さをもっていて
しかもクリーミーさや口に広がる旨みがない
だからいまいち食指が動かない
そのかわいそうなオス鮭の白子の横にポツンと置かれた
真鱈の白子
どうせ高いんだろうと訝って見てみるが
なんと８０ｇで１６０円だ
破格の値付け
こりゃ値段の張り間違えなんじゃないか動揺するが
最盛期の前に偶然獲れて数が揃わなかったからなのか
そのへんは私にはわからない
しかしこのお買い得品を買わない手はないが
８０gじゃ夫婦で食うには少なすぎる
しかも残り１パック
後ろ髪をひっぱられる思いでそのコーナーを後にするが
どうも気になってなかなか離れられない
そこで私のスマホがバイブった
妻からの着信で
今大事な局面だから無視しようかと思ったが一応出た
今日はちょっと練習（仕事関係）で遅くなるわよ
そうか、
そいつはちょっとうれしいじゃないか
そこになにかの啓示のようなものを感じた私のこころの
何かが激しく反応した
もしかしたら玉切れなんじゃないか
今日あの白子を独り占めして食い散らかすことによって
私の中に眠るオスを呼び覚ますことができるんじゃないか
おれの白子が復活する
一目散に白子コーナーに舞い戻った私は
少量のパックをわしづかみ
腰のあたりに妙にキテいる官能的な感覚を抱えたまま
若い娘さんが担当するレジに並んだ
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