こんにちは、岩崎雄大です。
すっかりご無沙汰してしまいました。
皆様、まだ心配事は続きますが、
自身の生の慶を感じながら
日々を過ごせておりますでしょうか。

あの大震災依頼、
自分の中で整理してからでないと
何を言っても違う気がしてしまって、
そのまま舞台の本番を迎え、
ここまで先延ばしになってしまいました。
すみません。

まず、この東日本大震災において、
被災者となった日本全国の方々、
及びその御家族、ご友人の方々には、
心よりお見舞い申し上げます。

自分もルームシェアをしている同居人が、
まさに震災の朝、仙台の実家に帰り、
被災後、向こうでは相当恵まれた環境下で
生活出来ていたにも関わらず、

二週間後に帰宅して会った時には
顔付きが変わっていてショックを受けました。

被災した友人知人の話や、
瓦礫となった思い出の場所の話を聞いて、
津波の被害にあった地域の写真を、
デジカメで見せてもらい、
鳥肌が、止まりませんでした。
テレビやニュースでは実感出来なかったレベルで
今のこの事態の深刻さを痛感し、
生の声で語られる言葉の持つ力を、
強く感じました。

そのような状況下で演劇公演をやることについて、
そもそも演劇という行為を社会の中で
生業にして生きようとすることについて、
今回改めて深く考えさせられました。

正直なところ、
自身としてはその答えを出せないまま
本番を迎えることになってしまったのですが、
本番を経て、
観に来られなかった友人知人の言葉、
観に来てくれた友人知人の言葉を聞きながら、
ぼんやりとその答えが見えてきた気がしました。


今回の舞台の一つのテーマでもあった、
「ハレ」と「ケ」。
演劇というのは元々お祭り、
更には神々に向けた祈禱だった訳で、
国内での起源は日本神話の天の岩戸伝説にある、
という説もあります。

天の岩戸伝説(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/天岩戸

ざっくりまとめると、

スサノオの乱暴狼藉に怒った太陽神が岩穴に閉じこもり、
世界が闇に包まれた時、
岩戸に集まった八百万の神々の前で
ウズメがエロティックな舞を舞い、
観ていた皆の笑い声に驚いた太陽神が、
自分がいない闇の世界で皆が何故笑うのかと
不思議がって出て来て、
世界は光を取り戻した、
という神話です。


ケ(日常)がケガレ(気枯れ)た時、
ケを取り戻すためのハレ(晴れ)の舞台。

僕らが作っている舞台は、
お客様と共有する物。

怒った神様を鎮めるために、
日常で枯れた気を晴らすために、
僕らはハレの舞台を打ち、
集まってくれた八百万のお客様の心を動かし、
晴れて日常のケの世界にお見送りする。

それが、やりたいことなのかもしれない。

「枯れた気を、晴らす。」
そしてケの世界のバランスを取る。

それが僕らが選んだ、生き方。
だから僕らにとっての日常。

それは別に、今回大震災があったからそうなった訳ではない。
それが、分かりやすくなっただけのこと。
元々そうであったはずだし、
そのつもりで現実と拮抗出来る演劇を
作ろうとしているはず。

別に自分達の演劇を買いかぶってる訳じゃない。

この時下で演劇をやる事を正当化したい訳じゃない。

自分が担おうと決めた役割。

ただ今回の事を期に、
それを改めて言語化してみたかった。
それだけのこと。

このスタンスは前からそうだし、
きっと今後も変わらない。

そんな訳で、
僕らはハレの舞台を終えて、
ケの日常に戻ってきています。

また次の晴れ舞台で、
気枯れてしまう日常に、
気を入れるために。

〈次回公演予定〉
Space早稲田フェスティバル参加作品
ピーチャム・カンパニー
peachum contemporary vol.1
「ダンシング・ヴァニティ」
原作:筒井康隆
脚本:清末浩平
演出:川口典成
2011年6月8日(水)-15日(水)
@Space早稲田