松倉如子の歌 -494ページ目

夕食

生きたままのアサリを湯の中に入れる。

いつもだって、いろんな命を毎日いただいているわけなのですが、なぜだか今日は、生きているアサリがだんだんとお湯の中で煮え、死んでいく姿を想像し、アサリを苦しませる自分に罪悪の気持ちがうまれました。
海から離れてしまっては、私が手をくださなくてもいずれ死ぬのですが、先ほどまで殻からにゅるりとだしていた二つの目を思うと、少しいたたまれなくなったのです。
鍋が沸騰してゆきました。
死んでしまった。
器にアサリをいれる。
食す。
ありがとうと思いました。
同じ時間を生きている大きさも様々な生き物たち。
それらが誕生して何かを食べ、子孫を残して死んでゆく。
当たり前の、昔からそれだけは変わらない出来事。
今日はアサリを食べた。
アサリのお腹の中には子蟹がいた。
大きな地球の一つのアサリを食べた。

私も、地球の一つとして役立ちたい、誰かのために何かをしたい。
せめて歌を、命をかけて歌いたいと思いました。
アサリはとてもおいしかったです。

ビネツ。

キンカン蜂蜜漬けとチョコレートを食べおわり毛布にくるまっている。頭痛のする風邪の初期。喉の痛みもひかない。嬉しい日と不安な日はやっぱり交互にやってくる。こんな日はまた言葉を衝動的に消去してしまいたい。野生動物が危険を察知して身を隠す。前に消してしまったものは記憶の中にちらほらり。友達が送ってくれた詩にメロディを考える。私とはまた違い素敵だな。曲にして彼女に歌いたい。伝えたい部分が見え隠れ。感覚を理解しあう。気長に待っている。

妖怪シドロモドロ

一人暮らし八年。
母さんが田舎のバーゲンで買ったオバサン服や食料(主に米、梅干し、海苔)を毎年毎月、送ってくれる。「ゆきこさんはほんま何もかわないんだから」と言いながら。(母さんは私をゆきこさんと幼少時代から呼んでいると思われる。)たまには掘り出し物があるのだが、まあ田舎の売れ残りなのでデザインは良くない。ありがたく着る。

世のお洒落さんやかわいこちゃんは努力をおしまない。化粧して色のバランス考えて、香水つけたり、マニキュアしたりパーマだってカラーリングだってする。マスカラもね。
季節は先取りするものよ。可愛い子って好きさ。

しかし昔っからいまいち、自分が女の子の特権を活用したいという気持ちが起こらなかった。
たまに、少し。
私の青春の若き日々は。あと数日で26歳。
「意外と歳いってるんだね!」
ああ、もしや母さんが送ってくれたオバサン服が似合う歳になってきているのではないか。
うら若き乙女心は永遠なれど、老いは日に日に進行す。
日焼け止め全く塗らなかったし、あと何年かたったらシミだらけやもしれぬ。
皺は傷痕の様に刻まれ、髪は抜け落ち、骨密度も脆く…。笑い事じゃない。

これは、本当にえらいことなのであるわけなのであるのだすのす。しどろもどろ。


「グミ・チョコレート・パイン」をほんの少し読んだ。