唇 が みだ さ れ ていくにつれ、心が揺さぶられて、俺は大野さんの背中に手を回した。猫背の丸い背中を撫でて、髪に触れる。
ちゅ…くちゅ…って音を立てながら、大野さんが俺の 口 内 を ま さぐる。薄目を開けると、大野さんのぼぅっとなった目と視線が交錯した。
「ニノ…」
吐息まじりに囁くから、彼が呼ぶ俺の名前はほとんど声にならなかった。
強く 吸 い つ い た 後、ゆっくりと 唇 をなぞって、彼は名残惜しげに俺の耳に触れながら、身体を離した。
「っは…はぁ、大野さん…」
荒い呼吸のまま、名前を呼ぶ。彼は目を細めてにこっと笑った。
「んふふ、いっぱいした…」
言って、満足気な顔をして、立ち上がる。
「んじゃ、帰るな」
「え」
ちょ、待って…
「な、なんで帰っちゃうの?」
俺が焦って声をあげたら、大野さんは困った顔になった。
「や、だってこれ以上いると、とまんなくなる」
「え…」
「今だって…必死に堪えてるから」
大野さんは苦笑しながら俺を見てそう言った。
「か…えんないでよ」
思わず、口をついた言葉に自分でもびっくりする。
でも、帰ってほしくないよ…
「ニノ…」
「もっと…い…ろんなとこに…誕生日プレゼント…ほしい…」
なんつーこと言ってんだ、俺は…
恥ずかしすぎて、目を伏せて、立ってる大野さんの足を見ながら小さな声で呟くと、その足が動いた。彼は再びしゃがみこんで、俺の顔を覗き込む。
「ニノ…いいの?今日、お前の誕生日じゃん」
「どういう意味?」
俺が首をかしげたら、大野さんはふふっと笑った。
「んなことしたら、俺の方が…お前んこと、もらっちゃうことになるけど、いいの?」
頰に触れる大野さんの温かい手よりも、頰が熱くなる。
「い…いよ…」
「ふ…でもさ、誕生日に俺とそんなことしたら、俺んことめっちゃ特別になっちゃわない?大丈夫?」
そう言っていたずらっぽく笑うから、俺は大野さんの首に腕をまわして抱きついた。
「そんなの…もうとっくに…なんだけど…」
「ニノ…」
「大野さんは…昔っからずっと…俺のトクベツ…」
俺の背中に回された大野さんの腕に力がこもった。そのまま、俺の脇の下に手をいれて、そのまま持ち上げられる。
「わっ」
自分も立ち上がって俺を引き上げた大野さんは、ふふっと笑ったまま、俺を抱き寄せて、そのまま抱き上げる。
「重いでしょ…」
「うん、重い。だから早くベッドの場所教えて」
そう言って歩き出す彼に俺は目で寝室のドアを指した。
彼は俺を抱きしめたまま、器用にドアを開けて部屋へ入る。
ベッドへ俺を下ろして、そのまま俺を横たえる。大野さんは上着を脱いで俺の上に覆いかぶさって、熱のこもった瞳で俺を見つめて言った。
「ニノ…もう、俺、多分お前にめちゃくちゃ夢中になっちゃうから…」
「ん…」
「忘れないうちに言っとくね」
俺がはてなマークをいっぱいつけたような顔で大野さんを見上げたら、彼はふふっと笑った。
「誕生日おめでと」
その言葉が終わるや否や、大野さんの顔がまた近づいてきて、俺の唇に優しいキスが降ってきた。
終