Side O
ニノがアイツとの飲み会に行くって日、俺はそわそわしながらニノを楽屋で待っていた。
「おはよ」
ドアが開いて、寝ぐせのはねたニノが入ってきた。俺が手招きすると、ニノは怪訝そうな顔をして、俺が座っているソファまで近寄ってきた。
俺の前に立ったニノの腰に両腕を回して、引き寄せる。
「わ…どしたの、大野さん」
ニノは俺と向かい合う形でソファに膝をつき、俺の腿にまたがる形で、ぺたんと俺の膝に腰をおろした。
「今日の飲み会…俺も行っていい?」
言った瞬間、ニノはぷっと吹き出した。
「大野さん、今日来る人全然知らないでしょ」
「だって…アイツがくんでしょ?」
俺が口を尖らせて言ったら、ニノは目を丸くした。
「そんなに、リリティのことキライなの?」
「キライっつーか、お前が心配なの!」
むくれて言うと、ニノはふふっと笑った。
「俺が浮気するって思ってんの?大野さん」
「浮気っつーか、アイツがお前に…」
言い終わらないうちに、楽屋のドアが開いた。ニノがドアの方をちらっと見たから俺は口をつぐむ。
「また大宮は楽屋でいちゃついてんのぉ?」
相葉ちゃんが俺らを見て、笑いながら楽屋に入ってきた。
「うん。もうちょっといい?」
ニノが笑顔で聞いたら、相葉ちゃんは呆れ顔になった。
「まあ…ちゅうとかしなけりゃ、いーよ」
「だって、大野さん」
ニノは俺の首に手を回して、ぴたっと密着して顎を俺の肩にのせた。
「なっ…ニノ‼︎ 」
珍しく人前で甘えるニノにドキドキする。
相葉ちゃんは「ハイハイ」って言いながらも俺らから目を逸らしてくれた。
「大野さんの気持ちはよくわかったから、大丈夫だって」
「わ…わかったの?」
「うん。俺が他の人とこういうことするのがイヤなんでしょ?」
「ん…」
耳元で囁かれて、思わず腹の底がぎゅんっと反応しそうになる。俺は焦ってニノの肩をつかんで引き剥がした。
「ニノ、ここ楽屋…」
「前楽屋で俺にちゅうしたくせに」
ニノが口を尖らせて言ったら、飲み物を飲んでた相葉ちゃんがぶっと吹き出した。
「それに大野さん、今日夜個展の打合せがあんじゃないの?」
「そっか…」
「忘れないでよ、そんな大事なこと」
ニノが俺の肩に手をおいたまま軽く睨む。
「じゃさ、今日夜終わったらニノん家行く」
「え?」
「俺と約束してたら、帰ってくる気になるでしょ?」
「珍しいね。そんなに不安なんだ。いいよ、別に。鍵、いる?」
「俺の方が早いかな?」
「遅い時間から始まるからね」
ニノは話しながらポケットから鍵を取り出して、俺に渡した。
「いい子にしてるんですよ」
ニノがにこっと笑う。
「それはこっちのセリフ…」
俺の膝の上で笑うニノが可愛くて、ついニノの顔に手を這わせたら、「はーい、そこまでねー」って相葉ちゃんが雑誌をまるめた即席メガホンで俺らに注意した。