部屋に入って、畳の上に横たわっていたニノの姿を見て…ショックがなかったと言うと…嘘になる。
でも、俺の受けたショックなんかより、ずっとずっと辛いことをされたんだって一目でわかって、早く、とにかく早く安心させてやりたくて、俺は無我夢中でシャツを脱いだ。
でも、俺の受けたショックなんかより、ずっとずっと辛いことをされたんだって一目でわかって、早く、とにかく早く安心させてやりたくて、俺は無我夢中でシャツを脱いだ。
ニノは俺から身体を隠そうと手首を縛られたまま、震えながらあっちを向こうとしていた。
詳しいことはなんにもわかんなかったけど、ニノは一人ですごく頑張ったんだってわかった。
夢中で手首のシャツを解くと、ニノは身体を隠そうと、腕で上半身をかきいだく。
「ニノ…」
もう腕の中に抱きしめたくてたまらなくてその身体に手を伸ばすと、怯えたように身体をちぢこませる。
…ニノ
…もう一人で頑張らなくたって
いいんだよ…
さっきみたいに
おいらを呼んでよ…
ニノの顔に伸ばした俺の指先も震えていた。
「ニノ…」
ニノは涙の滲む瞳でぼうっと俺を見つめた。わなわなと震える唇を必死に開く。
頰に俺の指が触れた瞬間、ニノは消え入りそうな震える声で呟いた。
「…大野…さん…」
呼んでくれた…
俺はたまらずニノを抱き寄せて、腕の中に強く抱きしめた。
そうすることしか、できなかった。
ニノの身体は力が抜けていて、ひどく頼りなさげに俺にもたれかかる。
「ああ、ニノ…」
俺の体温を伝えたくて、ぎゅっと抱きしめる。背中をさすって、乱れてしまった髪を整えるように撫で続けると、ニノはされるがままになりながら、また小さく「大野さん…」って力なく呟いた。
そのまま抱きしめ続けると、ニノがためらいがちに俺の背中に左腕を回した。ややあって、右腕も背中に回される。
ああ、ニノ…
俺は腕の中のニノの首筋に顔を埋めた。
大バカだな、お前…
いっつも一人で、何とかしようとして…
何を抱え込んじゃってたのかわかんないけど、
なんで、おいらにも、抱えさせてくんなかったの?
帰ったら、ぜっったい、叱ってやる…
ニノの顔を覗き込んだら、ニノは泣いていた。その涙を拭こうともせず、俺の顔を見て困ったように眉を寄せて呟く。
「泣か…ないでよ…」
ニノはまだ震える指先で俺の目の端に滲む涙を拭った。
「そういう顔を…させたくなかったのにさ…」
「バカ…お前…大バカなんだよ…」
この涙が怒りなのか、悲しみなのか、安堵なのか、わからない。
あるいは全部なのか。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、またニノを強く抱きしめる。
ふと、震えの収まりかけたその身体がやけに熱いことに気づいた。
「お前…めちゃくちゃ体熱い…何された⁉︎」
ニノは俺を見ながら何か言おうとして唇を開いたけれど、すぐ言葉が出てこないようだった。
「何されたって失礼ですねぇ…二宮さんは自分からここに来られたんですよ?」
畳の上にしゃがみ込んでニノを抱きしめてた俺の後ろから、奴の悠然とした声が聞こえた。
「…ん…だと…⁈ 」
声に出したら、その声が震えた。
「熱いのは…単なる媚薬ですよ。二宮さんに少しでも感じてもらいたくて…ほんの親切心です」
「お…まえ…ふざけんなよっ…」
体中の血が沸騰する。
俺の口からその言葉が転がり落ちたと同時に、俺は奴に殴りかかった。