Side N
「…離れらんないもん」
眉をぎゅっと寄せた大野さんの顔が近づいてきた。唇に、近づいてきた大野さんの吐息を感じて、俺は目を閉じた。そっと重ねられた大野さんの熱い唇 を夢中で貪 る。
翔ちゃんがいるのも、奴がいるのもわかっていたけど、もうそんなことより、この唇が欲しくてたまらない。
もう、こんな風に、できないと思ってた…
キスしても、絶対辛くなんだろうなって…
大野さんの手が優しく俺の髪を撫でるから、涙があふれて止まらない。
大野さん…
髪をさ わると、大野さんの香りがふわっと香る。
深くお互いの唇を確かめ合ってから、やっと大野さんは身を離して、心配そうにじっと俺を見つめる。
「えっと…あの、お取込み中すいません」
突然、開けっ放しのドアから誰かが入ってきた。
「相葉くん…松潤も…」
翔ちゃんが驚いた顔で2人を見た。
「今さ、とりあえず録音してみたから」
潤くんはスマホを手に持っていた。
「録音って…」
「翔さんが…ニノに取引なの?って聞いたあたりから」
言って潤くんはニヤっと笑う。
「そこに突っ立ってる人がニノを脅してたって話してるとこ、全部はいってるかもね」
潤くんはいたずらっぽい顔で翔ちゃんに向かって話した後、リリティを睨みつけた。
「お前、ざけんじゃねーぞ…ニノにこんなことして…」
「まあまあ、松潤、気持ちはわかるけどちょっと待って…。ね、みなさん、さっき連絡入れて、もうすぐうちの事務所の人が来るから」
相葉さんが潤くんの肩に手をかけてなだめながら言う。
「リリティさん…でしたっけ。一緒に話しませんか?」
リリティの身体が揺れて、奴の動揺が伝わってきた。
「ていうかリーダーさ、いきなり写真ばらまくからめちゃくちゃ焦ったじゃん!あ…来た」
写真、回収してくれてたんだ…
相葉さんがポケットから先ほど廊下で回収したであろう写真を撮りだそうとした時、廊下に足音が響いた。
「すいません、遅くなりました…。リリティさん、いらっしゃいますか?」
俺たちのチーフマネージャーが顔を出す。
「ここじゃなんですし…場所を変えて…話を聞かせてもらえませんか?」
彼は今まで俺たちに見せたことのない冷徹な笑みを浮かべて、奴を見た。