モニタに映る大野さんは、緊張した面持ちだった。
まあ、そりゃ…そうだよね…
まさか「そのため」に俺ん家に来る日が来ようとは思わなかっただろうな…
ドアの前で待っていると、人の気配がしたから、ドアを開ける。
「あ…お疲れ」
「お疲れさん…打合せ、早かったんだな」
どことなくぎこちなく会話しながら、リビングへ歩いていく。
「まあ、今日は雑誌のテキストの見直しとかだけだったから…なんか飲む?」
俺はキッチンの冷蔵庫を指差した。
「ん…あ…えっと…」
大野さんはリビングに突っ立ったまま、視線を泳がせた。
「俺、いいや」
「そ?俺…飲むけど」
冷蔵庫からビールの缶をひとつ出して、ソファへ座り、プシュって音をさせて開けた。
大野さんは床に座って、ソファに座った俺を見上げた。
「どしたの?やっぱ飲む?」
「いや…その…この前風邪ひいて、頭くらくらしてたから、今日、ちゃんともっかい言わなきゃって思ってて…」
俺は、一口飲んだビールを吹き出しそうになった。
「な、何を?」
「それに…酒のせいとか思われたくないし…」
「何が?」
俺は焦って、缶をテーブルに置いた。大野さんを見ると、彼は床に正座していた。眉は下がり気味だったけれど、俺を見つめる瞳はまっすぐで、熱い。
「ニノが、好き」
大野さんは膝の上においた両手をぎゅっと握った。
「おいらのもんに…なって?」
俺はしばらく答えずに黙って、大野さんの不安そうな顔を見つめた。
ホントは、ずっとずっと前から…
俺の心はあなたの…だったけどね…
「ね、ひとつだけ、聞かせて?」
俺が切り出すと、大野さんはこくんと頷いた。
「あの子のこと、好きだった?」
大野さんは俺の言葉の意味を理解して、一瞬、目を伏せた。でも、すぐに俺を見上げて、短くきっぱりと言った。
「好きだったよ」
ああ…
キレイな瞳だな…
俺はソファから降りて、大野さんの目の前に正座した。大野さんはそんな俺をキョトンとした顔で見つめていた。
俺は…さっきの問いに、
迷いなく「好きだった」って答える、
この人以外欲しくない。
俺に対してもそう答えるであろう、この人を…
ずっと…好きだった、つもりなんだ…
大野さんの顔に顔を寄せて、その髪に手を触れる。ちゅ…って静かに唇を重ねると、大野さんは戸惑う様子を見せながらも、自分からもそっと唇を重ねてきた。