翔ちゃんと俺、同じ気持ちだったんだ…
あの日翔ちゃんに、「俺が、お前のことどんなに思ってるか、言いたいんだ」って言われて…
俺は嬉しくなって思わず言った。
「じゃ、今…言ってよ」
「ダメ」
「なっ…なんで…」
翔ちゃんは黙って、かたわらの壁にかかったカレンダーの入試の日を指で指した。
「今言ったら、頭の中、いっぱいになっちゃうでしょ?」
「なにで?」
翔ちゃんは眉間にしわを寄せて、言い淀んだ。
「ん…なんだろ…強いて言えばこの場合…お…れ…」
俺はそれを聞いてにこっと笑った。
「ふふっ…そんなのもうとっくにだけど」
「だーめだって、ニノ。俺のことは追い出して。先に合格」
「う…」
「我慢してんの、お前だけじゃないんだからさ…」
ふいっと目を伏せて言われて、胸が早鐘を打つ。
その日から、合格したい理由が一つ増えて、俺は以前にもまして勉強に身を入れた。
受験勉強の最大のカンフル剤は恋かもしれないな…
でも、最大の敵でもあって…
あんなことを言い合ってからも、翔ちゃんは俺に勉強を教える時はいつもの櫻井先生だった。
だから、よどみなく解説してくれる、きりっとした声とか、
俺の回答をチェックしているときの真剣な横顔とか、
帰り際に「しっかり勉強しろよ?」と言いながら優しく笑う顔なんかを、
あの日翔ちゃんに、「俺が、お前のことどんなに思ってるか、言いたいんだ」って言われて…
俺は嬉しくなって思わず言った。
「じゃ、今…言ってよ」
「ダメ」
「なっ…なんで…」
翔ちゃんは黙って、かたわらの壁にかかったカレンダーの入試の日を指で指した。
「今言ったら、頭の中、いっぱいになっちゃうでしょ?」
「なにで?」
翔ちゃんは眉間にしわを寄せて、言い淀んだ。
「ん…なんだろ…強いて言えばこの場合…お…れ…」
俺はそれを聞いてにこっと笑った。
「ふふっ…そんなのもうとっくにだけど」
「だーめだって、ニノ。俺のことは追い出して。先に合格」
「う…」
「我慢してんの、お前だけじゃないんだからさ…」
ふいっと目を伏せて言われて、胸が早鐘を打つ。
その日から、合格したい理由が一つ増えて、俺は以前にもまして勉強に身を入れた。
受験勉強の最大のカンフル剤は恋かもしれないな…
でも、最大の敵でもあって…
あんなことを言い合ってからも、翔ちゃんは俺に勉強を教える時はいつもの櫻井先生だった。
だから、よどみなく解説してくれる、きりっとした声とか、
俺の回答をチェックしているときの真剣な横顔とか、
帰り際に「しっかり勉強しろよ?」と言いながら優しく笑う顔なんかを、
その度に、必死で、
翔ちゃんを頭から追い出した。
受験終わったら、見てろよ…
って誰に言ってんのかわかんないけど…
俺は2週間で、英語だけでも過去問を10年分終わらせて、その日が来るのを待った。
入試の日が来た。
翔ちゃんと下見をしたから、行き方はばっちりだった。朝、駅に向かうと、電車はやはりものすごく混んでいた。えいっと覚悟を決めて、乗り込む。途端に、どどっと奥に押し込まれる。
電車が動き出して、しばらくして、ポケットに入れた携帯が震えた。
混みあった車内でなんとか携帯を取り出して画面を見ると、翔ちゃんからメッセージが届いていた。
『乗った?気をつけてこいよ。つぶされんなよ?』
心配性だな…
これでも男なんだからさ…
『大丈夫。ありがと』
メッセージを返して、つり革をぎゅっと握った。