Side O
「昨日外して、って言ったと思ったけど」
兵士に尋ねると、彼は口ごもった。
「それが…本日潤様が来られるということでしたので…規律通りにしております」
「潤王子が…」
王子が、この地下にある牢屋へ来るなんて、あまりないことだ。それほどまでに、西国の王室ゆかりの者に対する関心が高いってことなんだろう。
牢に入っていくと、ニノはゆっくりと目を開けて、俺をみとめて「あ…」と小さく声をあげた。
「ニノ、昨日は眠れた?」
ニノは少し頰を染めて、こくんと頷いた。ジャラ…とかすかに鎖が鳴る。
「あの…」
ニノは俺を見つめたまま言いかけて、言いにくそうに口ごもる。
「昨日は…ありがと…」
「ん?」
何のことかわからなくて首をかしげると、ニノはまた口を開いた。
「大野さんが…鎖外すように…言ってくれたって聞いたから…ホントはダメなんだってのも…」
ニノはそそくさと言い終わると、そっぽを向いてしまった。でも、正面を向いた耳が真っ赤になっていて、俺が思わずふふっと笑みを漏らすと、今度はニノの頰が真っ赤になった。
「バカ!笑うなってば」
「だって…ニノ捕まってるのに…」
俺のこと、気遣ってくれてんだな…
俺はまたそっぽを向いてしまったニノに近寄って、鎖の繋がれた手首を撫でた。
「ごめんな」
呟くと、ニノは驚いた顔で俺を見る。
「潤王子が来るから…今は…外してやれなくて…」
「…それがあんたの仕事だから…」
ニノは小さく言うと、かすかに微笑んだ。
薄暗くカビ臭い、肌寒い牢に入れられているというのに、俺を見つめてくる瞳は潤んでキラキラと光を放っている。
吸い込まれそうになんだよな…
しばらく、ニノの手首をなぞりながら顔を見つめていたら廊下が騒がしくなった。
王子が着いたようだ。
「そいつか…」
王子が牢屋のドアから入ってきた。久しぶりに姿を見た気がする。画家として仕えていたときは、よく彼の絵を描いたものだ。
「女のようななりだね」
王子はニノに近づいて、頭から足先までじろりと見た。ニノは、王子の顔を見て、驚いた表情を見せた。
この国の王子だし、顔を見たことくらいあるか…
しかし、西国とは交流がない。
なぜニノは、王子の顔を知っているんだろ…
「危険なものを持ってないか、ちゃんと確認した?」
王子はこっちを振り向いて尋ねた。
「ああそれは…ご覧の通り丸腰ですよ」
俺が言うと、王子はニヤリと笑った。
「やっぱ、智さんは画家上がりだからか、甘いよね…体の中まで確認しないとだよ?」
…体の、中⁈
「危険なものを持ってないか、ちゃんと確認した?」
王子はこっちを振り向いて尋ねた。
「ああそれは…ご覧の通り丸腰ですよ」
俺が言うと、王子はニヤリと笑った。
「やっぱ、智さんは画家上がりだからか、甘いよね…体の中まで確認しないとだよ?」
…体の、中⁈