Sakura 37-1 | 妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

嵐のニノちゃん、大野さんをイケナイ目で愛でる妄想小説ブログです。

残念ながら、ちょっと腐な感じです。

あくまでも妄想なので、生温かく見守ってくださいませ。


BL妄想です
苦手な方はお気をつけくださいませ














その頃江戸では、相葉屋の離れの部屋で、二人の男が縁側から外をぼんやり見ながら寝そべっている。


「月、きれいだね…」


「そうだな」


空に浮かぶ月は真円を描き、相葉屋の離れから見える庭園の池に輝きを落としていた。


「草津の湯かぁ…湯あたりしてたりしないかな、和と大野さん…盛り上がっちゃってんじゃない?」


「ふ…ふたりとも夢中になると、周りが見えなくなりそうだからな…」


ふたりとも、浴衣のような薄い着物を軽く羽織って、同じ方向を向いて寄り添うように寝ていた。着物の下からちらりと覗く肌には、ふたりともうっすらと汗をかいているのである。


「翔ちゃんはさ…忍び稼業以外に何かに夢中になること…あんの?」


一瞬、翔を振り返る雅紀の瞳が不安げに揺れる。翔は、ふ、と笑うと、自分の目の前に寝そべっている雅紀の背に鼻を押し付けた。


「ん…もう、雅紀に夢中…」


「翔ちゃん…」


皆がいる前での雅紀の突然の告白に慌てた翔は、雅紀を別室へ連れていくと、長年の思いの丈を全部ぶちまけたのである。二人は「馬鹿だね、俺ら」と言いながら、何もかもやり尽くしたかのように思えた長い付き合いの中で、まだやっていなかったことを初めて、した。そしてふたりはそのことに夢中になったのである。


それが、智と和が草津へ発つ前の話である。それからふたりは毎夜、相葉屋か櫻井屋のどちらかの私室で抱き合っている。


「和は…ほんとにやめちゃうの?」


「ん…そうだな…」


智と和の出発の日の朝、翔は和に相葉屋の一室に呼び出された。その穏やかな顔つきを見ただけで、翔には、和が「別れ」を言いに来たのだとわかったのであった。


「大野さんが、俺を望んでくれるなら…忍びをやめます」


「ん…」


ふたりにとって、一緒に生きるとは、そういう意味なのだ。翔は、智がこの仕事を続けていくには優しすぎると知っていたし、和がこの仕事を続けていく上で、その華奢な体に大きな負担をかけていることはうすうす知っていた。


「今まで本当にお世話になったのに…翔様には…すごく…申し訳なくて…」


最初は穏やかだった和の顔は歪み、声は乱れた。今にも泣き出しそうな和の姿に、ふ、と笑みをこぼすと、翔は優しく微笑んで両腕を広げた。


「おいで?」


その声にぴくりと反応した和の瞳からはついに涙がこぼれ落ちた。


「ほら、大仕事の前だろ?」


翔はなおも言うと、おずおずと近づいてきた和の体を抱き寄せて、自分の胸の中にすっぽりとおさめた。


「翔様…」


顔をあげた和の頰が涙で濡れているのを見て、翔はぷっと笑った。


「子供の時は泣かなかったのに…大人になって、泣き虫になったな、和は」


翔は和の頰に手を当てて、親指で涙を拭ってやった。


「翔様、いじわる…」


和は、ふふ、と濡れた瞳のまま笑った。