BL妄想です
苦手な方はお気をつけくださいませ
「そういえば和は…さ」
「はい」
「茶屋勤めしてたよな…ってそこで会ったんだもんな」
「はい」
翔はじっと考え込んだ。
「客商売は慣れてるな?」
「翔様、それはどういう…」
胸の中で小首を傾げる和に翔はにこっと笑いかけた。
「櫻井屋は味噌屋だけど…近々料理屋の店主と養子縁組を結ぶかもしれないから」
「ほんとですか⁈ 」
驚く和に翔は照れたように笑った。
「まあ、まだわかんないけどさ…」
「ふふ…翔様も隅に置けない…」
和はいたずらっぽく笑った。そして、体を離してきちんと正座した。
「決まったらぜひお声がけください…忍びを抜けても、これからもずっと…翔様の役に立ちたいです」
「雅紀はほんとにいいの?あの話」
翔が雅紀に問いかけたのは、養子縁組の話である。
「ん…もう、決めたから」
雅紀は翔の方へ寝返りをうつと、にこっと微笑んだ。
「もう離れ離れで…ただ心配するだけの日々は嫌だ」
「うん…」
翔は雅紀を抱き寄せて、その髪に顔を埋めた。
「苦労かけることもあるよ。遠くへ仕事にいって江戸に何日も戻らないことも」
「でも、櫻井屋で待っていれば、俺のところへ帰ってきてくれるでしょ?」
翔の顔を見つめる雅紀の瞳は黒々と濡れ、見慣れたはずのその輝きに翔はまた心を奪われた。
「うん、何があっても帰るよ…雅紀のところに」
「翔ちゃん…」
ふたりが交わすくちづけのかすかな音は、月光を受けて渡る風にかき消されていった。