Side O
「ニノ、着いたよ…立てる?」
「…ありがと」
目を開けたニノの顔はまだ真っ青で苦しそうだった。
「ここでゆっくりしてっか?」
「や…ちょっと揺れてるから、降りる」
ニノはふらふらと立ち上がると、ボートの降り口に向かった。先に降りていたピエールが、ニノに手を差し伸べる。
「ニノミヤ…ダイジョウブ?」
「あ…ありがと」
ニノはふらつきながら、ピエールに手を差し出した。ピエールのでかい手がニノの手をぎゅっと握る。そのまま、ニノはピエールに支えられてボートを降りた。
なんだろ、なんか、むかむかする…
あいつ、ちょっと馴れ馴れしくないか?
俺は手をぎゅっと握ったままボートを降りた。降りたところは浅瀬で、ビーサンで波を切って島へと進む。前を歩くニノが振り向いた。
「リーダー」
ニノが待っていてくれる様子に俺は安堵した。
ピエールとともにビーチへ上がる。ビーチには一軒、小屋が見えた。みんなその小屋の前に集まっていて、ホテルのスタッフがシュノーケリングの道具を用意してくれていた。ビーチの前の海はかなり広い、網で囲われたエリアがあり、「生簀」になっているとホテルのスタッフから説明を受ける。
「サメやエイを飼っているそうです」
「サメ⁈ 」
「おとなしいサメですよ」
相葉ちゃんがびっくりして聞き返すのに、マネージャーは笑った。
「よし、じゃあ行ってくんね」
皆、シュノーケルを身につけると海へ入っていって、ビーチには俺とニノが残された。
隣のニノをちらりと見る。ニノの顔は、南の島の強い日差しを受けていてもまだ青白く見えた。
不意にニノがこっちを見て、ぷっと笑った。
「ふふ…行って来なよ」
「へ?でも、お前…」
「座ってればそのうち治るよ」
ニノは小屋の前に設置されたパラソルの下のチェアに座った。俺を見てにこっと笑う。
「大野さん、行きたくてしょうがないって顔してる」
…う。
「マジで」
「うん」
ニノはまた、ふふっと面白そうに笑った。
見抜かれてんな…
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
俺はシュノーケリングの道具を持って、皆の背を追って海へ入っていった。