BL妄想です
苦手な方はお気をつけくださいませ
前回のお話→☆☆☆
第1話→★★★
一覧→◇◇◇
Side O
「お前さ、あいつの部屋とか行くんじゃねぇぞ」
ヴィラの中に入るなり俺はニノに言った。
「へ?行かないよ…行く理由ないし」
「うん…ま、そうだよな」
キョトンとした顔つきのニノにそう言われると、自分が考えすぎな気がしてきた。
恋人がニノに似てた…って言っても、
恋人って…男じゃないよな?
俺はソファに荷物を置いて、中身を確認しているニノをまじまじと見た。
ニノは…華奢だし
色白だし…女に見えなくはないよな…
「どうしたの?」
ニノが荷物を離して小首を傾げて俺の方を見た。ニノのうなじの白さを改めて確認していた俺は、悪いことをしているのを見つけられたみたいにドキッとした。
「あ…なんでもね…ごめん…」
「ふふ…変な大野さん…ね、俺風呂ためて入っていい?」
ニノは着ていたラッシュガードのファスナーを下げようとしていて、俺はなぜか焦って、早口で言った。
「いいよ、俺その間シャワー浴びるわ」
「りょうかーい」
ニノはそう言うと、風呂の湯をためるためにラッシュガードを着たまま洗面スペースに入っていった。
はぁ…よかった…
ホッとして、その後すぐに疑問が湧いてきた。
よかったって、何がよかったんだろ、俺…
しかし、その疑問はすぐに解けた。シャワーを浴びる準備をして洗面スペースに入って行ったら、ちょうどニノが窓際の風呂の前で、着ているラッシュガードを脱いでいるところだったから。
「あっ…ご、ごめん…」
ニノの肌は真夏の南の島にあっても雪のように白い。だけど半袖のラッシュガードから出た二の腕は少し日に焼けてしまって赤く染まっていた。その境目が目に飛び込んできて、俺は焦って、目をそらしながらもごもごと謝った。
「へ?何が?」
またキョトンとした顔のニノを見て気づく。
俺、やっぱなんか変だな…
「や、なんでもねぇ、ごめん」
変だと自覚しても、なぜかニノの体を正面から見ることは憚られて、俺は不自然にならないように目をそらしたままシャワールームに入った。脳裏にはニノの白い体が焼き付いていた。俺はその残像を追い出そうと、真上のレインシャワーから、めいっぱい水を出した。
Side N
どうしよう…
大野さんに見つめられた体のあちこちが熱い。とっさにわけのわからない顔をしたけれど、大野さんの視線に気づかないわけはない。
大野さん…俺の体見て、
見たこと、謝った?
途端にドキドキ言い出す胸を押さえて風呂に浸かる。背後の洗面台のそのまた向こうのシャワールームからざぁざぁと音が聞こえてきて、俺はホッとして湯船に体を預けた。湯の中で手のひらを広げてじっと見る。
さっきは…あんな、普通に触ったくせに。
ぎゅって…手までつないだくせに。
エイのしっぽに手を出した俺の手を
なんのためらいもなく…掴んだくせに。
俺は手をきゅっと握って湯の中へ沈めて、窓の外を見た。さっきまで晴れていた空には雲が多く浮かんでいる。
お互い、ひとりでいたいタイプだから、
気を遣ってくれてるだけ…だよね。
昼間のは…
大野さんはなんだかんだ優しいから…
そう結論づけると俺は立ち上がった。その時、シャワールームから出てきた大野さんと目があった。
「わあっ」
「な、なに…」
大野さんの動揺した声に、思わず湯船にうずくまる。洗面台の下は反対側まで見える作りで、シャワールームから出た大野さんの足が見える。
「ど、どうしたの…」
思わず体を隠すようにした自分にも動揺して、小さく聞くと、大野さんの足はリビングの方へパタパタと動いた。
「ごめんっ…なんか俺、今日変っ…」
「ん…」
俺も変だから、大丈夫だよ…
焦ったような大野さんの声に、俺は内心呟いた。