イタリアの政権交代劇の真っ最中。今回は、しっかりと見届けたいと思う。

 

1月26日に、ジュゼッペ・コンテ首相がセルジオ・マッタレッラ大統領に辞表を提出したことから、政権の再編成が必要となった。再編成には、マッタレッラ大統領がリーダーシップを取るという仕組み。大統領のところに各政党の代表者が出向き、それぞれの方針を示し、首相がだれだったらとか、閣僚に何人入れてくれたら、などお互いの交渉カードを出して、その全てのカードを手にしたマッタレッラ大統領が「これが一番のはず!」という形を提示、それをもって、組閣に関わる主要政党が第2ラウンドの協議に呼ばれ、やっと政権が決まる。

 

前回の2018年総選挙のあとの、第1次コンテ内閣の組閣には、ほぼ真逆の政策を掲げるポピュリスト政党「五つ星運動チンクエステッレ」と右派のレーガ党の連立政権で、ぜんぜんまとまらず、チンクエステッレの党首ディマイオを首相にしない、かつレーガ党の党首サルビーニを内務大臣に置く、というところでサルビー二を納得させ、組閣に至るまでずいぶんかかった。思えば、あのとき、政治家としての経験ゼロ、フィレンツェ大学法学教授だったコンテが、ぽっと出てきて、いきなり首相になったことから、今回の話に続いている。

 

イタリアの政治には、骨太な歴史がある。イタリアの政治家たちは、たいてい、ティーンネイジャーの頃から政治団体に出入りして、政治の酸いも甘いも見ながら、政治家になっている。だから、ぽっと出てきて、首相になって、コロナ危機だから政権の存続を、と気づいたらトップに居座り続けるコンテに疑問を持つのは理解できる。火花を切ったのは、リベラル派イタリア・ヴィバ党党首、もと首相のマテオ・レンツィだ。

 

<1月13日に私のFBに書いたものがこちら↓>

レンツィの演説は、政治家らしくって、やっぱり聞かせるものがある。コンテさん、声も小さいし、滑舌が悪くて(わたしが大好きなラジオUn Giorno da Pecoraでは「首相、酔っ払ってんのか?」とまで言われる始末。そういうことを言える国営ラジオってのも面白い)人をその気にさせちゃう力はない。冷静でそこがいいという人もいるでしょうが。

レンツィは「なんでもかんでもコロナで危機だから、うん百ページのプランを送りつけて、Fecebookで国民にはお知らせしてますし、皆さん承認して、って、国会できちんと審議もしないまま、スルーしていくのは、ありえない! 223ビリオンの使い道、本気でかんがえないと、EUから借りて、返せないやごめんって、そういうイタリアにするつもりか!?   危機だからこそ政治が必要だ!」と、吠えていて、間違ってないと思うんだけど、この記事を読んでも「ま、レンツィはチャーチルじゃないからね。3パーセントも支持率ないんだから、なに言ってんの?」と冷たくあしらわれている。「アメリカではバイデンが勝って、ポピュリズムの時代は終わったんだ。イタリア初のG20開催国が今年だよおおお!世界に顔向けができる国に!」って、国際派であることを主張しているところ、アメリカの状況をうまく使おうとしてるあたりも、「自分の政治人生しか考えてない悪人」と言う人も多いだけに、どう巧妙に動くのか気になるところ。あと数日の動き、どうなりますかね。魔法使いのマッタレラ大統領が、第3次コンテ内閣を、むりくり作って続行させる、かな。

 

 

 

結局、イタリアヴィヴァの二人の閣僚が辞表を出し、イタリアヴィヴァ党が連立政権から離れたことで、議会での安定した過半数が保てなくなってしまった。レンツィ、思った通り、相当、かき回してる。

 

おととい、はじまった大統領との協議。まずは1日目、形式的に、上院議長と下院議長。

昨日の2日目、イタリア・ヴィヴァ、左派PD党(レンツィはここのもと党首)と大事な2党との協議があった。

 

協議のあとの、報道会見があり、そこで党首がマッタレッラと何を話したか、のスピーチがある。昨晩のレンツィは、原稿もなしの、堂々たる演説。要約すると「政治家による組閣がダメなら、テクニカルな組閣でもよいから、とにかく意味のある組閣を早急に作るために尽力する。ただし、自分の生計のことばかり気にしているような人(コンテを指している)に、政権を握らせる気はない」と。とにかくコンテを追い出したいらしい。質疑応答にもしっかり答えていた。

 

チンクエステッレ党のElio Lannutti議員は、Twitter上で「レンツィは、国が前進し続けなくてはならないときに、国を動けなくしたことを謝罪する代わりに、いつも以上に露骨な傲慢さで自分の条件を指示してきた。私たちは常にコンテ首相と進む。レンツィはなしで」と言っている。しかし、チンクエステッレがコンテ首相案に固執し続けると、組閣はできない。

 

そのあとのPDの党首ジンガレッティの会見。用意した紙を読む形で「コンテ首相との組閣を支持する」と。プレスからの質問応答を拒否して、さっさと出て行ってしまった。

 

直後のイタリアのテレビ番組では、「PD党、恥ずかしすぎる。これまで長く政権を握り、常にイタリアの政治の中心に立ってきた政党が、なんでこんな不甲斐ないことになっている? 答弁もしないで、逃げ去るとは」と、みな驚きを隠せない様子でした。

 

さてさて、第3日目の今日は、野党の右派とチンクエステッレ党。フォルツアイタリア党ベルルスコーニはzoomで参加、フラテッリイタリア党、レーガ党など右派が連合して協議。「他の人たちのように長くはなりません(レンツィの長ったらしい大演説を皮肉って)。われわれ右派の各党は総選挙を求める。その後、イタリア政治がコロナや経済復興のためになるように、最大限の協力をする」と、代表してレーガ党のサルビー二が。

 

 

 

最後は5ステッレ党。「コンテ首相と再度組閣に望む」と。

 

結局、レンツィとコンテが張り合い続けても、着地点が見えないので、どちらかに妥協させるしかない。妥協させられるのは、議員数の少ないヴィヴァイタリアに決まっている。ので、結局、コンテ首相第3次内閣を作るために、マッタレッラ大統領が間に立って、5ステッレ党、PD党、ヴィヴァイタリア党に話をつけさせ、レンツィに当分は反乱を起こさないように念を押す、でしょうね。

 

でも、どうやって!!???