ベッドの上で目を覚ます。

・・・ここはどこだ?

見覚えのない天井を眺めつつ考えること数秒。

そして気づいた。

何のことはない。いつもと天地が逆、頭と足の位置が逆転している状態だっただけの話だ。

しかし・・・ただそれだけのことなのに、思いのほか動揺した。

 

中国の思想家 荘子の説話に「胡蝶の夢」というものがある。

 

「夢のなか蝶として飛んでいたところ、ふと目覚めた。果たして、蝶になった夢をみていたのか?それとも、いまこの人として在る自分は蝶がみている夢なのか?」

 

・・・という感じのやつだ。日々、眠るといろいろ夢をみる。みない事の方が稀だ。どちらかというとバッド展開が多く、思い通りになることはほぼない。目覚めて「ハァ、夢でよかった・・・」となることが大抵(夢判断とか無粋なものはここでは挟まないでおいてくださいませ)。

 

「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」

 

作家 江戸川乱歩の座右の銘として有名なこの言葉。しかし自分的には「うつし世こそまこと、よるのゆめは夢」であってくれると助かるなぁ、なんて大概思うわけです。

 

しかし、厳しい現実が社会全体に重くのしかかっている今、この状況が夢であってくれたらどれだけありがたいか・・・多くの人がそう思っているのではないでしょうか。「うつし世よ、夢であってくれ」と。かく言う自分も、そのひとりなのですが・・・。

 

結局、どうして天地逆さまに眠ってしまっていたのかはわからずじまい。そこまで寝相が悪いタイプでもなく、気分転換にトライしたような記憶もない。

 

「これはもう妖怪の仕業ということにでもしておこう!」

 

と結論づけることにした。

 

 

 

って、いやいや待て待て。我が家に妖怪がいる、ないし気軽に出入りされているとなると落ち着かないぞ。うぅむ、一体どうすれば?

 

・・・というわけで、13年前に着用したこの衣装を今後は寝巻きとして着用することにしました。これなら妖怪もカジュアルに悪さをしてこないはず。一件落着。

 

 

この話は一部フィクションです。