急激な進化を遂げた錦織圭の2013と2014のナダル戦を徹底比較 | バレー・テニス中心のスポーツブログ

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とてつもない急激な進化を遂げた錦織圭。

しかし2013年のクレーでのナダルとの対戦は完全敗北。ナダルのムーンボール的な驚異なバウンドに対し、全く対処ができない状況でもありました。

でも2014年はその立場が全く逆転。怪我で棄権となりましたが、実力的には完全にクレーコートを支配し、ナダルを完敗寸前まで追い込んだマドリード決勝戦。ナダルの球威に対応するどころか、ナダルを後方に押し込み、試合を完全に支配。

まさかここまで急激にテニスが進化するとは夢にも思いませんでした。今年の1月で全豪で対戦した錦織圭×ナダル。その時にはナダルのムーンボール的な強烈スピンに対し、普通に打ち返せるまで進化していたものの、ゲームを優位に進めるまでにはいってなかった。

なぜこんなに急激に進化できたのか?

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テニスは大きく3つの種類のコートに分けられます。
[ハードコート]
 セメントなどを基礎原料として、硬く大きく弾むコート
[グラスコート]
 天然芝で、球足が滑るように速く、バウンドしにくいコート
[クレーコート]
 上の画像のように、煉瓦などを細かく砕いた土のコートで、球足が遅く、滑りやすいコート

コートサーフェイスでいえば、錦織が最も得意なコートはハードコート。球足も安定して速く、得意の高速テンポライジングが安定しやすい。どちらかと言えば、フィジカルに課題がある錦織は体力を必要とするロングラリーが多いクレーは難しい対応かもしれません。

しかし、その難しいレッドクレーでもバルセロナ~マドリード準決勝まで10連勝と恐ろしい成長を遂げた理由は何か?この1年での錦織圭でクレーコートの進化を具体的に追ってみたいと思います。

あくまでアマチュアテニス競技者のテニス感覚での個人的意見です。ご参考までにご覧ください。

[2013年のクレーコートの錦織圭]
2013全仏オープンの4回戦で対戦した2人。しかし世界ランク15位まで上げた錦織でも、ナダルとの差は歴然でした。というより、まずまともなショットさえ打たせてくれないムーンボールでした。

◆2013全仏オープン2000大会
---シングルス4回戦---
世界15位 錦織圭 ●4-6、1-6、3-6 世界4位 ラファエル・ナダル(スペイン)

●2013全仏4回戦 錦織圭×ナダル


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上記の画像を見るとよくわかりますが、右が2回戦のバックハンドストローク。矢印のように右のかかとがしっかり地面について右足を軸に体を回転してボールコントロール、体重を乗せてボールに球威を与えています。

しかし左側は4回戦のナダルの錦織のフォーム。矢印のように大事な軸の右足が浮いたまま、スイートスポットに当てています。皆さんも試してみるとわかると思います。右足のかかとを浮かせ、左足はつま先立ち。これでバランスが取れますか?これではいくらトッププロでもボールコントロール、体重を乗せるような球筋は打てない。

そうナダル戦は、ナダルのバリエーションあるスピンボールに錦織の思考や反射神経の判断が及ばずに、無理な体勢ばかりだったこと。これが毎ポイント続けば、明らかにナダル優性の試合になるのは明らか。

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ナダルと試合をしている2013の錦織は、上の画像のように無理な体勢で打たされることが多かった。

■錦織の試合後のコメント
$バレー・テニス中心のスポーツブログ錦織「バックハンドに(ボールを)集められる事はわかっていた。自分のバックハンドで展開しようと思い、最初はそれが上手くいった。その後は、フォアハンドでのパターンが作れていた。」

錦織「けど、どんどん押され気味になってしまったので、1・2セットで自分のプレーをさせてもらえなかった。」

錦織「気持ちの面で粉砕された感がある。ナダルは誰よりもクレーでは強い印象がある。」

錦織「クレーでの対戦は、強い精神面と、あの(ナダルの)ボールに耐える体をしっかり作っていかなければいけない。」

錦織「今日、上手く出来ていたところもありますし、それがずっと出来るようになればチャンスもくると思う。無理をしなくても攻める形が出来るように、これから練習していきたいです。」

■ナダルの試合後のコメント
$バレー・テニス中心のスポーツブログナダル「圭との対戦はいつも苦労するけど、今日の自分は良いプレーが出来たと思う。彼がミスをしてくれて助かったよ。」

ナダル「才能に溢れた素晴らしい選手だよ。動きが速いし、テンポも速い。」

ナダル「優れた選手に必要な条件を全て満たしているから、トップ10入りはすぐに叶うだろうね。」

[2014年のクレーコートの錦織圭]
全く違うレベルに成長した錦織圭の2014年クレーシーズン。怪我明けのバルセロナでいきなり優勝。次のマドリード1000でも決勝まで勝ち続け、何と10連勝。

そして迎えたナダルとの決勝。ここで物凄いテニスを披露するのが錦織圭、全世界がすでにトップ5の実力を兼ね備えていると絶賛しました。

■2014マドリード1000大会(スペイン)
--決勝--
錦織圭 ●6-2、4-6、0-3ret 1位ラファエル・ナダル(スペイン)




上の画像を見るとわかりやすいですが、左側の2014の錦織は、両足をしっかりと地面につけて、球威のあるボールを打てています。しかし2013はナダルのスピンボールに対し、軸足の右足のかかとも浮かして打たなければならない状態だった。

それだけ2014はナダルのスピンボールをベースライン上でしかも前の打点でライジングで捉えていることがわかります。もはやナダルのスピンボールは怖いイメージは全くないでしょうし、苦手でもないと思います。

ナダルが「圭はテニスで最も難しいこと(ライジングでコースを変えて返球する)を簡単にやってしまう」

この言葉が2014年のナダルの対戦で確実に証明されたといってもいいと思います。

[2014全豪と2014マドリードの攻撃パターンの違い]
もはやナダルの強烈スピンでベースライン後方に下げられ、攻めのテニスを完全に封じ込まれていた2013年とは異なり、今やベースライン上で、ナダルのスピンを簡単にライジングでコースの打ち分けができるレベルにまで達した錦織圭。

ライジングを打てることにより、その攻撃パターンが全く変わりました。

■2014全豪4回戦 動画開始30:17~


全豪の4回戦のナダル戦も3時間を超える全セット大接戦の素晴らしい試合でした。この時にナダルにもいつか勝てる!という可能性を信じさせてくれる内容だった記憶があります。

(画像1)
ナダルはサーブでセンターにスライス系のサーブ。錦織はフォアのブロックリターンでミドルに打ち、攻撃に角度をつけさせない状態へ。

(画像2)
ナダルはそれを見て、錦織のバックのコーナーへ強烈なスピンショット。それに何とか踏ん張りつつも錦織は返球。しかしボールはサービスライン手前にバウンドし、かなり浅くなる。この辺りのナダルのスピン系に押されてショットコントロールができない錦織が目立ちます。

(画像3)
それを見たナダルは、ベースラインよりも1歩入り、フォアでDLのストレートへウィナー級のスピンボール。錦織はベースラインから1m以上下げられ、何とかクロスに返球

(画像4)
前のショットを打った段階からこの返球を読んでいた通りに、ベースライン1歩前からバックのDLウィナーショット!ナダルの思惑通りのポイントだったかと思います。

まだ全豪の時はナダルのスピン系のショットに押し込まれ、自由自在に試合をコントロールされていた印象。2013全仏まで戻ると、更にナダルのゲームメイクとスピンの球威が目立ちました。

しかし2014のクレーシーズンは激変。おそらく2014マイアミ1000でディミトロフ、フェレール、フェデラーと強豪を連続撃破した経験から大きく何かが錦織の中で変わったんだと感じます。

■2014年マドリード決勝 動画開始31:30~第2セット第1ゲーム0-15から
(画像1)
ナダルがサーブを錦織のバックにスライスサーブ。錦織はバックでストレートにリターンするもナダルも更にバックを攻撃

(画像2)
更に錦織はナダルのバックを攻めるため、バックでDLを連発



(画像3)
ナダルはバックのストレートのラリーを嫌い、フォアに回り込み錦織のバックへ再度狙う


(画像4)
錦織はここぞ!と思い、更に前へポジションを上げて、ナダルのバックにDLのウィナー。ナダルは回り込んで打った分、完全に逆を突かれ、全く動けず。

このような展開は錦織には不可能でした。バックのほとんどがクロスのラリーで、ナダルのフォアと打ちあう形に。結局、強烈なスピンに押されて、ボールが浅くなり、ナダルのウィナーが目立った以前とは全く逆。

バックのクロスを止め、バックのDLでのラリーを展開し、ナダルのスピンを完全にコントロールし、最後は逆をついてバックDLのウィナー。信じられない進化です。まるでジョコビッチのようにバックもライジングで簡単にコースを変えられる技術。とんでもないレベルの技術です。

錦織の大きく進化した点は、強打でも、ドロップショットでもありません。

最も進化した点は、『高速ライジングでどんな選手のボールの球威相手に自由自在にコントロールショットが打てるようになった点』だと痛感します。

2014全豪の時は、あえて強くヒットし、ボールのスピードで何とか相手に対抗しようとしていた。要は、力に対し、力で対抗しようとしていた。

でも今は、いろんな選手の球質に慣れ、それをベースライン1歩手前からライジングでコントロールショットが打てるようになったので、ベースライン上から打つ強打と変わらないショットがクロス、ストレート、アングルと打てるようになったこと。

だからこそ、強打なしでミスというリスク無しで、高確率のウィナーを奪える高速テンポライジングコントロールショットを身につけたからこそ、もはやトップ5に入るレベルのテニスができている錦織圭です。

難しい表現なので、図解してみます。

左の図が2014全豪オープンくらいまでの錦織のポジション。右の図が2014マドリード大会のポジション。全豪くらいまではどうしてもナダルのスピンの球威に押されて、ベースラインよりも下がらざるを得ない状態を作らされていた錦織。

よって強打(ボールのスピードを上げる)ことでしか、勝負をすることができなかった。結局リスクが高まり、ミスが増え、それが大事なポイントでも続き、0-3というセットも奪えない敗退になってました。

しかし現在は、右図のようにベースラインの更に中に入って、高速ライジングのテンポの速いテニスを展開しているので、強打をわざわざ使わなくても、コントロールショットで十分ウィナーが奪える状態です。

だからこそリスクを犯さなくても、高確率のミスの少ないテニスでナダル相手でも試合を優位にゲームメイクできる環境がつくれています。

全豪までは150km/hクラスの強打でないとウィナーが取れずにリスクが高いテニスをしなければポイントを獲れなかった。しかし今ではナダルのスピンの対処法も確立し、ベースラインで高速ライジングができるので、130km/hのコントロールショットでもポイントが取れる環境をつくれているところが、今の錦織の強さの象徴だと感じます。

更に、高速ライジングの中でもさらに難しいアングルショットをフォア、バック共に使えること。このアングルがライジングで使えることで、コートをかなり広く使え、相手を走らせることが可能となり、クレーコートのナダルでさえも、全く動けない状況をゲームメイクできる。

今の錦織は本当に強い!フィジカルさえ整えられれば、メンタル、技術面ではいうことはないくらい凄いレベルのテニス内容を誇ってます。おそらくジョコビッチやナダルでも全く負ける気はしないだろうと錦織は感じてるだろうなと思います。

■2014マドリード決勝後の錦織、ナダルのコメント
錦織「クレーでの戦い方が明確になっていました」

錦織「僕たちはプレースタイルが似ているから、彼には僕が取り組むべきことがわかるんです」※コーチのチャンについて

錦織「ウィナーを狙うショットが自信を持って打てていました。より攻撃的で、より積極的なテニスがフォア、バックともにできているので、すごく自信を持ってプレーできています」

錦織「リターンから攻めようと思っていたし、攻め続けることができた。それが相手にとってプレッシャーになっていたと思う。彼がいつもはないミスをしていた。結局負けにはなったが、かなり自信になった」

錦織「これまでクレーでこんないい感触を覚えたことはなかった。全仏オープンが楽しみ。昨年からプレーが良くなって、今は両サイドからより攻撃的にプレーできている」

ナダルのコーチ・トニー「我々より、彼(錦織)が勝者にふさわしい」

ナダル「驚くべき選手。素晴らしいテニスをしていた」

ナダル「今季はこれまでのキャリアで最高のレベルにいるように思う。けがが深刻ではなく、全仏オープンに出られることを祈っている」


現在、錦織は世界ランク9位。ランキングページでもついに画像つきでの登場で、嬉しい限りです。

次はいよいよ全仏オープン!怖い相手がいない錦織にとって、とてもアグレッシブで面白いグランドスラムになりそうです。しかし怪我が回復するかは微妙。少しずつ良くなってきてはいるようですが、ボール練習ができているかは微妙。

おそらくこんなに楽しみなグランドスラムは、ファンにとっても錦織自身にとっても初めてなはず。出場してほしいけど、レッドクレーで最もフィジカルを必要とするグランドスラムは厳しい大会。

1か月後には芝のウィンブルドンも控えているので、無理をせずスキップという判断もあると思います。今無理して長引くことだけは避けたい。出場すると思いますが、怪我が悪化しそうという判断を速めにしてほしいと感じます。

あとはフィジカル!フィジカルさえ整えられれば、トップ5は夢ではない。もう現実的なものです。そのためには定期的に安定して勝ち続ける必要があるので、年間を通してマスターズ1000、グランドスラム2000でセミファイナル以上に勝ちあがることだと痛感します。

最近は錦織同様にラオニッチ、ディミトロフが急激に活躍しランキングを上げていますが、ラオニッチはギャンブルのようなテニス、ディミトロフはまだミスが多くゲームメイクができてない。錦織のテニスの完成度がいかに高く、質の高いレベルのテニスをしているかが実感します。

これからもどんな決断をしようとも応援したい錦織圭のテニスです。

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