【対談イベント】 『僕らの絵本~グリム童話200年のひみつ~』



『僕らの絵本』



◎出演者プロフィール



天沼 春樹(あまぬま はるき)※写真 中



埼玉県川越市出身。ドイツ文学者・作家・翻訳家。

絵本の分野では、とくに超世代絵本や、出久根育、北見葉胡などの画家と特異な世界を制作してきた。
代表的な絵本に、グリム童話『あめふらし』(出久根育(画)、ブラチスラバ世界絵本原画展グランプリ作品。パロル舎)、『アリストピア』(大竹茂夫(画)、パロル舎)『旅うさぎ』(水野恵理(画)、パロル舎)、『リトル・レトロ・トラム』(北見葉胡(画)、理論社)など。




北見葉胡(きたみ ようこ)※写真 右

神奈川県鎌倉市出身。画家、絵本作家。

天沼春樹作の絵本に『リトル・レトロ・トラム』(理論社)、『ラプンツェル』などグリムの世界を描いた絵本に「絵本・グリム童話」シリーズ全5巻(那須田淳訳:岩崎書店)、書籍装画に「安房直子コレクション」全7巻(偕成社)他多数。2005年ボローニャ国際絵本原画展入選、2009年『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(小手鞠るい作:講談社)でボローニャ国際児童図書賞受賞。

http://www.asahi-net.or.jp/~bg4t-ktm/


企画/聞き手:東條 知美(絵本関連イベントコーディネーター・司書)※写真 左


◎日時/2012年12月23日 14:00~16:00 (13:30開場)

◎場所/ 本屋B&B   世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F


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(※対談記録の中では、発言者の氏名を省略させていただきます。[天沼春樹さん⇒天 北見葉胡さん⇒ 東條⇒]

またライヴならではの臨場感を生かすため、各発言についてはなるべくそのままの形で掲載させていただきました。ご了承ください。)



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「本日は、対談イベント『僕らの絵本~グリム童話200年のひみつ~』におこしいただき、まことにありがとうございます。絵本やグリム童話に興味をお持ちの方々、出版関係、アート系クリエイターの方々にもたくさん足を運んでいただいておりますようで、たいへん光栄に思っております。
絵本というものが広く愛され、もっと気軽に手に取ってもらえますようにと考え、このようなイベントを企画させていただきました。よろしくお願いいたします。」

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「天沼春樹先生と北見葉胡先生、おふたりは今回、対談という形でお話しをするというのは初めてということですが、長年ご一緒されているとのことで。・・・お仕事を、長年。」


「夫婦じゃないですよ」


「はい。ご夫婦ではないそうです。他人だそうです。」


「そこまでは言っていないですけどね!()


(会場 笑)


「お二人のあうんの呼吸は存じ上げておりますので、今日はお二人の普段のやり取りも、みなさまに楽しんでいただけるのではと思います。」


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「さっそく、本日のイベントタイトルにもなっておりますについてグリム童話について伺ってまいります。初版から実に200年というこちらのグリム童話、おふたりはこれまでに多くのグリム作品に携わっていらっしゃいますね。」


「はい。今日はきっと絵本の話を聞きに来た方が多いので、『5分でわかるグリム童話』という話をします。池上彰です()」 


(会場 笑)



(※ここからはプロジェクターで映しだされた画像を見せていただきながら天沼先生にお話を伺いました。)


「グリム兄弟は、1785年と1786年生まれの兄弟。この年号は覚えておいてください。この年号は重要になります。いつ頃の人なのかっていうと、ナポレオン台頭の時代の人なんですね。ドイツ人ですから(戦争で)負けちゃったほうの人なんですけど。さて、1812年!なぜここでこの話をさせていただくかというと。(グリム童話初版は)1812年の1220日、今日から3日前です。なんてったって200年目なんですよね。・・ここで会ったが100年目ってよく言いますけど「ここで会ったが200年目」というわけなんです。200年と3日前()この二日前が「マヤ歴最後の日」だなんていうから今日のこの開催も危ぶまれたわけですが()200年と3日前に出版されたグリムの話を少しだけさせていただきます。

どうして200年も(グリム童話が)親しまれてきたのか?絵本も・・北見さんもたくさん描かれてきているわけですが、(グリム童話をモチーフにした)作品はこれから減ることはなくて、むしろこれからの200年も増え続けるであろう、と。人類が生きている限り続くんじゃないかと思われるんですけど。「なんでこんなに親しまれ続け、グリムをモチーフにした作品が生まれ続けるのか?」とよく聞かれます。私も正直わかりません!・・いやそんなことないですけど() 私なりに「なぜ200年も?」という部分のひみつをちょっとお話ししたいと思います。



1785年生まれの兄ヤーコブ・グリムが1812年にグリム童話の初版を出版したのが(引き算すると)27歳のときですね。弟のヴィルヘルム・グリムがひとつ違いだから26歳。年子です。お母さんはたいへんだったと思います。このほかに7人生まれているんですから。9人生まれて6人育ったというこの兄弟です。非常に苦労したそうですよ。・・そういう話じゃないか()」

(会場 笑)



27歳と26歳の若者が、なんでドイツの民話を集めたのかっていうと・・・こいつが悪いんですね、ナポレオン。ナポレオンがドイツ全土を占領しちゃって、「キョウカラ、コウヨウゴハ、フランスゴ デス。ドイツゴ、ダサイ!」全部フランス語にしなさいということを言って、「ドイツ人の役人も全部クビだから」という事があったんですね。そこで「ドイツの文化が危ない!」と。「我々はドイツの文化を守らなくちゃいけない」「文化国防軍を作ろう!」と・・まあそこまでは言わないんですけど()、ともかく文化を守るためにメルヒェンを集めようということになったんですね。簡単にいえば。

ところがどっこい、グリム兄弟は貧乏で、旅をして話を聞いてまわることはできなくて。身の回りの人たちに聞いて回ったらその人たちはフランス出身の人たちだったりして・・『あかずきん』は入っているわ、『眠り姫』は入っているわ、『長靴をはいた猫』は入っているわで(その後)「しょうがねえなあ」と7回も改訂をしたということになるわけなんですね・・・」

(※記録②へ続く)