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【成人の日に贈る絵本】
子馬は走ります。
「どこへ?」行く先々で聞かれますが、子馬は走ることそれ自体を、瞬間を、体いっぱいに味わっているのでしょう。
転んでも平気。立ち上がります。
そうしていつの日か、自分の望む場所へたどり着くことでしょう。
◇『こうまくん』
(きくちちき/大日本図書)
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被災時小学6年生だった女性が10年後甲状腺がんを発症し、「当時は大人を信じて自分の頭で考えなかった」「(だから)その罰を受けている」と話す場面に、胸がつぶれる思いでした。
苦しみを分かち合うアート、記録し保存するアート、伝えるアーティストの姿をぜひご覧下さい。
(※『ザ・ドキュメント もやい 福島に吹く風』第60回(2022年度)ギャラクシー賞テレビ部門「奨励賞」受賞作品…2月6日まで無料配信)
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〈ぼくたちしっかりやろうねえ。〉
〈どこまでもどこまでもぼくたち一緒に進んで行こう。〉
少年から友へ、繰り返された言葉の意味を思う。
〈天上よりももっといいとこを〉と書いた賢治を思う。
自宅に所蔵の3冊の絵本「銀河鉄道の夜」とこの童話集に収められた「銀河鉄道の夜」を読み比べてみた。
どこに、どの場面の絵を、どのくらいのボリュームで、どういう構図で入れるかによって(当たり前だが)、物語のスピードもエンディングのイメージもガラリと変わる。
祈りにみちた世界。
表紙の絵も、158p-159pもすばらしかった。
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継母から真冬の山でスミレを摘んでこいと命じられたマルシュカ。
山に集まる十二の月の精たちは彼女を助けてくれます。
しかし欲深い継母と娘には……?
自然の恵みと超自然の戒めを伝える、スラブ地方の民話。
☆『十二の月たち』
(ボジェナ・ニェムツォヴァー再話/出久根育 文、絵/偕成社)
この民話が原作の絵本を6冊読み比べたことがあります。
出久根育の描く『十二の月たち』には、大陸の冬の厳しさ、自然と精霊の圧倒的な脅威が感じられました。
恐怖や不安、芯まで凍りつくような体感があります。
対比して描かれる花実の生命、祝福としての恵み。
民話にふさわしい文体です。
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「アニメージュとジブリ展」(銀座松屋)へ。
70年代~のアニメーション映画、番組、そこにいた人物と相関を細かに示す展示。
ジブリはもちろんのこと各人インタビューやガンプラの展示も。
とにかく盛り沢山!アニメージュ…拡大された記事をいちいち読んでいたら疲れてしまったので皆様お気をつけ下さい
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故郷では小正月に行われる行事「どんど焼き」を「塞(さい)の神」と呼びます。
轟々と昇る炎、燃えながら舞う紙や火の粉を避けながら、「食べれば無病息災」と言われるスルメや餅を炙ります。
深い雪と炎と、神さまの饗宴……
☆『ふうことどんどやき』(いぬいとみこ作/赤羽末吉絵 1973年 偕成社)
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鮫からサモファ船長を助けたタコのエミール。
それからは海の監視、救助、悪者退治にと大活躍!
異なる種と人のあいだの友情を描くのは、ウンゲラー作品の真骨頂。
あくまで飄々と、みんなを幸せにしちゃう物語。
☆『エミールくんがんばる』
(トミー・ウンゲラー作/今江祥智訳/文化出版局)
体言止め等余計な文字を極力削ぎ落とした翻訳が印象的な絵本。
〈せんちょうは、エミールと かたく あくしゅ。〉
そして何よりこちら――
〈おとろしい かおの さめが、のっと でて きた〉
1975年の今江祥智氏だからゆるされた〈おとろしい〉なのか、それとも実際に揺らぎの造語みたいなのがつかわれているのか。(原文に触れてみなきゃだわ)
これ、実によいのだ。
子どもたちが喜ぶ一文。
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【阪神淡路大震災から28年】
『あしたは月よう日』に震災の場面は出てきません。
ちょっとしたことで泣いたり笑ったりする、私たちみたいな家族の一日。
なんでもない「今日」が描かれた絵本。
なんでもないことの幸せ
守りたい人を想う日。
☆『あしたは月よう日』
(長谷川集平/文研出版)
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(金子みすゞの書いた「積もった雪」という短い詩が好きで、口の中で幾度もつぶやく。)
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「積もった雪」 金子みすゞ
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面(じべた)もみえないで。
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一日のおわり、眠る前の絵本は、呼吸するように読めるのがいい。
囁いてもいい。
歌ってもいい。
読む度にリズムが違っててもいい。
〈 ねむ ねむ ねねん 〉
オモチャもお洋服もねんね。
みんな眠ったら
わたしたちもねんねしようね。
☆『ねむねむねねん』(天野慶/おーなり由子/福音館書店)
わたしが水彩絵具で描かれたあかちゃん絵本を好むのは、やわらかな湿り気を保った絵の質感が、あかちゃんの抱っこを、匂いを、あの感覚を、思い出させるものだからなのかもしれません。
(おーなり由子さんの絵はとくにそう。)
少ない言葉数による自由と、心地よい絵。
癒される絵本。
眠るのが苦手なおとなも唱えてみてほしい。
優しく ささやく声で
〈 ねむ ねむ ねねん 〉……
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茶碗
栃木市の〈蔵の街市民ギャラリー〉で「ねぎし窯」陶器に出会いました。
優しく温かい雰囲気を纏ったお碗を、誕生日の記念に購入。
少しお話しさせていただいたのですが、作り手(根岸ご夫妻)のお人柄がしみじみとあらわれているように感じられました。
震災で山元町(宮城県)の自宅も工房も流され、ご縁あってこちらにいらしたそうです。