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【長い時のはてにふたたび出会う愛】
孤独なライオン。
百獣の王として君臨した日々は今や昔。草で飢えを凌ぐ毎日を過ごしています。
そんなある日、草原に降り立った一羽の鳥。
ライオンと鳥は、一緒に生きていくことをえらびます。
時は流れ――
ささやかなよろこびと共に生きるふたりにもまた、別れの時は容赦なくやってくるのでした。
「ひゃくじゅうの王じゃなくたって いいんだよ。おれはただ、あんたといたいんだよ」
……
おいおいと泣くライオンに、苦しまぎれの約束をする鳥。
「100年たったらまた会える」
ふたたび、遥かな時が流れていきます。
……
かけがえのない相手と出会った奇跡を祝福されること。
ともに安心して生きていくこと。
誰もが隔てなくその幸福を享受できることを、社会を、わたしは心から願います。
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2/3
【節分でも追い払いたくない鬼】
なんぼか むかしの はなしじゃそうな。
ひろい うみの まんなかに、ちょこんと 小さな 島が あって、ひとりぼっちで おにが すんでいたそうな。
......
ひろい うみの まんなかに、ちょこんと 小さな 島が あって、ひとりぼっちで おにが すんでいたそうな。
......
純真な鬼のお話です。
切ない絵本。
それなのに何度も読み返したくなる――
民話調の語りや謡い調子が、読者を物語の世界へと心地よく誘います。
表現に心打たれ「模写したい」と申し出る学生さんに、(図書館で)よく貸し出された絵本でもありました。
(梶山俊夫の絵はほんに、日本の絵本の宝じゃなあ)
こちらもどうぞ
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2/6
【風呂の日】
真夜中にひっそり開く、猫だけのお風呂屋さん。
老いも若きもぬる湯につかり、社交を楽しみリラックス。
風呂上がりの「またたびミルク」は1歳からよ……
あああ 風呂はいいねえ♨️
マイペースにみえる猫にだって、
いろいろあるんだよねえ。
通りかかった息子曰く「お、これぜったいおもしろいやつ」
若者の興味も誘う表紙絵。
中身は、というとこれまたユーモアと人情味にあふれています。
読んでいるこちらまで、クスクス笑っているうちにぽかぽか温まってくるよう。
構えからして昭和から続いているであろうこの「猫湯」。
もしどこかで万が一みかけても、どうかご内密にお願いしますにゃ……ฅ^•ω•^ฅ
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2/10
【ニットの日】
突然ですが、かぎ針編み、できますか?
昔から手先が不器用で面倒くさがり、編み物などはなっから放棄してしまった私……
だから、この絵本みたいに《あんであげる》と器用に棒を操り、みるみるマフラーなんかを拵えちゃう友だちが、本当に眩しくて!
せなけいこ作品に登場する「ルルちゃん」という名前を聞いて、1972年発のこちらの絵本を思い返す人も多いかもしれません。
☆『ルルちゃんのくつした』
(せなけいこ/福音館書店)
……
今度の主人公は、ひらがなの「るるちゃん」。
実は、編み物好きな男の子もたくさんいますよね。
「編んだの。あげる」って、毛糸のコースターをプレゼントしてくれた児童を懐かしく思い出しました🧶
ところでこちらの絵本、昔からよく女性の登場人物のセリフに用いられる「~わよ」の語尾が多用されています。
いまや小さな子どものいるご家庭では、ほとんど耳馴染みのない言い回しかもしれません。
(個人的には)耳にやわらかく響く音はわりと好みなのですが、皆さんはいかがですか……?
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2/11
【想わずにいられない…愛とは。人生とは】
100万年の間、ねこを喪った者たちがどんなに泣いても一度も泣かなかったねこ。
だって、しぬのなんか平気だった。
ねこは誰のものでもなかった。
後の、別れに身を引き裂かれる悲しみと「だれも好きにならないで100万回生まれ変わる」空虚とを比べたら、
うーん うーん……
どちらが辛いだろうかと、つい考えてしまう夜。
……
現在、TBSで放送中の連続ドラマ「100万回言えばよかった」(主演:井上真央)には、絵本『100万回生きたねこ』が、恋人同士だったふたりの大切な思い出の一冊、宝ものとして登場します。
2/3放送回では、恋人の死をほぼ確信した主人公が、絵本のストーリーに触れてこんなことを語る場面も。
「ねこは白いねこと出会ったことで、愛情みたいなものを知ったんだと思うけど、でも大好きな相手が死んじゃったら自分の人生もあきらめちゃう。それは、なんか違うって思う」
……
ねこが生まれ変わらなかったことを「人生へのあきらめ」と表現している点が斬新(!)でした。
「私は人生をあきらめない」と自らを鼓舞することで、悲しみで押しつぶされそうな彼女はこの瞬間、"喪失"という出来事に精一杯向き合おうとしているのかもしれません。
ドラマはまだつづきます。
『100万回生きたねこ』が今後どのように語られるのか?注目して観たいと思います。
……
生前の佐野洋子さんにお会いしたことはないけれど、むき出しで(読む方が)ひりつくエッセイは全部読みました。佐野さんがもしドラマを観ていたら、なんて言うだろう。
ところで
『文藝別冊 佐野洋子』(2011年 河出書房新社)佐野洋子追悼特集に収録された鶴見俊輔×森毅×佐野洋子の鼎談が面白いので、機会がありましたらぜひ。
(※鼎談は1992年4月『潮』から転載)
三者による絵本の話、秩序や数の話、ジェンダーの話etc……
話題は多岐に渡ります。
「親子」に話が向くと――
(著書あとがきの中で)「どんなことがあっても子供に戻りたいとは思わなかった」佐野洋子
「子供のときから愛情だけはまっぴらだという原哲学がずっとできている」 鶴見俊輔
「親の愛情なんかどうでもええやないの」 森毅
……
こちらは『100万分の1回のねこ』(2015年 講談社)
13人の作家による、絵本に捧げたトリビュート短篇集です。(文庫版もあり)
この中の短編小説、岩瀬成子作「竹」が好きです。
まえがきも好き。いかにも岩瀬成子さんぽくて。
〈100万回も平気で孤独を生きたのに、愛が猫を滅ぼしてしまった。愛は恐ろしい。〉
おすすめします。
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いつも絵本の話をしている。息を吐くように
Twitterでの絵本の紹介は誰に頼まれてるわけでも狙いもなくて。
好きなものを好きと言う(書く)ことがただ楽しい。
「いいね」をもらえると(この人もこの絵本、知ってるかな?好きかな?。読んだら好きになりそう?)と考えてニッコリ。
知らない人や知ってる人と、絵本にまつわる会話が生まれるのも嬉しい。
絵本の話が好きです。
(ちなみに 絵本じゃない本の話も好きです。)
絵本コーディネーター東條知美