3月8日は【国際女性デー】💐
 
そこで今週~来週は、中でも「女性」を生き生きと描いた絵本、一歩踏み出す勇気や元気をあたえる絵本、すべての人にあらたな視点を提示する……エンパワーメントの絵本をご紹介したいと思います。
 
 

まずは、実在の人物を描いた【伝記絵本】を。

つよい心と情熱を胸に、古い因習を打ち破っていった 女性の物語です。

 

 

 

 

エンパワーメントの絵本 【伝記絵本】 ~夢を貫いた女たち~

 

 

 

 

 

《好きなことを あきらめない女》
 
 
🌟『数字はわたしのことば:絶対にあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』
(シェリル・バードー 文/バーバラ・マクリントック 絵/福本友美子 訳/ほるぷ出版)
 
 

 

 

『数字はわたしのことば』作者のシェリル・バードーは、シカゴ自然史博物館の元シニアマネージャー。

こちらは、バードーが強く心ひかれたという、18世紀に実在した女性数学者ソフィー・ジェルマンを描いた伝記絵本です。

 

 

    

マリー・ソフィー・ジェルマン 

(Mary Sophie Germain)

1776-1831

フランス パリ生まれ

 

☆18世紀に生きた女性数学者

 

☆〈フェルマーの最終定理〉証明における多大な貢献を果たした

 

☆彼女の「振動」の研究は、エッフェル塔や、後の高層建築における理論に応用されている

 

☆現在の数学オリンピック大会でも〈ソフィー・ジェルマンの恒等式〉はよく出題されている

 

 

女性の立場が弱く能力を認められない社会にありながら、決して諦めることなく(大好きな)数学の道を貫いたソフィー。

 

彼女の半生を、絵師バーバラ・マクリントックが豊潤なイメージで蘇らせました。

 

*

 

1776年、パリの裕福な商家の娘として生まれたソフィー。

〈女の子なんて、せいぜい頭にかざるリボンや、ピアノでひく曲のことぐらい考えていればよろしい〉と言われた時代に、彼女は数学という学問を心から愛し、数学の研究に人生を捧げることになります。

 

ソフィーが少女の頃、フランス革命が起こりました。

バステューユ襲撃など街中は危険にあふれていたため、彼女は父親の書庫にこもり、ひたすら本を読んで過ごします。

そのうちに「数学者にとって数字は、宇宙のなぞを問いかけ、さぐり、ときあかすことば」であり、「詩人がことばをつかうのと同じ」......そのことに気がついたソフィーは、ますます数学に夢中になっていきました。

 

彼女が19歳の頃にフランス革命はおさまりますが、大学に行きたいと願っても女性に門戸は開かれていません。

大学の数学の課題をこっそり手に入れ、著名な教授に宛てたそのレポートを、男性の偽名を使って(!)次々と送るようになります。

 

そんなある日、教授が家を訪ねてきます。この若き天才数学者の正体が実は女性だったとは......どんなに驚かれたことでしょう。

 

ソフィーはますます勉強に没頭し、世界的な数学者たちと文通を行う仲になります。

しかし、難解とされる数学の証明に幾度成功すれども、"女である"という理由一点で、アカデミーには認めてもらえませんでした。

 

 

 

 

とかく文章のみで説明されがちな「伝記絵本」ですが、こちらの作品では絵師・マクリントックの表現が隅々まで冴え渡っています。

 

ソフィーがどんな逆境にあっても、「数字」はひたすら明るく弾んでいます。

彼女を包みこむように、時に外敵からその身を守るように、、、寄り添う存在として描き出されます。

 

数字は彼女の愛そのものであり、数字だけが、彼女が信頼する生涯の友だった......そのことがこちらにしっかりと伝わってきます。

 

*

 

アカデミー(大学)内に入る許可すらもらえなかったソフィー。

でも、彼女はけっしてくさりませんでした。

何度でも、何度でも、何度でも、

何度でも

 

挑み続けるのです。

 

そんなソフィーと男性の学者(権威)を、鮮やかにユーモラスに対比し描き出した場面があります。

なんて痛快!そして爽やか!

(ぜひ、お手に取ってみてくださいね)

 

 

長い歳月の果て、ソフィーはようやく栄光を掴み取ることとなります。

 

*

 

何かを言い訳にしたり、誰かのせいにしてあきらめたり、敵と定めてやっつけたところで、自分自身が強くなれるわけじゃない。

そういうダサイのはまとめて蹴飛ばしてしまえ。

いちばん強いもの

それは純粋な思い――。

 

 

〈外に対する力をもたない人ほど、内にある心はつよくなるものです〉

 

 

おそれず、卑屈にならず、好きなことをまっすぐにみつめ続けた18世紀のソフィーから、私は大いに勇気をもらいました。

 

強くならなきゃと強いるのではなく、

誰もが同じ地点に立つ未来を信じて。

希望とともに、祈りとともに手渡したい絵本でもあります。

 

 

さあ、

くさらず前へ。

 

 

(2022年7月には、ソフィー・ジェルマンをモデルにした漫画『天球のハルモニア』(講談社)が発売されています。)

 

 
 

❁⃘*.゚ ❁⃘*.゚ ❁⃘*.゚

 
 
 
明日も《〇〇な女》と題して、あらたな道を拓いた女性の伝記絵本をご紹介します。
 
ぜひのぞいてみてくださいね~🍀
 
 
絵本コーディネーター東條知美