3月8日は【国際女性デー】💐

 

今週~来週は、「女性」を生き生きと描いた絵本、一歩踏み出す勇気や元気をあたえる絵本、すべての人にあらたな視点を提示する……エンパワーメントの絵本をご紹介します。

 

 

前回の記事に続きまして、実在の人物を描いた【伝記絵本】を。

 

 

 

 

エンパワーメントの絵本 【伝記絵本】 ~夢を貫いた女たち~

 

 

 

 

2023年国際女性デー テーマ

「DigitALL: Innovation and technology for gender equality(ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー)」

 

 

‶ 国連は今年の国際女性デーにおいて、革新的なテクノロジーとデジタル教育の推進を助ける女性と少女を認識し、称えます。

また、経済的・社会的不平等の拡大に伴うデジタル・ジェンダー・ギャップへの影響について探求します。

そして、デジタル空間における女性と少女の権利を保護し、オンラインおよび情報通信技術によるジェンダーに基づく暴力に対処することの重要性にスポットライトを当てます。” 国連女性機関HPより)

 

 

 

今や生活のあらゆる場面で応用されるデジタルの技術。とはいえ一般に浸透したのはここ最近といった印象があります。

ところが百数十年も昔、高い知性と創造性をもって、のちに私たちが「コンピューター」として知ることとなる分野、その大いなる可能性に早くも気づいていた女性がいました。

 

 

造形の写真にうまれる影を活かす等、表現に精密な工夫の施された、フィオナ・ロビンソンの美しい世界とともにお楽しみください。

 

 

 

 

《コンピューターに創造の未来を予見した女》

 

 

🌟『世界でさいしょのプログラマー エイダ・ラブレスのものがたり』

(フィオナ・ロビンソン 作/せなあいこ 訳/評論社)

 

 

 

 

 

    

エイダ・ラブレス 

(Ada Lovelace)

1815-1852

イギリス ロンドン生まれ

 

☆世界初のコンピューター・プログラマー

 

☆解析機関(アナリティカル・エンジン)の機能について、計算のみならず絵や音楽、文章など多様なプログラミングに応用できると考えた人

 

☆1980年、アメリカ国防総省で使われるプログラミング言語が、彼女にちなんで「エイダ」と名づけられている

 

☆ビクトリア朝の英国上流社会に貴族の娘として生まれた

 

☆父親(ジョージ・ゴードン・バイロン)はバイロン卿として世に知られた詩人

 

 

 

その人物がどのような親の元に生まれ、どのような教育を受け、どのような出会いがもたらされるのか......

1800年代の人々にとって、環境は今よりさらに逃れようのないものとして、かれらの人生に影響をあたえるものであったのに違いありません。

このエイダ・ラブレスの伝記絵本を読むとそう感じます。

 

 

〈お父さんはバイロン卿。すばらしい詩を書く有名な詩人でしたが、自由ほんぽうな行動でも有名でした。〉

〈お母さんはアン・イザベラ・ミルバンクという名で、ゆうふくな家のおじょうさん。(中略)数学者でした。〉

 

 

 

 

バイロン卿との生活に疲れ果てた母は、生後一か月のエイダをつれて家を出ます。

(エイダは結局、最後まで父には会えませんでした。)

 

娘が決して父のようにはならないように!真面目な人生を!と、母はエイダに幼少時から数学を教え込みます。

同時に英国レディとしてはずかしくない教育をと、音楽や語学のレッスンなどもみっちり受けさせました。

 

 

 

 

時は産業革命。エイダ13歳。

街に大きな工場が次々とあらわれ、中では蒸気を上げた巨大な機械が休むことなく動いていました。

 

それまで人の手で作られていたあらゆるものが......ガラスも紙もセメントも、すべてを機械が作り出せる!

当時の人々にとってそれは劇的な変化であり、おそらくは、個々の内側に湧き上がる興奮とともに、「不可能を可能にする」を実現させた(自他および社会への)自信にあふれた時代だったのではないでしょうか。

 

貴族の人々の間でも、工場見学は大流行でした。

エイダは母に連れられて行った先の工場で、それまで勉強した様々な事柄を用いたあたらしい技術を想像するようになりました。

「飛行学」――空飛ぶ馬の機械などです。

 

一方母親は、この夢見がちな娘を本気で心配するようになりました。父親のようにならないよう、ますます勉強させなければ。16になったらよい形で社交デビューもさせなければ......。

 

 

 

 

さてこの後、エイダはどうなったと思いますか?

 

社交界で、17歳になったエイダは数学者バベッジと出会います。

彼の発明した「階差機関(ディファレンス・エンジン)」と出会います。それは、蒸気で動く巨大な計算機でした。

 

エイダはその後結婚、出産という経験を経ますが、その間も数学者バベッジとのつきあいは続きました。

バベッジのつぎの発明は、「解析機関(アナリティカル・エンジン)――「世界ではじめてつくられたコンピューターの原型」といわれるものでした!

 

 

エイダは解析機関の機能が、複雑な計算にとどまらず、絵や音楽、文章など多様なプログラミングに応用できるものであると考えました。

‟創造”というまったく未知の領域も含め、コンピューターの計算法を考えついたのです。

 

エイダが考えた計算法(プログラミング)は、100年後にコピューターを設計した科学者たちを驚かせるものでした。

 

 

 

 

「これまでにないもの」をつくり出すために必要なのは高いレベルの知識、それから豊かな想像力であると、AI時代の今あらためて思います。

 

そしてそのためにはやはり、多様な立場、多様な視点がどのジャンルでも不可欠であるということを、この170年前に生きたひとりの女性が教えてくれるのです。

 

 

「想像力の父」と「分析の母」のもとに生まれた貴族の女性・早逝の天才エイダ。
彼女にもおそらくあったであろう苦悩や葛藤について、この絵本の中では深く掘り下げられません。

でももし彼女が今、現代のコンピューターに触ることができたのなら......

 

その知性と想像力、与えられた人脈を元手に、イノベーションを創出する世界的なリーダーになっていたのかもしれませんね。

 

 

 
 

2023年国際女性デー テーマ

「DigitALL: Innovation and technology for gender equality(ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー)」です。

 
 
 

 

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女性プログラマーの伝記絵本といえば、こちらもぜひどうぞ。

 

 

〈どうしてなりたいものになれないの…?〉

 

科学に興味を持つ少女がプログラマーとなり、1969年7月20日、アポロ11号の月面着陸を成功させた実話を元にした物語。

当時、衛星中継で同時通訳していた当事者でもある鳥飼玖美子氏による翻訳絵本。(あとがきも含め訳者の実感が伝わってきます)

 

 

この世に絶対などない。

アポロ11号の偉業は、けっして過信に陥らず失敗に備えたマーガレット・ハミルトンのはたらきがあってこそでした。

 

 

 

ぜひお手に取ってごらんください。

 

 

 

《過信せずに 備えた女》

 

 

🌟『月とアポロとマーガレット:月着陸をささえたプログラマー』

(ディーン・ロビンズ 作/ルーシー・ナイズリー 絵/鳥飼玖美子 訳/評論社)

 

 

 

 

 

‪‪~参照~

マーガレット・ハミルトンのアポロ11号

 

 

 

 

 

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だれもが差別されることなく、ひつような場面で能力を発揮できますように。

 

多様性のあるところによいもの、安心が生まれますように💐

 

 

 

絵本コーディネーター東條知美