空腹で運動すると、筋肉が分解して筋肉が痩せるという人がいます。
空腹の運動は身体に悪いので、何か食べてから運動すべきという人がいます。

今回は空腹で運動しても筋肉が分解しないことについて書きたいと思います。


蛋白質の需要量
人の身体は、骨も皮も肉も内臓もすべてタンパク質でできています。
身体のタンパク質は、常に生きたまま分解してアミノ酸プールに入り、再合成されています。
胃腸で消化酵素が分泌され、その90%が大腸で再吸収されてアミノ酸プールに入ります。
血液は全身を巡ったあと、一部が破壊されてアミノ酸プールにはいります。
私たちの体内では、多くのタンパク質が分解されてアミノ酸プールに入り、再合成が繰り返されています。




糖新生とは
ネットで検索すると、残念なことに、多くのサイトが、糖新生とは筋肉から糖原性のアミノ酸が分離してグルコースになることと説明していますがマチガイです。

糖新生とは、肝臓が糖以外の物質(アミノ酸、尿酸、ピルビン酸)から糖を合成することをいいます。

脳のエネルギーのブドウ糖は肝臓に貯蔵されていますが、肝臓のブドウ糖が残り少なくなり、血糖値が低下してくると、肝臓が糖新生をして血糖を保ち、脳のエネルギーが途切れないようにしています。


上図を見てください。糖新生は主にアミノ酸プールのアミノ酸から得られます。

アミノ酸プールには、大量のアミノ酸がプールされているので、空腹で運動したからといって、筋肉が分解されるようなことはありません。

たとえば、フルマラソンを走ると、大量のエネルギーを消費しますが、使われるエネルギーの95%が筋グリコーゲンと脂肪で、血液中のブドウ糖は5%以下です。

アミノ酸がエネルギーとして使われることはほとんどありません。


脂肪は体内には膨大な量が貯蔵されているので、脂肪がなくなることはありませんし、筋グリコーゲンもなくなることもありません。もしも、筋グリコーゲンがなくなると、失速してしまいます。
ですから、空腹でジョギングしたからといって、筋肉が分解して糖新生されるなどということは起こらないのです。



ミズノ・マラソンクリニック
ミズノ・マラソンクリニックでは、マラソン当日の朝食はスタート3時間前までに済ますこと、もしも、それができないときには、食パンのような消化の良いものを2時間前までに済ますように注意します。
つまり、食事は普通2~3時間で消化が終わるので、マラソンは胃を空っぽにしてから走りなさいという意味です。
フルマラソンを走ると、私などは5時間以上もかかりますが、胃を空っぽにして5時間くらい走っても、筋肉からアミノ酸が分離して痩せていくなどと心配することはないのです。



コルチゾル
空腹で走ると、コルチゾルが分泌するので、筋肉が異化に傾き、筋肉が消耗すると説く人がいます。


コルチゾルの濃度の日内変動は、下図のように朝高く、夜低くなります。
コルチゾルは、空腹時にアドレナリンとともに分泌し、血糖値を上げる作用がありますが、日内変動と比較すると、運動時の分泌は大きなものではありません。


コルチゾルは有酸素運動でも無酸素運動でも分泌します。

筋肉は常に異化と同化を繰り返してします。

筋肉が異化に傾くかどうかは、空腹かどうかではなく、栄養の供給バランスによって変わります。



以上のようですから、空腹でジョギングしても筋肉が痩せることはないのです。