❶ 瀬戸内国際芸術祭2019について

(質 問)

 瀬戸内国際芸術祭2019は、瀬戸内海の四季を楽しんでいただくために、春・夏・秋の3つの会期にわけて開催されています。多くの来場者でにぎわった春会期に続き、7月19日から8月25日まで38日間の夏会期も好評のうちに幕を閉じました。

会期が始まるまでに、国内全国誌で特集記事が組まれたほか、海外においては、世界で最も高いシェアを誇る旅行ガイドブックが7月に公表した「2019年に訪れるべきアジア太平地域」で、日本から唯一「四国」が選ばれ、そのなかで瀬戸内国際芸術祭が紹介されるなど、国内外からの注目度がこれまで以上に高まった中での開催となりました。

その一方、夏会期の開幕後しばらくは天候がぐずつき、その後は一転して猛暑日が続くなど、屋外を中心に会場を巡るこの芸術祭における集客の難しさや運営上の課題もさまざまにあったであろうと思います。

そ うした中で、先般の発表によりますと、夏会期の来場者数は

318,919人で1日当たりの来場者数が前回比+5%増となり、来場者アンケートの回答者の居住エリアは、日本国内が75.5%、海外が24.5%であったとのことです。国際芸術祭の名にふさわしく、海外での知名度が向上し、世界のさまざまな国や地域から訪れていただくのは大変喜ばしいことではありますが、反対に国内の来場者、特に県内からの来場者が減少しているのではないかという心配もあります。

この芸術祭が継続的に発展していくためには、やはり地元県民の皆さんにできるだけ多く来場いただくことが重要であると考えます。そのためにネックとなっていることの一つが春会期に課題であった船や食事場所などの混雑ではないでしょうか。こうした課題を解決するために、例えば駅弁ネットなどのように昼食の事前のネット注文ができたり、食のコーディネーターのような役割を担う人の配置をしたりすれば、来場者の満足度も上がるのではないかと考えます。

締めくくりとなる秋会期は、来週28日から11月4日までの開催で、本島、高見島、粟島、伊吹島が加わり、すべての会期の中で最も会場エリアが多くなり、夏に比べて気候も良くなることから、県民の皆さんも含め、多くの来場者の方々に、食事も含め、より快適に楽しんでいただけるように取り組んでいくことが求められます。

このため、夏会期にも混雑や暑さへの対策、島ならではの食の提供などに取り組まれたと伺っていますが、具体的に行った対策と、その成果はどうであったのか、またそれを踏まえて秋会期の対応をどのように考えているのかお伺いします。あわせて、これまでの県内からの来場者の動向と、今後、できるだけ多くご来場いただくためにどのように取り組まれるのかお伺いします。

 

 (知事答弁)

自由民主党議員会代表 辻󠄀村議員の御質問にお答えいたします。

まず、瀬戸内国際芸術祭2019についてであります。夏会期においては、暑い中、わざわざお越しいただいた来場者の方に少しでも気持ちよく鑑賞いただけるよう、混雑予想カレンダーを公開して来場の平準化を呼びかけるとともに、当日の混雑状況をウェブサイトやSNSにより多言語で発信したほか、現場でのきめ細かな案内に努めたところ、ゴールデンウィークのような極端な混雑の発生を回避できたと考えております。暑さ対策につきましては、船やバス待ちの方への日傘の貸出しやテントの設営、案内所等での適切な初期対応により、熱中症については軽度の方が7名にとどまり、一定の効果があったものと考えております。島の食の提供については、食に関する作品や地元の魚介を使った食の展開などによる提供数の増加や、混雑する施設での整理券の配布、電話での事前予約により、スムーズな提供に努めたところです。

涼しくなる秋会期には来場者がさらに増加すると考えられますので、引き続き混雑情報等の適切かつタイムリーな提供と現地での案内の充実に努めるとともに、食については、新たに会場となる西の4島においても、タイ、ベトナムなどのアジアの食文化を取り入れたメニューづくりを進めるほか、食の情報をとりまとめたパンフレットの作成や案内所等での情報提供を行ってまいります。

県内来場者の動向については、過去3回のアンケートでは、約28%、36%、31%と推移している中で、今回の春会期は約30%、夏会期は約17%でありましたが、県内来場者は夏に少なく秋に多くなる傾向があることから、西の島の作品や食、パフォーマンスなどの魅力のほか、地元向けワークショップを県内のメディアに重点的にPRしてまいります。

私といたしましては、締めくくりの秋会期を県民の皆様とともに楽しみ、成果を分かち合えるよう全力で盛り上げてまいります。

 

❷ 県庁舎東館耐震改修工事について

(質 問)

県庁舎東館は、災害応急対策の指揮・実行、情報伝達等の施設として位置づけられた重要な防災拠点施設でありますが、耐震診断の結果、震度6強から7の地震で倒壊、崩壊する危険性が高いとされたことから、耐震改修工事が、平成29年8月から本年12月までの工期の予定で、総工費42億円をかけて実施されています。

工法には、免震装置を既存建物の基礎の下に設置し、建物のデザインや機能を損なうことなく、耐震安全性を確保することができる工法が採用され、工事中の庁舎利用や文化的価値に配慮しつつ、重要な防災拠点施設として必要とされる耐震安全性が確保できる耐震改修が実施されており、一階の壁画や石畳及び建物の基礎についても可能な限り建設時の姿を残すこととしております。

また、本敷地は地下水位が高く、大地震発生時に地盤の液状化を生じる可能性があったことから、地盤改良工事が合わせて実施されたほか、一階ロビーの天井改修やバルコニー手摺の取替えなどの非構造部材の耐震改修や、エレベーターの耐震対策、南庭の整備等も行われています。

さらに、建築後50年以上が経過し、すき間風対策、トイレの洋式化などの執務環境の改善にかかる改修工事も、耐震改修工事に並行する形で実施されているところと伺っています。

DOCOMOMO県庁舎東館は、1958年に竣工した日本のモダニズム建築を象徴する建物で、設計者の丹下健三氏初期の代表作であります。県民に開かれたオープンスペース、コンクリートによる伝統的木造建築の表現、猪熊弦一郎氏による壁画など芸術家との協働、庵治石や後藤塗を使用した地域色豊かな空間等は高く評価されており、1999年、「

(ドコモモ)Japan 

(ジャパン)」によって、「文化遺産としてのモダニズム建築20選」に庁舎建築として唯一選定されたほか、公共建築百選となり、多くの建築・アート雑誌にも取り上げられるなど、高い文化的価値を有しています。

県ではこれまで、県職員によるガイドツアーなどにより、その文化的な価値を積極的に情報発信することに取り組んでおり、今回の耐震改修工事に当たっても、文化的価値を可能な限り保存する観点から、耐震や建築等の専門家の助言を受けながら、工法の選定等を綿密に行った上で進めてきたわけでありますが、この工事の進捗や内容などについては、深い興味や関心を抱いている県民の皆さんも多くいらっしゃると思います。

現在、足場も一部分が撤去され、議会庁舎と東館をつなぐ連絡通路の工事も終了するなど、いよいよ工事も大詰めの段階を迎えたようでありますが、まずは、現時点における耐震改修工事やその関連工事の進捗状況について、知事にお伺いします。

また、耐震改修工事が竣工したあかつきには、改めてこの工事の内容や東館の文化的な価値などについて、県民の皆さんに十分に知っていただけるような取組みが必要であると考えますが、この点についても知事にお伺いします。

 

 

(知事答弁)

次は、県庁舎東館耐震改修工事についてであります。

県庁舎東館の耐震改修については、庁舎を利用しつつ重要な防災拠点施設としての必要な耐震安全性が確保できる基礎免震構法を採用し、建築や文化財等の専門家の助言をいただきながら、平成29年8月から工事に着手し、順調に進捗しております。

このうち、地下部分では、上部構造を支える免震装置の取付けを施工中であり、地上部分では、現在、高層棟塔屋部の耐震補強を施工しております。

 

この他、高層棟ロビーの天井やバルコニーの手摺の取替えなど非構造部材の耐震改修も完了しており、今後は、低層棟ピロティの天井や床の仕上げ、南庭や低層棟東側歩道の復旧等の工事を実施して、当初の予定どおり、本年12月の竣工を見込んでおります。

また、耐震改修とあわせて実施している内部改修工事については、昨年度、各階のトイレの洋式化や高層棟の外部鋼製建具の内側にアルミサッシを取り付ける隙間風対策を行ったほか、今年度は、老朽化した空調機器の更新工事を実施しております。

議員御指摘のとおり、県庁舎東館の高い文化的価値については、これまでも、積極的な情報発信を行ってきたところであり、また、最新の県広報誌10月号においては、東館耐震改修工事の現況を掲載し、広く県民の皆様へ周知することとしております。

耐震改修工事は12月に竣工することから、東館1階の県庁舎建築ギャラリーを再開するほか、来年1月下旬には、今回の工事の内容や成果を県民の皆様に御紹介するとともに、地下の免震装置を直接、御覧いただける特別見学会を開催し、これを皮切りにガイドツアーも再開したいと考えております。

私といたしましては、防災拠点施設である県庁舎東館の文化的価値を含めた重要性について、今後とも県民の皆様の御理解が得られるよう、引き続き、あらゆる機会を捉えて情報発信に取り組んでまいります。

 

 

❸ 消防団の充実強化について

 

(質 問)

佐賀県平成30年7月の豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震など、昨今、全国的に大規模災害が頻繁に発生しています。災害対策は個人、自治体を含む様々な主体が取り組むものではありますが、その中でも、消防団は、消防本部と密接に連携・役割分担して、消火活動や予防面での防火訪問など日頃の地域における活動はもちろんのこと、先月の九州北部での豪雨時にも佐賀縣武雄市では、消防団がボートを駆使して住民を救出しており、大規模災害発生時においては、救助活動、住民の避難誘導を行うなど、地域防災力の要として、その役割はますます重要になってきていると考えています。

一方で、人口減少、高齢化の進行、自営業者の減少や被雇用者の増加等による就業形態の変化など、消防団を取り巻く環境が変化する中、全国的に消防団員数は減少傾向にあり、消防団員の確保が課題となってきているところです。

地域防災力の要となる消防団の充実強化を図るためには、その新たな担い手として、女性や若者に活躍してもらわなければならないのではないでしょうか。

女性の活躍に関しては、善通寺市消防団の女性消防団員において防火等に関する演劇活動を行うなど啓発活動を積極的に行ってもらっています。また、今年度から綾川町で、新たに消防団の女性分団が設置され募集が開始されたと伺っております。こうした女性消防団員の活動が活発になることで、団員になろうとする女性が増え、それが消防団の活性化につながるものと思います。そう考えれば女性消防団員の確保や活動を支援することが、県としての重要な課題の一つになってくると思われます。

また、若者に関係する課題としては、道路交通法の改正に伴い、普通免許で従来は5トン車まで運転ができたところが、平成29年3月以降に取得した普通免許では車両総重量3.5トン以上の準中型自動車の運転ができなくなりました。

消防団が所有する消防自動車は、車両総重量が3.5トン以上のものが一定数あるため、今後、対策を講じなければ、将来的に、特に若い人たちの中に消防自動車を運転できない者が増えてくることが予想されるところです。様々な消防団の活動の基盤の一つである消防自動車を運転する者を今後も確保するため、何らかの対策は必要となってくるのではないでしょうか。

災害がいつ起こってもおかしくない状況の中、地域の防災を支えるのは人であり、その担い手の中核的存在である消防団の充実強化は、必要不可欠です。そのためには、消防団員の確保はもちろん、消火のほか救助活動に必要な資機材の整備なども含めた消防団の活性化への取り組みが重要であると考えますが、先ほど触れた女性や若者の観点も踏まえて、県としてこれらに対し、どのように取り組んでいくのかお伺いします。

 

 

(知事答弁)

次は、消防団の充実強化についてであります。

消防団は、火災をはじめ、大規模災害などから、県民の皆様の生命や財産を守るため、地域の防災力の中核的存在として、大きな役割を果たしており、消防団員の確保や消防団の活性化を図ることは、大変重要であると考えております。

消防団員の確保については、県内の消防団員が飲食店や販売店などの登録事業所で各種の優遇サービスを受けられる「消防団応援制度」を実施するとともに、各市町と連携しながら「消防団員募集」のリーフレットを集客が見込めるイベント等で配布するなど、消防団の重要性に関する広報に努め、消防団員の確保を図っているところであります。

また、消防団の活性化を図るため、消防操法大会や消防団員に対する研修会、各種表彰などを実施するとともに、各市町の防災・減災対策を支援する「地域防災力重点分野支援事業」において、「消防団の機能強化」を重点分野の  1つに位置づけ、消防団の各種資機材等の整備を補助対象としているほか、市町に対して国庫補助の積極的な活用を促すなどにより消防団の装備等の充実強化についても取り組んでおります。

女性消防団員の活躍の促進については、市町防災・減災対策連絡協議会等において市町に働きかけを行うとともに、新たな取組みとして、消防団幹部研修会等の消防団関係者が集まる会において、県内の女性消防団員の活動を発表する場を設け、女性消防団員に対する理解を深めてもらうことにより、女性消防団員の活動の場が広がるよう支援してまいります。

議員御指摘の免許制度の改正については、消防団員が新たに準中型自動車の運転が可能な免許を取得する場合には、市町の行う支援に対し「地域防災力重点分野支援事業」において補助を行うこととしております。

私といたしましては、災害に強い香川づくりを進めていくため、今後とも各市町や関係機関等と連携しながら、消防団員の確保や消防団の活性化の促進に積極的に取り組んでまいります。