2010年秋に、抗インフルエンザ薬の2剤が厚生労働省の緊急認可を受けました。


ラピアクタ(注射薬)とイナビル(吸入薬)が相次いで認可を受けました。厚生労働省がスピード認可した新薬です。本当に驚くほど早く市場にでてきたので、本当に驚きました。通常の薬剤は代1-4層の臨床試験を経て10年はかかるが、新聞で新薬開発情報が報じられてからそんなにかかった印象はないのです。

と、言うことは、これはかなりの手続きを省略している はずである。
当然、安全性に関する試験も含まれている はずである。

なぜ、スピード認可になったのか?
市場優先の原理が働いた と考えられる。
あるいは、何らかの なに が働いたのかも知れない。
あとは、
タミフル耐性のインフルエンザが多数報告されたため でもあろう。
その結果、安全性を無視してでもスピード認可へ至った としても不思議はない。

しかし、これらの新薬にも使われ続ければ2,3年で耐性株は出てくる はずである。
なぜなら、医者も患者も新薬が好きだからである。



イナビルの添付文書を入手したので副作用について書こう。これは4種類の中で最も副作用発現率が少ないものである。


国内及び海外(台湾、韓国、香港)の臨床試験において、総症例1571例中159例(10.1%)に副作用が認められた(臨床検査値異常を含む)。主な副作用は、下痢(4.7%)、悪心(0.8%)、ALT値上昇(0.8%)、胃腸炎(0.7%)などであった。【承認時】

その他の副作用は0.5%未満で、蕁麻疹、嘔吐、腹痛、腹部膨満、食欲不振、腹部不快感、口内炎、めまい、白血球増多、肝機能異常、尿たんぱく と記載されている。

~重大な副作用~
他の抗インフルエンザ薬で以下の重大な副作用が報告されているので、観察を充分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行う事。
1) アナフィラキシーショック様症状
2) 気管支攣縮、呼吸困難 <要するに喘息の様な症状ですね>
3) 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性皮膚壊死融解症、多形紅斑

この重大な副作用は死亡率が高い病態である。
が、死亡率には触れていない

ショックも家庭で起こされた日には蘇生措置はできないだろうから死亡する確率は上がるであろう。

私も皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)に遭遇したことがある。全身の皮膚が剥がれ落ちるような、身の毛もよだつ状態になる。現在でも死亡率は50%を越えると考えて良い。後遺症も外観に残るので生き残っても可哀想な状態となり得る。社会復帰ができれば幸いだ。

さて。
これは承認時の副作用であり、たったの1571人についての話しである。
何千万人と使われれば、数は増えるし、種類も増えるし、死者も出てくるであろう。

あと、
重要な基本的注意として、
・異常行動の可能性を示唆している。
・吸入薬のため、喘息などの呼吸器疾患への使用も要注意と書いてある。
・高齢者や基礎疾患を持つ人への使用経験は少なく解らないと書いてある。


これらの臨床試験は通常、健康成人を使って行われます。
元気はつらつな大学生がバイトでやるんです。
決して持病持ちや弱った老人で試験は行われません。
あとは、現場でどうなるかが試されます。
余りにも健康被害が多い場合には、政府も止めるでしょうが、お使いになった方が新薬の礎(いしずえ)にならないことを祈ります。

*コラム*
タミフルの添付文書にある試験結果を見ますと、タミフル使用群と未使用群の差を表す表がありました。インフルエンザが治るまでの時間ですが、使用群は70.0時間、未使用群(プラセボ)は93.3時間でした。要するに、23.3時間早く治したくて、副作用を厭わない人が飲むべき薬剤という事になりましょう。


<参考資料>
ラピアクタ注射薬の副作用は成人で24.7%(968例)、小児では29.1%(117例)です。凄い確率で何かが起こりますね。これは添付文書に載ってます。
http://www.shionogi.co.jp/med/kihon/img/pdf/RAC.pdf

タミフルの添付文書:http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/450045_6250021M1027_1_24.pdf

リレンザの添付文書:http://glaxosmithkline.co.jp/medical/medicine/item/relenza/relenza.pdf