母親と娘の関係は、時に一卵性双生児と言うくらいに仲良く見えることもあります。

父親と息子のシンプルな関係と全く違って非常に難しい場合が多いようです。

 

息子にとって、父親とは「乗り越えていく」対象です。

必ずいつの日か、父親の支配を脱して堂々と超える時期が必ずやってきます。

 

それと比べて、母親と娘が正面きって対峙することはありません。

対峙どころか姉妹のように仲がいいように見えることも少なくありません。

ところが母親の娘に対する支配は、わかりにくいもので難解です。

娘を溺愛する父親と比べようもなく比較にならない執着があります。

 

溺愛する父親の場合でも、その支配は、理屈っぽいものです。

厳格で言葉中心でルール的です。溺愛の一方で頑固おやじの側面が目立ちます。

法に基づいて警官が取り締まられているようで、うるさく感じます。

ルールには客観性があり、誰の目にも分かりやすいものです。

父と娘の場合も息子と同じく娘にすれば乗り越えやすいものなのです。

 

ところが、母親の娘に対する支配は、言葉ではありません。

なにより身体的であることが特長的です。

女の子は幼い頃から、しぐさ、服装、言葉遣い・・・あらゆる面で「女の子らしさ」を要求されます。

男の子の場合も「男らしさ」を要求されますが、主に父親からで精神的な面の場合がほとんどです。

 

では、なぜ女の子には、男子と違った要求が起こるのでしょうか。

異性から愛され幸せになるために、ほぼ無条件で伝統的な女性観を母親が受け入れているからです。

 

伝統的な女性観は身なり、食事、生活の細かい点を通してインプットされます。成人後も異性問題まで介入します。

一卵性双生児のような仲の良い関係の裏に、自己否定感を植え付ける要因が隠されていて、無意識に娘を苦しめます。

しかし仲良しに隠れているので娘は気づきません。

母親の介入が行きすぎると苦痛が生じて圧迫感によって離れたくなります。

 

 

次の5つのメッセージには、どれも 母親自身の希望を叶えるための支配があります。

これらは身なり、食事、生活の細かい点を通して入り込んでくるのです。

 

・自分がしたくても出来なかったことを娘に託す【生きなおし】

・自分がしてきたのだから娘にも出来ると要求する【完璧主義】

・自分が抑圧した欲求を娘にも抑圧させる【禁止令】

・育児のために諦めたことから生じた【被害者意識】

・娘につらい思いをさせた思い込みから生じた【罪悪感】

 

しかし、母と娘の仲の良い関係には「あなたのことを心配しているから」という大義名分がついて回ります。

このため娘は適度な距離がとれずにいつまでも関係を持続しょうとします。

適度な距離をとろうとすれば、娘が罪悪感に苛まれます。

 

たとえば「生きなおし」では、昭和の大歌手、美空ひばりさんがそうだったように二人三脚で突き抜けた姿が参考になります。

最近ではモデル、ダンス、スポーツの領域でもよく見受けられます。

 

男性の場合はここが決定的に違います。

父と子は距離をとり、対峙します。青年期は助走の期間になり、やがてジャンプするように乗り越えます。

 

男にとって女性は献身するものだと男(の子)が思い込んでいるので距離がとれるのです。男尊女卑のように思われますが、母親の献身を男子は当たり前のことと割り切れるからです。

 

皮肉にも、ここにも父親に奉仕するように、男子にも無条件で伝統的な献身を愛情表現と思い込んでいる母親がいます。

 

この思い込みに、娘は無意識で共感しています。

特に優しく共感能力の高い娘は、内心または表面的に反発していても束縛から逃げることができなくなります。

それ以上に応えてあげたいと葛藤します。

娘と母親は無意識に一体化しているので、母親を否定することは自分を否定することになり、身動きできなくなります。

 

これが、自分を責めたり、「自己否定感」に苛まれる原因になっていますが、ほとんど気がつかないので、自己処罰的な理由がわからなくなっています。

 

意識の上では、母は自分のことを思いやってくれていると感じています。

無言のメッセージになっている場合が少なくないからです。

これが問題をさらに複雑にしていて、娘を苦しめているのです。

 

この支配を断ち切る方法は、距離を取ることです。

 

もっとも簡単な方法は一旦、親のせいにしてしまうことです。

まだ母親が存命中なら、意識的に母娘の関係から離れて、母親との会話を俯瞰することです。

そうすると、「ここでこういう言い方で自分に影響を与えている」と知ることができます。このやり方は簡単ですが、客観的に自分を捉える力が必要です。

 

もっとも効果的な方法が、第三者つまりパートナーや父親を介入させて、距離を置くことです。

 

次に効果的なのが、実際に物理的な距離をとることです。

結婚してパートナーと共に、物理的な距離をとるとほとんどの場合、うまく行きますが、その意味を全く理解していない場合は、パートナーとのもつれに乗じて奪い返す母親も出てきますので注意が必要です。

 

結婚しなくても、物理的な距離をとることはできます。

 

 

自分のためにあんなに頑張ってくれた母が、あんなに優しく守ってくれた母が・・・・女性が理由もなく自己否定感に苛まれる原因に母の無言のメッセージが隠されていたと知れば驚きでしょう。

 

ある女性は仕事中に理由がわからず叫びだし泣いたら気がすんだという事例もあります。

 

それでも乗り越えていかなければ幸せな人にはなれないのです。幸せな人が幸福になのですから、幸福になろうと自分の外側に何かを求めても幸福になれるわけではありません。

 

まず幸せな人になるためには、母の無言のメッセージ、隠されたメッセージを乗り越えるために、一旦、母と距離を置き、母親との間で何が起こっていたかを知り、その上で母親をひとりの悩める女性だったことを認めて許してあげる作業が大切なのです。

 

ツンデレさんはもちろんのこと、母と娘と、これから母になる人、すべてに言えることです。

 

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