GT3 Cupが手元に来て1年経過しましたのでとりあえず色々と書いてみます
・ポルシェ カップカーとは?
ポルシェカレラカップという名前はレース好きな方なら一度は聞いた事のあるワードかと思います
ポルシェワンメイクレースで使われる生粋のレーシングカーでF1前座レースとして開催もされていた実績があります
その歴史は古く1986年にまで遡るようで実は初開催は"ポルシェカレラ"ではなく944ターボ カップだったそうです
事実上のカレラカップになったのは1990年の964型からですがそれでも30年以上の歴史があります
※初代チャンピオンはマンタイレーシング代表のオラフマンタイ
・ 911(997.2) GT3 Cupについて
所有しているのは水冷エンジンの997後期型カップカーです
市販のGT3RSをベースにボディー補強 3.8Lフラット6 450馬力 車重1150kg シーケンシャルミッションというスペックは10年前のワンメイクレーシングカーとは言え未だ第一線級の戦闘力を保有しています
(当時最速タイムは富士本コースで1分44秒台)
フロントリア共ワイドボディーにハイマウントウイングはやる気しか感じられません
レースカーと言うことでセンターロックやエアジャッキも搭載しこの個体?年式?に関しては耐久向けの100L燃料タンクも搭載しています
ガラスはフロントのみでドアはドライカーボン製と軽量化も抜かりなく行われています
IパターンドグミッションもですがABSやTCSが無ければ倍力装置無しのツインマスターブレーキと癖だらけの硬派なレーシングカーです
・市販車両と違う点
①センターロックホイール
一部市販車でも採用例はありますがセンターロック式のホイールの為に専用ツールやトルクレンチが必要になります
トルクレンチだけでもそこそこ良い値段で基本的にこの手の工具は量販店には無いので脱着出来るショップは限られます
②アイドリング不可
厳密に言うと"長時間アイドリングさせてられない"です
走ること前提で設計されているのでこの車にはクーリング用のファンなる物がありません
アイドリングしている間は永遠に温度が上がっていきます
レース中のピットインでレーシングカーは直ぐにエンジン切るのはこれが理由だと思います
(燃料計算狂わせない為でもあるとは思いますが)
走行5分前とかにピットロードでエンジン掛けながら待機みたいな使い方は出来ないのでここも市販車とは大きく異なる点かと思います
主に996で見かけるナンバー付きCupは後付けファンや切れ角向上等そこそこ手を入れてる個体になります
997型も1台?ナンバー付き車両が存在している模様です
③サイドブレーキが無い
これが地味に痛いのですがサイドブレーキが無い為基本的にツーマンでの行動が望ましいです
積み込みやピットでの監視もそうですがちょろっとガソリンを入れに行ったりエアを入れに行ったりという時にかなり不便を強いられます
幸い富士スピードウェイはほぼ平坦なので助かっています
輪止め使えば良い話といえばそうなのですが勾配ある所ではそうも言ってられないのが現状です
④マイレージがある
どの部品にもマイレージが設定されていてその時間が少ないです
エンジンであれば常用回転数毎に細かく設定されていたりします
ワンメイクレースで0.001秒を競っている訳では無いので過剰に気にする必要は無いと考えていますがここは市販車と明確に異なる点のひとつなので敢えて取り上げました
多少の性能劣化はどの車でもある話であり我々素人レベルではそこまで気付く事も無いと思うので壊れたらでいいかな?という感覚です
・市販車両より優れている点
①ウォームアップが楽
これはアイドリング出来ないの逆の意味になりますが温度上昇が早いと言うことは暖まるのが早いとも言えます
極寒の富士でもアイドルしておけば見る見る適温領域に入ってくるのでここは明確な利点だと考えてます
ちなみに始動性は市販車ポルシェと変わらないです
②温度管理の必要がほぼ無い
1、の続きになりますが走っている事が前提で作られている車という事もあってか基本転がしていれば適温領域をキープしたままになってくれます
極寒富士のコンディションになると流石にオーバークール気味になるので若干の養生は必要ですがその程度のレベルです
元々ポルシェの冷却は市販車の時点でかなり優秀なポイントの1つですがこれはレーシングカーも同じです
③サーキット走行に必要な物が最初から揃っている
これは当然の話ではありますが例えばモーテックダッシュロガーやドライカーボン製のフルバケ等自分でチューニングとして買うには高いと思うような良い部品が最初から使われているので個人的にはお得感があります(笑)
ガスアウト機能も実際かなり便利で使わなくなったガソリンを足車に移すのもボタンひとつで行えます
ナンバー無しという性質上乗らない期間抜いて置けるのも精神的に良いです
・現状で難しいと思う点
①各操作がシビア
軽量フライホイールとトリプルプレートクラッチと聞くと察しが付くと思いますがチューニングカー等の癖がある車にある程度の耐性が無いとまずは発進すら出来ない可能性があります
※それでもトリプルとは思えないくらいにフレンドリーでわかり易いです
アクセルも敏感で少し触るだけで一気に吹ける中ブレーキは倍力無しで踏み込む必要があるので最初は難しいかもしれません
ドグミッションのシフトダウンとオートブリッピングのタイミングも会わないとギクシャクするので癖が強いと言わざるを得ません
(初期はプロでもバンバン壊してたそうです...)
操作自体はダイレクト感がありとても良くインフォメーションも多いのでカートの感覚に近いかもしれません
②RR独特の挙動
"市販車よりもリアへビーを感じる"というコメントを残した某プロの言う通りでかなりその感覚があります
富士で言うとホームストレート後半や300Rの速度が乗る場所やダンロップコーナー切り返し等の所謂リアエンジン車が苦手とする場所でフロントリフトやピーキーさを感じます
カップカーはグリップのあるスリックタイヤなのでそれでもアクセルを踏めば安定はしますがこれは慣れが必要な挙動だと思います
この辺はバーチャルで散々知っている挙動なので私には寧ろ心地よいモノになっています
③サーキットに行くまでが大変
ナンバー無しという車なので当然ながら最低でも積載車やトレーラーを用意する必要があります
車以前にまず免許なんて話になればそこそこ話は大事になってきます
私はまさにそのパターンで免許からスタートしましたが積み込みは教習所では教えてくれないので近くに本業の人が居る事がほぼ必須だと思います
いざ自分でやっても不慣れな作業ばかりでサーキットに着く頃はヘロヘロ...なんて事が何度(今)も続いています
ここは慣れである程度解決してくる話だとは思いますが正直このハードルはまあまあ高いとも感じます
でもいざ走り始めるとそんなの忘れてしまうくらい夢中に楽しく走れるのでここは我慢のポイントだと思ってます
筑波ではローダー通い勢がむしろ普通な風潮ですがあれは異常であると敢えて表明しておきます(爆)
最後に
・カップカーを相棒にした理由
これも良く聞かれるので書き残しておきます
そもそも前提として私はポルシェが大好きで特にRR駆動が好きです
そしてターボの圧倒的加速が好きなので基本的にターボ車命の人間ではありますがいつかNAエンジンに乗るなら究極系であるポルシェのレースカーか同等(GT3以上)に乗ってみたいと思っていました
この数年はGT-Rでタイムアタックに没頭し良いお店に恵まれた結果狙っていた目標タイムを残せました
GT-Rは歴代"裏切らない車"なので弄れば必ず速くなるしあの加速は麻薬のような依存性があります
現場で色々な車両を見てきましたが普段使い出来るチューニングカー最速は間違いなく35GT-Rでありこれに関しては揺るぎない事実だと今も思ってます
(異論は認めるので先にタイム出して下さい!)
チューニングメニューを考えたりと毎日とにかく速く走る方法や手段ばかりを考える日々はとても楽しく充実してました
周りのお客さんも速い人だらけでバチバチに競うのも楽しいのですが(笑)やはり本命のポルシェに乗りたいという気持ちが強かったです
35で次のステップへ行くには階段の高さが現実的では無かったのも潜在的要因のひとつでした
「GT-Rを乗りこなせて初めてポルシェに乗る権利があり、ポルシェを乗りこなせてこそ真の乗り手である」
この座右の銘(笑)に従いレーシングポルシェに挑戦する事にしました
挑戦と言うより「答え合わせ」という表現の方が感覚としては正しいでしょうか
これまでの10数年やってきた事がレーシングカーでも通用するのか?という興味があります
その相棒が997Cupという選択です
ワンメイクレースカー故に情報もほぼ無くなかなか入りずらい車種かとは思いますが私はこの車を選んで正解だったと感じてます
国内に流通してる個体は海外に比べ安価で程度が良いのでサーキット走行が趣味で余裕のある方(爆)には全力でオススメしたい遊び方です
とりあえず1年という節目にざっと書いてみました
私も分からないことだらけですが興味ある方は何でも聞いて頂ければと思います
それでは