「マッチポンプ」という言葉を、皆さんはご存知でしたでしょうか?簡単に説明します。
 
ある地域では、人々の防火に対する意識が向上し、火災件数が減少傾向にありました。しかし、それに伴って消防士の需要が減り、減給することになりました。それに怒った消防士が、消火消防の重要性を周囲に知らしめるために、マッチを使って自ら建物に火をつけて、ポンプ車を発動して火を消すきっかけを作るとする話です。
 
この火事の真因が明らかになれば、この消防士は放火罪で極刑対象の相当重い罰の対象になります。しかし、逆に真因が分からなければ、この消防士は建物に広がる火を消した英雄して、褒め称えられるのかもしれません。つまり、大多数の人は火災は悲しい事件だと考えていますが、消防署や消防士の立場で考えれば火災を収入源だとする視点も存在し、マッチポンプはその視点を分かりやすく強調しているのかもしれません。
 
さて、日本にやって来る外国人数は右肩上がりで、その傾向は加速していくものと思われます。それは数日間の短い観光の場合もありますが、滞在期間は実に様々、永住する場合もあります。この原因の一つに、少子高齢化による労働者減で、労働力強化のために外国人を雇い入れようとする方針があります。
 
そして、多くの企業経営者も雇用には苦労しています。労働力弱体化を懸念していて、経営者は皆その強化を図りたい。しかし、景気の悪さなのか売上が伸び悩み、人件費の捻出が難しい。だから、比較的に安いお給料で働いてくれる外国人労働者は経営者にとって嬉しく、外国人労働者の受け入れには相応に利点があります。外国人労働者からしても、日本円換算だとお給料が安くとも、円高為替相場から祖国通貨に換算すれば相当な価値になり、祖国を旅立ち日本に来て働くことの価値は多大なのです。
 
しかし、政府や企業は、労働者を血の通った人と見ているでしょうか?もしかして、政府や企業は、日本人労働者のことを税や売上を作り出す機械として見ていて、人件費はその電気代や燃料費の類に考えているのではないでしょうか?そもそも、少子高齢化による人口減ならば税収も売上高も減るでしょうが、そこに危機感を持ってこれらを維持しようとして労働力を補強しようとする発想は正しいのでしょうか?
 
人口が減るのならば、その人口減に応じた仕事のあり方があるはずです。仕事の総量に着目したとき、今に比べて人口減の未来に適した仕事量は多い方が良いのでしょうか?、それとも、少ない方が良いのでしょうか?それは一概に言えませんが、仕事を減らしたとすると、それに連動して税収も売上高も減ってしまうとすることに危機感を持つ気持ちは分かります。そして、それに対抗する形で仕事を作り出せば、自分にお金を引き込む口実になり増収するのかもしれません。
 
しかし、そのように作り出した仕事は日本の社会に還元できているものでしょうか?
 
率直に考えれば、人口減ならば仕事の総量は減ります。何故ならば、消費者数が減るので、その分だけ生産量を減らしても事足りるからです。しかし、外国人労働者の雇用を増やそうとすることは、政府や資本家の作為で仕事を作ろうとしていることなのかもしれません。
 
私の実体験ですと、道路の工事現場で働いている土木作業員に、外国人労働者らしき人をよく見かけます。この工事は、時には電力網、通信網、水道管、ガス管のメンテナンスで重要な場合もあります。その一方で、土木業社が営利を求め有償案件の受注を目的に、ほとんど意味の無い工事を請け負うこともあるのかもしれません。このときに外国人労働者を使えば、利益率の高い土木事業になるのかもしれません。しかし、これはマッチポンプと言えるのではないでしょうか?
 
何故ならば、利益率の高い土木事業を実現はしていますが、その真因はほとんど意味の無い工事の受発注だからです。だから、発注者は、工事の見積額と、それを支払ったときの恩恵を、よく検討して欲しいと思います。そして、受注した土木事業者は、何故その無意味な工事で売上が立つのかを考えて欲しいと思います。
 
ほとんどの物価は、需要と供給のバランスで決まります。ただ、それは、売る自由と買う自由の両方が揃ったときに限られます。そして、その商品の内容とを見比べて、ときには批判的意見を発することで、物価が見直され、その時の適正値が導かれます。
 
しかし、マッチポンプは人から売る自由と買う自由を奪い、物価を狂わせます。火事になれば、お金をかけてポンプ車を現場に派遣するのですが、それが日本人消防士の放火によるものならば、ポンプ車派遣に対する発動の自由を奪っていることになるのです。
 
このときに、ポンプ車派遣のコストが高騰しているのならば、消防士の補強に外国人を雇い入れるのは正しい判断だと言えるでしょうか?放火は秘密裏の原因ですので知る由がありませんが、どうして火災が多発するのかを調べなければ、いつまで経っても国民はマッチポンプの餌食になってしまいます。
 
これからの仕事のあり方は、
 
・日本社会における必要性の高さを見極めること。
・技術を高めて出来ることを増やしていくこと。
・仕事を楽しむこと。
この3つが重要ではないでしょうか。
 
神奈川県本部 情報分析部長 大倉千和